将来のインターフェロメトリミッション計画

Future SAR Interferometry Mission Programs

児玉 哲哉 (宇宙開発事業団 地球観測システム本部 地球観測システム技術部)
Tetsuya KODAMA:(Earth Observation Systems Department, NASDA)

Abstract: SIDUSS(SAR Interferometry Dual Satellite System) is designed for real-time interferometry observation by using two identical satellites in tandem position on the same orbit. Once the SIDUSS aimed global topographic mapping but SIDUSS'98 is reconfigured mainly to detect surface deformation by volcano eruption and earthquake. This paper compares the both satellite systems and introduces future interferometry missions.

keywords: Dawn Dusk Orbit, Dual Satellite System, DEM, Surface Deformation, SRTM, ALOS, Information Gathering Satellite

1.はじめに

 SARインターフェロメトリは、地震及び火山噴火等の地殻変動検出に利用1)されているほか地形図作成への応用が期待されている。これまでの単一衛星による観測では、軌道間距離の制御が行われてないため、インターフェロメトリ処理の成否は偶然にまかされている。
 本資料では国内外で計画されている将来のインターフェロメトリ計画について述べる。
 

2.SRTM(Shuttle Radar Topography Mission)

 SRTM2)は、スペースシャトルに搭載した60mのブームを介した2基のC-band/X-band SARによるインターフェロメトリ観測ミッションで、11日間のフライト期間中に全球の80%の陸域の地形図を作成することを目的としている。
 NASA/NIMA間のMOUによるとSRTMデータは非機密扱いであるが、米国外の一部データは国防総省の制限下におかれる。全データの処理には約1年間が見込まれており、その後 Level-2 Terrain Height Data Sets(空間分解能30m・標高精度16m)等が配付されることとなっている。
 

3.LightSARとRadar-1

 今夏NASAは、SRTMと平行してJPLで研究が行われていたLightSAR3)計画の中止を決定した。
 LightSARは、NASAと選定されたメーカーが共同で、2002年11月に打上げが予定されていたSAR衛星に出資・運用するプログラムであり、双方の利益となることが期待されていた。しかし当初からメーカーには、NASAの分担額はあまりにも少なすぎてプログラムに投資できないという不満や、米国政府が衛星の性能やデータ配布に制限を加えることによってプロジェクトの収益性を損なわせる懸念があった。
 一方、RDL4)は分解能1mのRadar-1を2001年に打ち上げを予定しているが、その他の高分解能商用衛星計画と同様、見通しは不明である。
 

4.SIDUSS(SAR Interferometry Dual Satellite System)

 SIDUSS5)は同一軌道にタンデム配置した2個のSAR衛星により恒常的にインターフェロメトリ観測することを目的としており、NASDAにおいてシステム検討を実施している。
 観測軌道は降交点地方時が6時もしくは18時の太陽同期準回帰軌道(Dawn Dusk Orbit)である。この軌道はRADARSATでも採用されており、衛星に対する太陽入射角がほぼ一定であるため、太陽電池パドル駆動が不要であるほか、衛星熱設計も容易となる。更に日陰がほとんどないため、SARの様に大電力を消費するミッションに適しており、他の地球観測衛星と地上局の運用時間が重なる心配がない。
 平成6年度に検討したSIDUSSでは、同一軌道に配した2個の衛星によりリアルタイムインターフェロメトリ観測を目的としていたが、10年度検討(SIDUSS'98)では地殻変動監視を主目的とし、単一衛星の回帰日数を半分にするように互いの緯度引数を180度ずらして配置することを考慮した。
 SIDUSSとSIDUSS'98の比較をTable 1に示す。

Table 1: System comparison of SIDUSS and SIDUSS'98

    SIDUSS  SIDUSS'98
Data processing interferometry (DEM generation) differential interferometry
Observation period  10〜20 days  a half of SIDUSS's
Orbit control difficulty for clustering  not so difficult ?
Error by water vapor  negligible  correction is desirable
Detection of deformation subtraction of DEM  interferometry processing
Interferometry processing easy  not so easy ?
Accuracy  better  not so better ?
System extension  by two satellites  by one satellite

 SIDUSSでは常時DEMを作成し、地殻変動は回帰毎の画像の干渉処理から検出するのに対し、SIDUSS'98では相手衛星の観測した画像との干渉処理から検出することになるのが2つのシステムの違いである。
 地殻変動監視には観測頻度の観点でSIDUSS'98が優れていると考えたが、干渉性ではSIDUSSに分がある。 また水蒸気による誤差の影響が少ないことも見逃せない。
 折衷案として運用初期にはタンデム配置で一回帰分のDEMを作成し、その後緯度引数を180度ずらす軌道変換を行い地殻変動監視モードに移行することも考えられ、最終的な運用形態の確定は今後の課題である。
 

5.将来展望

 今後NASDAが打ち上げ予定のSAR搭載衛星は、陸域観測技術衛星(ALOS)6)と情報収集衛星(レーダー衛星)である。ALOSはJERS-1/SAR同様、回帰日数が長く、主ミッションが光学センサによる地形図作成のため、高頻度での地殻変動検出には向かないと思われる。レーダー衛星については同一衛星が2機運用されるものの、情報収集衛星の撮像要求及びデータ処理に関しては、衛星情報管理運営機関が定める優先順位に基づき処理されることとなっている7)。
 ALOSでは光学センサとSARを同一衛星に併載していたものの、情報収集衛星では光学センサとSARを別衛星に分けた。ALOS後継機での高精度インターフェロメトリミッション実現が期待される。
 

References

1) 例えば http://www.eorc.nasda.go.jp/JERS-1/JERS1_News/mt_iwate_j.html
2) http://www.jpl.nasa.gov/srtm/
3) http://lightsar.jpl.nasa.gov/
4) http://www.rdl.com/
5) 児玉、島田、若林「SARインターフェロメトリー双子衛星システム(SIDUSS) '98」日本リモートセンシング学会第25回学術講演会論文集、1998年11月
6) http://alos.nasda.go.jp/
7) http://www.sta.go.jp/shimon/SAC/GIJIYOSI/KEICHO/H10/KEICHOA.HTM