新所長あいさつ

地震研究所長 藤井敏嗣


4月から深尾前所長の後を受けて,就任いたしました.2月末に所長選挙の結果 が明らかになって以来感じていたことではありますが,とんでもない時期に所長 を命じられたものだという感慨が日増しに強くなっております.

一昨年の阪神淡路大震災以来,地震予知計画あるいは地震予知研究に対する外部 の期待も評価もずいぶん変化しました. 地震予知計画あるいは地震調査研究を になう国の機関相互の役割分担も相当変化していますし,地震研究所をはじめと する大学の研究機関の果たす役割も大きく変わろうとしているように見受けられ ます. 地震予知計画や火山噴火予知計画は各々これまでの進捗状況の点検・評 価を受けている最中であり,その結果はまもなく公表されようとしています.こ れを受けて平成11年度以降の予知計画に向けての検討が行われるはずです.検 討はこれから行われるわけですからどうなることか分かりませんが,これまでの 路線の延長線上で進めていくというふうにはいかないことだけは確かなようで す.地震予知や火山噴火予知に関する研究をその設置目的に掲げる地震研究所が これらの動きの中で無関係ではいられません.国の方向が定まるのを待つのでは なく,共同利用研究所である地震研究所が全国の研究者とともに新しい地震予知 研究の方向を拓いていくことこそが重要ではないでしょうか.このような時期に 地震学が専門でない私が所長の任にあることに一種の居心地の悪さを感じている 次第です.もちろん,地震研究所は地震予知の研究のみを行っているわけではあ りませんし,予知研究についての進路が所長ひとりの見解で左右されるはずはあ りませんから,単なる個人的な居心地の悪さであるわけです.

ところで,地震研究所が東京大学付置の全国共同利用研究所に改組してようやく 3年が経過しようとしています.共同利用研究所にとっては,全国の研究者に研 究交流の場を提供することが一つの重要な役割ではありますが,全国の研究者が 競って地震研究所と共同研究を行うことを希望するような先端的な研究所にな り,そのような共同研究を実現することこそが目指すべき課題だと思います.つ まり,地震研究所が予知研究を含む固体地球科学の新しい研究潮流を生み出して いく,本当の意味でセンターオブエクセレンスになることです.このことと深く 関わっているのが,本年度から発足した海半球観測研究センターだと考えていま す.すでに新プログラムとして活動を開始している海半球観測研究プロジェクト も,いよいよ本格的な段階にさしかかったことになります.また,その他の所内 横断的プロジェクトも始動しつつありますし,地球化学などを念頭に置いた研究 基盤の整備も人員確保や予算要求にむけての準備が行われつつあります.国内最 大数の固体地球科学研究者を擁する研究所として真価が問われるのはこれからで す. この重要な時期に,先に述べたような不安を感じつつではありますが,マ ネージメントの責任者として研究所の発展にいくらかでも貢献できたらと願って おります.

これまで2年間深尾前所長の元で所長補佐を務め,所長業務についてある程度は 把握しているつもりではいましたが,その大変さについては殆ど分かっていなか ったことを痛感させられたこの1ヶ月あまりでした.研究に専念しておられる他 の教官を見るにつけ,焦りの念が募るのは事実です.しかし,改組という大事業 を含め,4年間にわたって所長を務められた深尾先生のご苦労を思えば,2年間 の任期の間はひたすら我慢するほか無いと覚悟は決めました.今後2年間,よろ しくお願いいたします.


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Last modified: Tue Jul 1 22:53:55 JST 1997