地震予知の本命:地下深部における地殻活動総合観測

ボアホール地殻活動総合観測装置の開発
 地震は地殻内部の断層破壊であるが、物質が壊れるときには前兆的変化、特に変形が必ずあると考えられる。研究室における岩石破壊の研究においても前兆的変形が観測されている。前兆的変化は地震に伴った変化と比較して非常に小さいと考えられる上に、現在はほとんど地表近くで観測しているため人工的ノイズなどで地震の前兆に関連した信号が弱められるか到達しない可能性がある。例えば割り箸を曲げて折るときのことを考える。この曲がる状態が地殻変動に対応し、ミシミシという音が微小地震・前震に対応し、折れる(地震)前の前兆的現象とみなされる。しかしながらこの状態を遠く離れたところやスリガラスを透して見ると変形もよく見えないし音も小さくなる。また雑音の大きいところで見ると変形はわかるが音はよくわからない。これが現在前兆変化が観測されにくい状況に対応すると考えられる。
 地殻変動のない地震発生は考えられない。このように地下深部における観測の重要性を考慮し深部において観測可能な小型で安価なボアホール地殻活動総合観測装置を開発した。この計器は深度200−1000mの地下に設置可能である。今までの聴診器による診断から胃カメラによる診断を可能にするものである。歪みが3成分、傾斜2成分、速度、または加速度3成分、ジャイロ、温度などの観測が可能である。この計器により、深部観測が可能になり地震の前兆現象、地震に伴った現象に関する有効なデータの観測が期待される。

(石井 紘 地震地殻変動観測センター)


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Mar. 1996, Earthquake Research Institute, Univ. Tokyo.