四国地方における深部超低周波地震活動の時空間分布

馬場慧1・竹尾明子1・小原一成1・加藤愛太郎1・前田拓人1・松澤孝紀2

1:東京大学地震研究所、2:防災科学技術研究所

Geophysical Research Letters (2018), 45, 733-738, https://doi.org/10.1002/2017GL076122

 巨大地震が発生するプレート境界面の固着域の周辺部では、通常の地震のほかに、通常の地震よりもゆっくりと進行するスロー地震が発生しています。スロー地震は巨大地震と共通の低角逆断層のメカニズム解を示しており、巨大地震と関連している可能性が指摘されています。スロー地震に含まれる現象には、低周波微動、スロースリップイベント(SSE)、超低周波地震(VLFE)があり、本研究で解析を行った深部VLFEは、深さ30–40 kmで発生し、モーメントマグニチュードは3–4の範囲で、数十秒の周期が卓越しています。本研究では、様々な種類のスロー地震が頻発している四国地方において、プレート間のすべりの時空間分布を明らかにすることを目的として、深部VLFEの活動を2004年4月から2017年3月の13年間にわたって調べました。

その結果、豊後水道(図1のG1)では、長期的SSE(数ヶ月〜数年の間継続するゆっくりとした断層運動)の発生した2010年と2014年にVLFEの検出個数が大きく増加していました。しかし、G1の内部を細かく調べると、2010年の長期的SSEが発生している時期にはG1のほぼ全てのグリッドで深部VLFEの活動度が上がっていましたが、2014年の長期的SSEが発生している時期に関しては、活動度が上がっているグリッドもあれば、ほとんど活動度が変化していないグリッドもあり、活動度の上昇割合はグリッドによって大きく異なっていました。グリッドの間隔は0.1°(約10 km)なので、長期的SSEに対応する深部VLFE活動の変化について、10 km程度のオーダーでの空間的不均質性があると考えられます。また、イベントの累積個数のグラフ(図2)を見ると、G1とG2では2014年後半から2017年3月(解析期間の終了)まで深部VLFEの活動が静穏化し、1年あたりの発生個数が、静穏化が起こる前の60%程度になっていることがわかりました。静穏化の期間は2年半を超えており、VLFEの定常的な発生間隔に比べて長くなっています。VLFEの活動が低調になった原因の一つとして、プレート境界における固着の強化が考えられ、VLFEの活動度の変化は、プレート境界での固着の強さが変化したことを反映している可能性があります。

図1 解析を行った領域。数字は解析を行ったグリッドの番号を示す。G1:豊後水道のグリッド、G2:豊後水道に面した陸域のグリッド、G3:豊後水道から離れた陸域のグリッド。オレンジ色の四角形は、豊後水道で発生する長期的SSEの断層面を示す。
図2 各グループに属するグリッドで検出された深部VLFEの累積個数。黒い矢印は豊後水道の長期的SSEの発生時期を表し、赤い直線は2004年4月–2009年12月および2014年7月–2017年3月の回帰直線を示す。回帰直線の傾きを比較すると、G1とG2で2014年後半以降VLFEの活動が静穏化していることがわかる。