創立75 周年記念式典が開催される

75 周年記念事業実行委員会


 

地震研究所は,1925 年11 月13 日の創立以来,本年で75 周年を迎え,11 月10 日(金)に,地震研究所において創立75 周年記念式典および祝賀会が行われました. 

式典は,学内外から約110 名の参加を得て実施されました.藤井敏嗣地震研究所長の式辞に続き,蓮實重彦総長の祝辞が述べられ,遠藤昭雄文部省学術国際局長の祝辞が岩本渉学術課長から紹介されました.また,本所と研究面で関係の深い海洋研究所から平啓介所長の祝辞が述べられました.式典終了後,会場内に展示されたパネルなどを用いて,地震研究所の各種研究活動が招待者に説明されました.

その後,所内において祝賀会が行われ,山本孝二気象庁長官など学内外の招待者から祝辞をいただき,懇談の後,盛況の内に閉会しました.

また,当日夜には,創立75 周年を記念して所内懇親会が開催され,国外からの研究者も含め懇親を深めました.

 

式辞を述べる藤井敏嗣地震研究所長

祝辞を述べる蓮實重彦総長

 

式 辞

藤井敏嗣地震研究所長

一言ご挨拶申し上げます.

本日は皆様お忙しいなか,当研究所の記念式典にご出席下さいまして,まことにありがとうございます.

この地震研究所は,1925 年11 月13 日に創立されまして,本年11 月13 日でちょうど満75 年になります.75 年の式典は別名ダイヤモンド記念式典とよばれますが,このダイヤモンドは私ども地球科学の研究者にとってもなじみの深いものです.すなわち,宝石中の宝石とよばれるダイヤモンドは地下深く200 km よりも深いマントルで作られ,火山活動によって地表にもたらされた鉱物で,まさに私どもの研究対象の一つだからです.

さて,地震研究所が創立された,1925 年は関東地域に大きな災害をもたらした関東大地震の2 年後であります.本所創立の意気込みは,創立10 周年を記念いたしまして,故寺田寅彦博士が起草した碑文に伺うことができます.すなわち,「本所永遠の使命とするところは,地震に関する諸現象の科学的研究と,直接または間接に地震に起因する災害の予20防並びに軽減方策の探求とである」と書かれています.注目すべきは,未曾有の大震災の直後に設立された研究所でありますが,災害の予防すなわち防災だけにとどまらず,その原因となった地震の科学的研究をむしろ第一義的な設立目的に上げている点であります.短期的な,あるいは即効的な結果のみを求めるのではなく,基礎科学の重要性をはっきりと認識している点が私ども地震研究所の出発点でありました.本所は創立以来75 年の間,一貫してここに述べられた使命を全うするよう研究に励んでまいりました.ここでは地震ということばで表現されていますが,この短い言葉のなかには地震と火山噴火の両方の意味合いが込められています.このような経緯がありますので,1994 年に改組致しました時にも,頑としてもとの地震研究所の名前にこだわった次第であります.

本所創立の当初におきましては東京帝国大学の寺田寅彦や長岡半太郎,中央気象台の岡田武松などの兼任の所員を抱えているものの,配当定員としては5 部門6 名という非常にささやかな組織でありました.その後,しだいに部門・定員の数を増すとともに,本所内および各地に観測所・施設が設けられ,拡大していきました.1994 年の改組の直前には18部門,18 付属施設,定員148 名という規模にまで発展しておりました.

1994 年6 月には東京大学附置のまま,全国共同利用研究所に改組となり,4 大部門,4 センター,2 観測所の体制ができあがり,さらに3 年後の1997 年4月には海半球観測研究センターが新設されて現在の地震研究所の形ができあがったわけでございます.このような本所の発展は,文部省・東京大学をはじめ,関係各位のご理解・ご支援のたまものであり,また諸先輩の努力によるものと感謝申し上げる次第でございます.

さて,この75 年の歴史のなかで,本所はいろいろな時代を迎え,また種々の事態に遭遇しておりますが,一つ一つ例を挙げますとキリがございませんので,省略させていただきます.1970 年代以降,地震予知研究,火山噴火予知研究も本所の重要な研究課題の一つとなってまいったわけですが,1994 年に予知の研究という言葉を設置目的の一つに入れて共同利用研究所へと改組してから半年あまりで,兵庫県南部地震が発生し,阪神淡路大震災という惨事に至りました.その後あっという間に,文部省以外の機関からは地震予知研究という言葉は消え去り,地震調査研究という言葉で置き換えられてしまいました.さらに,測地学審議会が過去30 年にわたる地震予知研究のレビューを行い,地震に関する理解は格段に進んだものの,現時点では地震予知は困難であるという検討結果を発表したとたん,マスコミはじめ,大蔵省も地震研究を冷ややかな目でみるようになったため,文部省も予算獲得に苦労することになったと伺っております.

しかし,複数のプレートがひしめき合う,島弧という地学的特徴をもつ国に生まれあわせた私たち日本人は,地震も火山噴火も避けることはできません.先日も鳥取県西部地震という比較的大きな地震がおこりましたし,三宅島噴火では島民はいまだに島外避難を余儀なくされております.このような地震・火山災害を最小限にとどめるためにも,そして私たち人類の足下をささえる地球を理解するためにも,地震・火山の研究は重要であり,創立から75 年が経過しても,地震研究所の使命は終わらないと考える次第であります.

ところで後程お持ち帰り頂きたいのですが,記念行事の一環として,「大地の躍動を見る」という本を岩波書店のジュニア新書の一冊として10 月20 日に刊行いたしました.これは,20 世紀最後の年に,地震研究所が75 周年を迎えるにあたって,若い人たちに地震や火山の研究を含めた地球科学に興味を持ってほしい,そしてその中から21 世紀の地球科学を担うを研究者が誕生してほしいという思いを込めて作ったものです.ぜひ皆様方の周りの方にも一読をお薦め願えれば幸いでございます.

地震研究所と致しましては,今後とも75 年の伝統のあります本所の使命を十分に達成するよう,一層の努力を重ねる所存でございます.なにとぞ,本所に対して従来にもましたご指導・ご鞭撻をお願いしたいと存じます.

以上を持ちましてご挨拶と致します.

 


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2001/09/10