平成13年6月29日

気象庁長官   殿

地震火山部長  殿

管理課長    殿

火山課長    殿

火山噴火予知研究委員会

三宅島における円滑な観測の実施について

 

 火山噴火予知計画に関係する大学は、1977年有珠山、1983年三宅島、1986年伊豆大島、1990年雲仙岳、2000年有珠山などの噴火や火山活動の高まりに際して、必要に応じて合同観測班を組織し、迅速且つ的確な観測研究活動を実施し、マグマの動態、噴火メカニズムの解明などの火山学基礎研究を進展させるとともに社会対応に果たした役割は大きい。

 三宅島において大学は、昨年6月の噴火活動開始以降、活動の推移を把握するために必要な観測研究に取り組み、わが国がこれまで経験したことのないタイプの噴火活動の理解に全力を注いでいる。特に、9月の全島避難以降、電源や道路事情など制約あるなかで最大限の努力と労力をもって観測研究を継続してきた。

 全島避難から約9ヶ月が経過した現在、三宅島ではまれに火山灰の噴出が見られるものの山麓部に被害をもたらす噴火発生はなく、地殻変動の低下も観測されている。しかし、火山ガス放出量は昨年秋に比べ半減していることが観測されているものの依然高いレベルにあるなど、いまだ活動の終息が見えない状態にあり、活動の推移を見極める観測研究の継続が重要である。このためには、火口近傍をはじめ適地での観測研究を円滑に実施することが必要である。

 三宅島は、関係機関の並々ならぬ尽力により電源や道路の問題は徐々に改善され、また夜間滞在も試行されるようになり、活動評価に必要な火口近傍などでの観測研究も行える環境が徐々に整いつつある。

 しかし、噴火による被害の可能性が極めて少ない外周道路近傍でさえも、いまだに消防庁や警察、保安要員の同行なしに観測が行えない状況が継続している。このような体制は島内での行動の安全確保の趣旨でとられたものであるが、活動状況の変化にもかかわらず、見直しが行われていない。この点に関し、再三、規制緩和の要望を口頭で行ってきたが、現在の活動状況にそぐわない過剰な噴火災害への懸念から未だに改善の方向がみられない。このため、火山ガスに対する制約や同行保安要員に対する遠慮などにより、火山研究者の観測・研究活動が無意味に制限されている結果となっている。特に、火山ガスの濃度規制については、二酸化硫黄濃度が20ppmまではガスマスクの着用により調査観測が行えるとした昨年12月の取り決めがあるにもかかわらず、10ppm(本年3月)、5ppm(同5月)まで引き下げられ、観測に大幅な制限が加えられたこともあった。このような火山研究者の観測活動に対する制約は世界の火山観測史上例がなく、極めて異常で、遺憾である。

 この間、三宅島の観測研究の実施にあたっては、気象庁には関係省庁との調整、島内活動の支援をはじめ一方ならぬご苦労を賜っているところであるが,活動の現状や火山ガス災害の実情に基づいたわれわれのこれまでの要望が的確に伝わっているのかはなはだ疑問にも感じるところである。

 

 三宅島における円滑な観測研究の実施のために、

1. 外周道路近傍や鉢巻林道付近での観測研究活動には研究者のみでの行動を可能とすること

2. 二酸化硫黄濃度制限の基準、20ppmを現場に徹底させること

3. 円滑な研究活動のための要望事項が、島内での行動規制に反映させるため、必要に応じて関係する会議等に研究者が参加できるようにすること

の3項目の実現に向けて格段のご配慮いただきたくお願い申し上げます。

 ただし、1,2の要望にあたっては、研究者は各自警報装置つき測定器または検知管などによりガス測定を実施し、必要に応じてガスマスクを装着すると同時に、災害対策本部への緊急時の連絡手段に習熟することを条件とする。

 

 火山噴火予知研究協議会と連携して、火山観測の体制や実施計画などを検討する火山噴火予知研究委員会は、現在の三宅島における活動状況ならびに観測研究の必要性と島内での行動規制の実態を踏まえ、同島の火山活動を迅速且つ的確に評価するための円滑な観測研究の実施に向け、一段のご尽力を要望するものであります。


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