研究集会
「大地震の震源過程の複雑さと高周波強振動の発生機構」報告

京都大学防災研究所 岩田 知孝




 7月23日,24日の両日,地震研究所で表記研究集会が行われた.地震学, 地質学,工学研究者が集い,震源過程と高周波数地震動発生に関して,観測・ 実験・理論等からの知見に基づく研究発表及び討論が行われた.各発表者には 発表時間20分+討議5分以上が使われ,内容理解を深めるためにはかなり役 だったと思う.地震学においては「ややマイナー」な研究テーマで,発表者だ けの会になるのではないかという主催者側の危惧もあったが,ニューズレター での告知やダイレクトメールが効いたのか,常時50人程の出席者があって, 活発な議論の場が提供できたと考えられる.
 バックグラウンドが違う研究者の集会であると,例えば「高周波数」というよ うな語句であっても一人一人の「周波数帯域」が異なるために,議論の前に語 句の統一を計る必要もあったが,そのような障害より,日頃議論を行っている 研究分野とは違う研究者からの斬新な(日頃思ってもみない)質疑によって, 自らの研究を再認識することができた場面を数多く持てたことが,正に本研究 集会の「狙い」通りであった.地震動災害,破壊過程の複雑さ,既存活断層と の関連という意味において(代表者の意図もあったが),議論の中心が昨年の 兵庫県南部地震に関する研究発表となったが,広範囲の研究領域にインパクト を与えた都市直下地震の例として,各分野の研究者が精力を注いだ研究成果を もちより議論を進めることによって理解をすすめることができた.また,これ ら解析の基礎を支える室内実験や破壊理論に基づく数値実験の最新の研究発表 もきくことができ,表記課題について観測事実に基づく現実のモデル化がかな り進んでいる印象をうけた.同時に,その推進のためには,研究者間の相互理 解と観測量を増やすことが不可欠であって,前者にはこのようなシンポジウム や共同研究の推進を,後者には強震観測網の増強が不可欠であることを痛感し た.
 最後になりましたが,ご発表,ご参加頂いた方々にこの場をお借りして御礼申 し上げるとともに,数年後に同様なテーマで,一歩も二歩も進んだ研究成果に よるシンポジウムの開催を期待しております.
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