研究集会「最近の地球計測技術の発展と21世紀への展 望

加藤 照之


 「あれ,また太っちゃった!」日々体重を測ることは健康管理にかかせません.我 々が住む「地球」も日々その形や変形(体重?)を正確に計測し,変動の状態を常日 頃から監視することは生きている地球をよく理解してその健康を診断するのに極めて 大切です.

 最近20年間の地球を計測する技術の進歩は目をみはるものがあります.宇宙技術 をはじめとして,新しいアイデアにもとづく重力計やひずみ計・傾斜計がどんどん開 発されつつあります.そしてこれらが実地に応用されプレート運動の詳しい姿や地殻 内部の状態が次第に明らかになりつつあります.

 少し残念なのはこれらの技術(特に宇宙関連の技術)の多くが米欧から輸入された ものだということです.我々として,手をこまねいて見ていてよいものでしょうか. 我々ももっと頑張って日本から多くの新しい地球計測の技術を開発し,世界に輸出し たいものです.また,その基本的技術が外来のものであってもその応用方法について 日本独自のアイデアがあってもよいように思います.個人個人での頑張りには限界が あります.みんなで議論して智恵を出しあいましょう.

 そのようなわけで,上記のようなシンポジウムが地震研究所の研究集会として企画 され,去る3月6〜7日に地震研究所第一会議室で開催されました.案の定,プログラ ムは盛りだくさんの内容となり,VLBI, SLR, GPS, SARといった宇宙関連分野から重 力,地殻変動まで21件の話題提供がありました.会は村田一郎教授(本年3月定年退 官)による基調講演で始まりました(写真).会場一杯の参加者というほどではあり ませんでしたが,熱気あふれる討論会となりました.かつては地球計測といっても陸 の話しがほとんどだったのですが,この会では海洋底から月面まで本当に幅広い分野 の話を聞くことができました.ただ,あまりにもプログラムが盛りだくさんだったた め討論の時間が充分とれなかったこと,焦点が絞れなかったことが悔やまれます.し かし,それは今回が最初の試みなのでいたしかたのないことかもしれません.この会 が単発の会に終わらないよう,これから様々な形で地球計測に関係する研究者の交流 が進められることを祈っています.幸い総合討論では,今後も定常的に地球計測の関 係者が情報を交換できるようメールグループを作ろう,という提案があり,通信総合 研究所の高橋幸雄さんが頑張って実現してくださいました.これにはDREAM(Develop ment and Research for EArth Measurements)という名前がつけられました.これか ら我々がどのような夢を語ることになるのか,ご期待ください.


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Last modified: Tue Jul 1 22:53:35 JST 1997