金子助教らが2018年度火山学会論文賞を受賞

金子、前野 深准教授、中田節也教授による下記の論文が、2018年度火山学会論文賞を受賞しました。

論文名:
Takayuki Kaneko, Fukashi Maeno, Setsuya Nakada (2016)
2014 Mount Ontake eruption: Characteristics of the phreatic eruption as inferred from aerial observations.
Earth Planets and Space, 68, DOI 10:1186/s40623-016-0452-y

受賞理由:
本論文では、社会的に注目を浴びた御岳2014 年噴火に関して、筆者自身による噴火直後の空撮画像を中心に、報道機関や登山者が撮影した映像を解析して、その噴火活動の概要を明らかにした。まず火口位置、降下堆積物および火砕流の分布を明らかにした。
火砕流の映像解析により、その流速を時速32km 程度であると見積もった。加えて、弾道放出物の分布に注目し、4 つに区分したゾーンの単位面積あたりの放出物の数を計測し、放出物は火口から最大950mまで到達していたこと、弾道放出物の飛行速度を最大毎秒111m 程度であることを示した。さらに、これらの弾道放出物は噴火開始後の数十秒間に集中して放出されたと推論した。今回のような小規模な水蒸気噴火の調査研究では堆積物は火口近傍に限定して分布し、噴火後には降雨等により短期間に初生の堆積構造が乱される、あるいは堆積物が失われることが一般的である。そのために噴火直後の調査が必要ではあるが、研究者といえども火口域に近づくことは厳重に規制される。そのような中では、著者が注目した空撮画像やマスコミや目撃者が撮影した画像・動画は、噴火の推移やメカニズムを議論するための重要なデータである。本論文では噴火映像と噴火後の画像解析を結びつけて、複雑な噴火推移を復元することに成功した。その成果はひとつの水蒸気噴火の研究事例にとどまるだけでなく、筆者の手法により、噴火直後
に、現地調査を待たずに、噴火概要が明らかにできることを示した点で、火山防災面でも高く評価できる。本研究でのデータ解析手法は、今後の他の火山噴火にも適用されるべきであろう。
以上の理由から、本論文を日本火山学会論文賞の候補として推薦する。