2016年10月21日鳥取県中部の地震

ウェブサイト立ち上げ:2016/10/24

平成28年10月21日14時07分、鳥取県中部でM6.6(気象庁資料による)地震がありました。

*報道関係の皆さま:図・写真・動画などを使用される際は、必ず「東京大学地震研究所」と、クレジットを付けてご使用ください。


震源過程

強震波形インバージョンによる2016年鳥取県中部の地震の震源過程(暫定版)

(小林広明・纐纈一起・三宅弘恵)


 

2016年10月21日 鳥取県中部の地震(M6.6)の強い揺れ

(強震動グループ)

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図1 地震発生から40秒,70秒後の揺れの様子。防災科学技術研究所の強震観測網(K-NET, KiK-net)データを用いて,日本列島の各地点の揺れの強さを強調して表示。赤は震央,オレンジ色のかたまりは,地震の強い揺れの広がり(地面の揺れの強さ)を現す。

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図1 地震による地表の強い揺れ(最大加速度;cm/s/s)の広がりを、防災科学技術研究所のK-NET(図中□)とKiK-net(△)観測点での記録を用いて調べた。浅い地震(h=10 km)のため、震源(星印)の直上には1gを超える強い加速度が現れたが、震源から遠ざかるにつれ加速度は急激に減少し、九州や中部日本では人が感じない程度に揺れは弱まっている。加速度分布は、同心円から東西方向に延びていた形をとっているように見える。

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図2 震源に近い2観測点(K-NET倉吉;TTR005とK-NE上斎原;OKY015)の加速度波形(東西方向の揺れ成分)と、2016年熊本地震の本震におけるKiK-net益城(KMMH16)地点の揺れを比較する。直下で起きた地震のため、激しい揺れの継続時間は10秒程度と短い。倉吉や上斎原地点の揺れは、小刻みな0.4秒前後の極短周期の成分が強く、熊本地震で益城町で観測された、周期1秒前後の、やや周期の長い揺れが卓越した揺れと対照的である。

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図4 倉吉や上斎原地点での揺れの揺れに対し、建物の影響(揺すられる強さ)を見るために速度応答スペクトルを求めた。2地点の揺れは、熊本地震の益城町の記録を広い周期帯で下回っており、0.4秒前後の周期成分が強かった一方で木造家屋に被害を与える周期1〜2秒の成分は小さかった(速度応答40 cm/s以下)ことがわかる。このため、墓石などの小型構造物や建物の施設被害が大きかった可能性はあるが、木造家屋が倒壊するような被害は限定的であったと考えられる。

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図5 この地震では、大阪において気象庁長周期地震動震度階2を観測した。KiK-net咲洲(OSKH02)地点での地震計記録(速度波形、東西成分)を示す(赤)。2000年鳥取県西部地震(M7.3)及び2011年東北地方太平洋沖地震の同地点の揺れと比べる、地震の規模が小さかった(M6.6)ために、大阪平野で観測された長周期地震動(表面波)の振幅も数分の1程度に小さかったことがわかる。

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図6 大阪咲洲地点(KiK-net OSKH02)の長周期地震動の速度応答スペクトルを調べると、周期5秒付近で最大6cm/s程度の応答値が出た。これに対して、地震規模がずっと大きい2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)や2000年鳥取県西部地震(M7.3)では、周期数秒程度の長周期地震動の応答レベルは数倍大きく、より長い周期帯まで大きな速度応答が見られた。

(古村孝志)