討論および意見交換(中間のまとめ)

まとめ:大村 誠(高知女子大学)

参加者の主な発言概要は,次の通りです。なお,本稿の筆者(大村)が,録音テープをもとに意見をまとめ,さらに討論に参加しなかった読者にも内容が理解できるよう,大村の判断で内容を補足しました。したがって,当日の発言概要そのものが記載されているのではないことを申し添えます。

1.コヒーレンスの計算(定義)について

a. 軌道情報を用いてフラットニング(flattening)してから計算したほうがよい。
b. 厳密なフラットニングは必要ないにしてもフラットニングしてから計算した方がよい。
c. 計算を行う際のWindowサイズは,画像の特徴的なパターンが判別できる程度のものが向いているのではないか。
d. 理論的考察により,水蒸気の影響を受けないことが分かる。


2.強度画像とコヒーレンス画像の使い分け

a. 災害時にはデータ提供の迅速さが求められるので,素早く画像化できる強度画像は有利。しかも,干渉性を考慮しなくてもよい。
b. Lバンドでは,日本の強度画像には時間的な変化が見えない。そのため,干渉性の高いLバンドの特性を生かして,コヒーレンスも用いることになる。干渉処理を前提とした衛星・センサの運用を工夫する必要がある。
c. Cバンドの強度画像は,Lバンドによるものよりも時間的な変化は明瞭。しかし,干渉性は低くなる。
d. L/Cなどの複数バンドを併用する。既存のSARデータを有効活用するためにも,衛星データのデータベースのさらなる整備が望まれる。
e. バンドは,樹冠を透過するので,木々の太さなど,バイオマスに関する推定に応用できそう。


3.航空機SARによる観測

a. 天候下でも,航空機搭載SARによって強度画像を取得できる。
b. 社会的に貢献できるシステムの構築を目指す。
c. 現時点では,画像作成に観測後1時間半程度の時間を要するが,将来は機上でリアルタイム・プロセッシングを行いたい。


4.偏波観測の応用(ポラリメトリックSAR)

a. 航空機SARによる多偏波観測を行い,L/Xなど複数バンドによる結果をカラーコンポジットするなどして地表被覆の分類を行う。
b. 表面散乱の効果が大きいC/Xバンド,体積散乱の効果が相対的に大きいLバンドの組み合わせの有効性が期待される。


5.SAR画像の強度相関・コヒーレンス・干渉画像の利用

a. 強度相関の場合,画像ペアの基線長に制約がないという利点がある。
b. 特に傾斜地では,SAR強度画像の相関のみに基づいて,地表状況の時間的変化を検出することは難しい。そのため,(位相を考慮した)コヒーレンスや干渉画像の併用が求められる。
c. SARデータを用いた処理では,使用できる情報は落とさず,すべて利用することが重要である。
d. 衛星/センサの運用にあたって,迅速なモニタリングと干渉性の確保を両立させることには困難もあるが,干渉性が確保できる運用を工夫してほしい。
e. JERS-1は,干渉可能なLバンドSARデータを多く残した。将来のALOSでも干渉処理を考慮した運用を工夫してほしい。
以上