「海半球国際シンポジウム」開催す

海半球観測研究センター 川勝 均


昨年11月6ー8日、千葉県かずさアカデミアセンターに於て「海半球国際シンポジウム」が、Ocean Hemisphere Project (OHP) international symposium on "New Images of the Earth's Interior through Long-term Ocean-floor Observations"と題して開催されました。このシンポジウムは、平成8年度から5ヶ年計画としてスタートした科学研究補助金・新プログラム「海半球ネットワーク/地球内部を覗く新しい目」の国際的なお披露目の場として、また平成9年度に地震研究所に設置された海半球観測研究センター(これらについては、広報 no.17 をご覧下さい)の船出をいわう意味も含めて催されたものです。会議には、当初の予定を大幅に上回る120人程(うち海外39人)の参加者がありました。その後他の国際会議で参加者に会う度に「あの会議は良かった」と言われるような、大成功の国際会議でした。

現在、日本の研究者によって、太平洋を中心とする海半球(太平洋を含む半球はほとんど海でおおわれていることからこのような呼び名になった。衛星通信などの分野でも使われている言葉らしい)に地球物理観測ネットワーク(海半球ネットワーク)を構築し,地震・地球電磁気・測地等の地球活動長期観測を実施する計画が進められています(Ocean Hemisphere Project, 通称 OHP).この計画は、海半球ネットワークによる観測データを従来の陸上の地球物理観測データと併せることによって,表層から地球中深部までの地球活動の真の解明をめざしています.

今回のシンポジウムでは,総合的な地球観測の解明すべき具体的な目標の優先順位,現在の新しい観測がもたらしつつある成果,これらを踏まえて次への先端的ステップをいかに効率的にふみだすか,を国際的な場で議論し検討しました.具体的には,2のポスターセッション("OHP network and seafloor observations"; "Geodynamics and Seismology")と6の口頭発表のセッション("Oceanic Plates, Upper Mantle, Global Structure"; "Mantle Tomography"; "Slab, Mantle Transition Zone"; "Mid and Lower Mantle"; "Anisotropy, Mantle convection, D" , Plumes"; "Through the Looking-Ocean-Floor: new challenge")とで計100の講演がありました.

今回のシンポジウムの特徴は,地震学・地球電磁気学・マントルダイナミクス・地球内部物性・海底観測の各々の分野の第一線の研究者が同じ土俵に上がり,マントル内の不均質・物質の循環などの問題を議論した点にあります.海半球ネットワークが目指すような総合的な地球物理観測により初めて明らかになるであろう問題点への期待が大きくふくらみました.海底観測に先鞭をつけている日本のリーダーシップにより,グローバルな観測網の新展開の方向性を定める重要な会議となりました.シンポジウムの成果は,1998年から始まる新しい日本の地球惑星科学のジャーナル "Earth, Planets and Space" の特集号として公表される予定です.


写真1:会議の開催の挨拶をする深尾地震研究所海半球観測研究センター長


写真2:講演風景(海半球の地下深部の構造が如何に不可解か発表するハーバード大学Dziewonski教授)


写真3:ポスターセッション風景


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Last modified: Mon Jun 19 1998