北海道南西沖地震津波

 1993年7月12日の22時17分、北海道奥尻島西方海域に起きたマグニチュードM7.8の地震と、それに伴う津波によって、死者行方不明231人、負傷者305人、家屋全半壊流失937軒にも及ぶ大きな被害を出した。地震発生後、ただちに北大、京都大、防災科学技術研究所と共同して10地点における強震観測が実施され、8月8日のM6.3の最大余震を含む強震加速度記録を採取することができた。
 津波は地震発生後の約5分後に奥尻島の海岸を襲い、最高で西海岸藻内地区無縁岩キャンプ場背後の谷筋にそって海抜30.6mの地点まで海水が上昇した。島南端の砂州の上に広がる青苗の最南部市街地の「青苗五区」では、第1波が西からの直撃波として押し寄せ、全戸が完全流失し、ここで70名の死者を出した。奥尻島の最南端の青苗岬のすぐ沖合海域を東に向かって回り込んだ津波は、本震発生の7分後、背後の初松前集落付近に集中して、ここで13.2mもの遡上高を示した。人口80人の初松前は全戸流失して32人もの死者を出した。初松前に集中した海水の高まりは、海岸線にそって西に進み始め、青苗の中心市街地を、北から襲った。本震発生後16分ほどして海水は市街地北側防波堤の付け根の自然砂丘との隙間から市街地の北部に浸入して、市街地のなかに強い南下流を作った。木造家屋の柱や屋根材、家具などはこの南下する強い流れに運ばれ、南側防波堤の付け根付近で海に投げ出された。津波の翌日に撮影された航空写真には、市街地を薙払った海水の強い南下流の存在を示す、内港の水面をびっしりと覆った木片の浮遊が見られる。

(都司 嘉宣 地震火山災害部門,
工藤 一嘉 地震地殻変動観測センター,
嶋本 利彦 地球流動破壊部門)

                                       
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Mar. 1996, Earthquake Research Institute, Univ. Tokyo.