先輩からのメッセージ

技術部総合観測室 技術職員      八木健夫
 平成16年入所   入所時から海での地震観測業務に従事する


地震研究所に所属する技術職員の多種多様な仕事

 日本列島は世界で最も地震・火山活動の活発な地域のひとつです。最近では阪神淡路大震災、岩手・宮城内陸地震、三宅島や浅間山噴火などが 記憶に新しいところでしょう。このような中で、地震研究所は「観測固体地球科学分野を中心とする先端的研究を推進し,地震・火山現象について新たな理解への 道を切り拓いて,災害軽減に貢献すること」を使命とし活動しており、研究機関にむけた情報発信や、社会に向けての教育普及・啓発活動も行っています。もちろん技術職員も上記の使命を担う者として業務に従事しています。具体的には、地震や火山活動にともなう様々な現象の観測、さらに観測・実験研究に必要な機器の開発や情報流通基盤整備などを行っています。このような多様な業務があるなかで、私の主な仕事を以下にご紹介します。

日本人が作った世界一高性能な海底地震計

近年、日本周辺の海域で発生したマグニチュード7以上の大地震には、福岡県西方沖の地震と宮城県沖の地震があります。どちらの地震も大きな被害をもたらしました。また過去に海で発生した地震では、三陸地震のように多くの犠牲者を出したこともあります。日本列島は海に囲まれているため、岩手・宮城内陸地震のような内陸の地震だけでなく、海で発生した地震によっても被害を受けるのです。
地震の研究においては、できるかぎり地震が発生するところに近づいて観測をすることが重要です。そこで、海で発生する地震を間近で観測する「海底地震計」が開発されてきました。この海底地震計が、日本近海に設置されていますが、まだごく少数にとどまっています。それに対して陸上の地震観測点は2000点以上もあります(200811月現在)。被害をもたらす大地震が海で起きているにも関わらずこの差はどこから生じるのでしょうか?それは海底の過酷な環境が原因です。まず海底では観測機器が何百気圧という水圧に耐えなければなりません。また海底には電源がないため、独立した電源を確保しなければなりません。さらに、問題が生じた時に容易に修理にいけるような場所ではないので、高い信頼性と長期にわたる安定性も必要です。海底地震計の開発はこのような技術的な制約下で実施されてきました。
地震研究所ではこれらの苛酷な環境を極めて高い次元で克服しつつある海底地震計を開発しています。水深6000mの水圧に耐えられるチタン合金製の容器をもち、電力密度が高いDC電源を搭載し、メンテナンスフリーで1年間の長期観測が可能な自律型の海底地震計です。海外の研究機関でも似た性能を持つ海底地震計を開発していますが、それらは地震研究所の海底地震計と比較すると数倍の大きさで運搬や設置がたいへんですが、地震研究所の海底地震計は直径約60cmとコンパクトで、少人数でも扱いやすいように設計されています。その他、細部にまでこまやかな工夫が施してあり、様々な配慮の行き届いた、いかにも日本人が作製したといえる、世界一高性能な海底地震計です。

 


地震計をもって南極まで行った先輩

私の仕事のひとつは、上記で紹介した海底地震計を組み立て、観測現場にそれらを設置し、そして観測終了後に回収するという一連の観測作業を通して、観測目的に適したデータを取得し研究に使えるデータへの変換をおこなうことです。そのなかで、海底地震計の問題点を明らかにし、新たな改良点を見いだしたり、新たな観測手法を考えたり、といった海底地震計観測手法の開発・改良にもたずさわっています。海底地震計のように観測で使用される装置は、機械や電子システム、デバイスなど様々な要素が絡んでおり、設計・開発・組み立てには工学的な幅広い知識が要求されます。もちろん技術向上のために研修の機会も数多く設けられており、職務に必要な知識を徐々に身につけていくことができます。私自身、より良い観測機器ができるように勉強の日々で、ゆくゆくは新しい海底地震計を開発したいと考えています。目的に適したデータを取得するために、最先端の技術を常に活用していくというのが技術職員の大きな魅力のひとつでしょう。
私は今まで釧路沖や宮城沖、東南海・南海の海域を主な観測現場としてきました。これらの海域までは船やヘリコプターで移動しています。ヘリコプター内で海底地震計の設置準備を進めつつ、ふと眼下に広がる大海原をみると、大自然の中で仕事をしていることに感無量!! 自然環境の中での作業があるのも、この仕事の大きな魅力です。ヘリコプターを使って無人島に地震計を設置しに行ったひともいます。(帰る際にヘリコプターがエンジントラブルをおこしたそうですが。)インド洋や大西洋、はては南極にまで観測に行った先輩たちもいます。技術開発となると研究所や工場にこもって働くことを考えることが多いかもしれませんが、地震研究所の技術職員はそのようなことだけではありません。世界中が仕事場となりうるのです。


地震研究所での勤務を希望される皆さんへ

地震や火山の研究において地震研究所は全国の大学や研究機関の中核的な機関であり、先駆的研究を行っている様々な分野の研究者がいます。そのような環境の中で、地球の活動に関する今まで取得できなかった情報を得るために最先端の技術を駆使して観測を行い、その結果新たな知見が得られるという一連のプロセスに自分が関わっていく。そういう仕事にチャレンジしてみませんか。