平成22年度地震研究所共同利用研究集会
「海底および地下の流体移動をいかに検出するか:熱・電磁気・化学・湧出量測定の統合」
日時:2010年(平成22年)9月13日・14日
場所:東京大学地震研究所1号館3階 セミナー室・2号館5階 第一会議室
海域における地殻変動やマグマ活動には、地下の流体の存在量やその移動プロセスが大きく寄与していることが、最近の研究から提示されています。例えば海溝 型巨大地震の発生や破壊拡大・伝搬等には、断層面内の間隙水圧異常が極めて重要な役割を果たしていることが、摩擦実験・フィールド観察・モデル計算などか ら示されています。水の挙動を把握するためには,空隙率,浸透率,流動電位、間隙水圧など,流れに関わる諸物性量の把握が必要であることは言うまでもあり ません。このために、海底、あるいは海底下での地震波,熱流量,電磁場,化学組成,湧出量などの観測を行うことになりますが、測定結果を統合してこれらの 物性値を推定することは簡単ではありません。たとえば浸透率は流動を決定付けるもっとも重要な物性量ですが,実験室レベルの測定値と現場での測定値が桁で 異なるなど,スケール依存性が顕著です。この他,流動電位のように観測と理論との接続が発展途上の分野もあります。つまり,地殻内部の水の流動を把握する には,上記の様々分野が組合わさるという他に,観測,実験室,およびモデリングといった手法に関する多面的なアプローチも必要です。本集会では、海底断層の物性や活動度を推定したり、熱水域の熱・物質フラックスを正確に推定するために、各種実測と理論を統合してその手法の確立を目指し、観測の実際から、最近の知見、解析手法に至る活発な議論が行われました。
本研究集会は、東京大学地震研究所共同研究プログラム(課題番号2010-W-6)の援助を受けました。
プログラム
9/13(地震研究所1号館3階 セミナー室)
0930-1010 Opening「今何が面白いのか、何が必要か」
木下正高(海洋研究開発機構・IFREE)
1010-1050 南海トラフにおける冷湧水の分布と地質構造,そしてモニタリングの試み
芦寿一郎(東京大学・大気海洋研)
1050-1130 間隙水測定から推定される湧水様式と水の起源
土岐知弘(琉球大学・理)
1130-1210 長期温度モニタリングによる海底冷湧水域の熱学・水理学的研究
後藤秀作(産総研)
1210-1310
Lunch
1310-1350 海溝周辺の熱流量分布・熱構造と間隙水の流動
山野誠(東京大学・地震研)
1350-1430 沈み込み帯浅部のゆっくり地震と水
伊藤喜宏(東北大学・地震噴火予知研究観測センター)
1430-1510 間隙圧変動による水理・地震特性の推定
加納靖之(京都大学・防災研)
1510-1530
Break
1530-1610 海底熱水系の浸透率を地球熱学的に見積もる
川田佳史(海洋研究開発機構・IFREE)
1610-1650 数理モデルによる陸水流動系、塩淡境界、および海底湧水のシミュレーション
登坂博行(東京大学・工)
1650-1730 熱力学的考察に基づく二相流動・地盤変形連成理論とシミュレータの開発
愛知正温(東京大学・工)
1730-1800
Discussion
1800-
懇親会(地震研1号館7階)
9/14(地震研究所2号館5階 第一会議室)
0930-1010 自然電位観測の現状と今後
石戸経士(産総研)
1010-1040 海底湧水系における自然電位測定
後藤忠徳(京都大学・工)
1040-1050
Break
1050-1120 電磁気学的手法を用いた流体流動検出に向けて
笠谷貴史(海洋研究開発機構・IFREE)
1120-1140 三宅島で捉えられた長周期地震にともなう地電位差変動の起源
桑野修(東京大学・地震研)
1140-1220
総合討論・まとめ