航空機搭載SAR(π-SAR)によるインターフェロメトリ処理
Single-path radar interferometry by an airborne SAR (PI-SAR)

小林達治、梅原俊彦、灘井章嗣、佐竹 誠、松岡建志、浦塚清峰(郵政省通信総合研究所)
Tatsuharu Kobayashi, Toshihiko Umehara, Akitsugu Nadai, Makoto Satake, Takeshi Matsuoka and Seiho Uratsuka (Communications Research Laboratory)
E-mail: tkoba@crl.go.jp

Abstract: An airborne X-band synthetic aperture radar system developed by Communications Research Laboratory has cross-track interferometry function.  We have taken flight experiments by our SAR since 1996.  The resolution is 1.5 m in both azimuth and range direction.  We aim at a height accuracy of 2.0 m.  In this report we describe the interferometry processing of our SAR system.  Furthermore we discuss the interferogram quality.

Keyword: Interferometry, High-resolution, Unwrapping, Topographic Mapping and Coherence

 1. はじめに
郵政省通信総合研究所で開発した航空機搭載合成開口レーダ(π-SAR:Polarimetoric and Interferometry SAR)は機体の左右にアンテナを固定することで,シングルパスでの干渉SARを実施して地表の各地点の高さを測定する機能を持っている.シングルパスでの観測であるため,植生や土壌水分量の時間的変化を気にすることなく,干渉度の高いデータを取得することができる.また,この画像の水平分解能は1.5m,目標垂直分解能は2mであるから,建造物の高さを求め,災害監視への応用についても期待されている.さらに,メートルオーダでの干渉SARを実施することで様々な均一な領域がどの程度の干渉性をもつのかまた地表のどこの高さを測っているのかについての基礎データを取得するのに有効である.
航空機に特有な問題として,機体の動揺がある.これを補正するため,再生処理の段階で慣性航行システムのデータを使い各パルスごとに動揺補正を実施している.また,2mの垂直分解能を実現するためには基線長(アンテナ間隔)を0.8mm以下に固定する必要がある.このことを確認するため,加速度計によるアンテナの振動測定を実施した.さらに,ノイズによるエラーが相対位相から絶対位相を推定するときに空間的に伝搬してしまうアンラッピングの問題に対しては,ブランチカット法を採用して処理している.

2. 航空機搭載多機能SAR(π-SAR)
π-SAR1)は1996年8月のテスト飛行以来,年数回の飛行実験を実施してきた.π-SARの特徴はX,Lバンドの2周波観測,高分解能観測,全偏波観測,実運用可能な高高度観測と広い観測幅,Xバンドでの干渉SAR機能が挙げられる.諸元を表1に示す.干渉SAR用のアンテナ間隔は2.30mで,Xバンドのアンテナ角度はロールとヨー方向に可変で,ヨー補正は偏流の補正に使っている.
 
Table.1 PI-SAR system parameter
Frequency (GHz)  X (9.55) L (1.27)
Band width (MHz) 100 50
Peak power (kW) 8.3 3.0
Incidence angle (degree)  10 -- 75  20 -- 60
Incidence angle Variable Fixed
AZ beam width (degree)  2.3  9.8
Antenna size (cm)  106.5x20  155.0x65
Data record rate (Mbps) 512 256
Resolution (m) 1.5 3.0

3. 取得SAR画像データ
図1に伊豆大島の三原山周辺の5kmx5kmのSARの強度画像,位相差画像,絶対位相画像,標高変換後の鳥瞰図を示す.図中,飛行機の進行方向は右から左で電波の照射方向は上から下で,スラントレンジで示している.今回はノイズを減らすためにアジマス方向に16ルック、レンジ方向に4ルックをおこなっている。画像データの観測パラメータを表2に示す.

 
 
Table.2 Observation parameter
Observation no.  902 (Sep, 97) Mt.Mihara  1907(Oct, 98) Osaka city
Track angle  -142.7 degrees 93.4 degrees
Altitude  12115 m  6486 m
Velocity  206.8 m/s  222.8 m/s
Drift angle  -8.31 degrees  -2.39 degrees
Incidence angle  36.2 -- 52.6 17.7 -- 56.7
Time(JST)  09:54:19 12:06:39

4. まとめ
今回は干渉SARを実現するためのハードの構成とアンラッピングを含む干渉SARの処理方法について述べる。さらに、日本周辺で取得した火山,森林,都市部についての飛行実験で得られた干渉SARデータを使った干渉SARの性能評価について報告する。

5. 文献
1) T.Kobayashi et al :”CRL/NASDA Airborne Dual-frequency Polarimetric Interferometric SAR”, The Proceeding of the European Remote Sensing, Vol. 3497, No.2, P2 -- 12, 1998