【受賞】前田拓人助教が森田記念賞を受賞

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観測開発基盤センターの前田拓人助教が、2015年10月31日に、「第11回森田記念賞」を受賞。

 

授賞理由:前田拓人氏は、地震・津波波動伝播現象の背景物理の洞察に基づき、地殻活動や地球内部構造の解明や巨大地震発生に伴う地震動と津波のための記録解析・モニタリング手法を多数提案、実現してきた。
 前田氏の研究は多岐にわたり、これらは主に3つに分けられる。第一は、申請者の理論的考察の礎となる、地震波動伝播の理論的研究である。観測される長周 期表面波のコーダ波の形成の仕組みの解明や、不均質な媒質中を伝播するP波、S波及び表面波の散乱過程の数理的モデリング(業績1)を進めた。第二は、高 密度波形記録の徹底的な調査にもとづく、地殻活動のモニタリング手法の開発と新現象の発見である。巨大地震発生帯深部で発生する深部低周波微動の新たな震 源決定法の開発、常時微動連続記録解析にもとづく地殻構造の時間変化の発見、大地震に伴う海中音波(T-phase)の海山列からの反射現象の発見、海底 津波記録を用いた2011年東北地方太平洋沖地震の震源過程の推定(業績2)など、既存のデータを丁寧に解析した研究である。そして、第三は、地震波や津 波伝播などに関する高度な数値シミュレーション技法の開発と実施である。海溝型巨大地震に励起される地震動、地殻変動、津波はこれまで個別に数値計算され てきたが、複雑に絡み合ったこれらの現象を統一的に再現する手法を提案し(業績3)、「京」コンピュータ等の大型計算機上でシミュレーションを実現した。 東北地方太平洋沖地震の発生後、日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の整備が進められるなど、地震・津波のモニタリング研究の重要性はますます増大 しており、前田氏のこの先駆的な研究は、地震・津波現象の理解だけでなく、リアルタイム解析への応用により防災・減災に大きく貢献する可能性が高い。
 以上のように、前田拓人氏は森田記念賞にふさわしい優れた研究業績を上げたものと評価される

 

・森田記念賞は、東北大学理学部・理学研究科の物理系学科・専攻に所属するあるいは所属していた者、及び卒業生で、物理科学の分野ですぐれた業績をあげた若手研究者に授与されるものです。