研究集会「地球内部の数値シミュレーション」広島大学理学部 本多 了 |
ダイナモ作用に関しては、これまでは速度を仮定して(つまり運動方程式を解かない)、磁場が生成されるかどうかを調べたり、適当な近似(例えば粘性率を無視する)を使って半解析的に研究されて来ました。しかし、計算機の発展により、これらの仮定や近 似なしに問題が解けるようになって来ました(図3、図4)。最近では磁場の逆転を示すモデルも提出されていますが、使用されている物性値等は、まだ現実の地球の核の値とは、かなり違っているようです。
図1:マントルを円筒形で近似した時の対流計算の例。赤い部分が温度が高く青い部分は温度が低い。(東大大学院:中川貴司氏提供)
図2:マントル対流と大陸の相互作用をモデル化した計算例。黄色い部分は、大陸をモデル化して、周りより固くしている。青い部分は核の位置を示す。だいだい色と赤い色は、周りより比較して温度が高い事を示す(水平方向に平均した温度からのずれ)。(広島大学理学部:吉田晶樹氏提供)
図3:ダイナモ作用によって内核がマントルより速く回転するようになることを示すシミュレーション。(東大大学院:河野 長、桜庭 中氏提供)これまで述べて来た数値シミュレーションの発展は計算機の発展に多くを負っています。現在の計算機の発展は1つのCPUの処理を速くする方向から多数のCPUを使って並列的に処理する方向(いわゆる並列計算機)に向かっているようです。つまり、従来は一人の頭の回転が速い人が順番に多量の仕事をしていた訳ですが、今後は多人数の人に仕事を効率的に分けて共同で仕事をする事により能率をあげる事を目指す訳です。従って並列計算機に適したプログラミングは非常に大切で、この方面の研究の重要性が高まって来ています。 今後は、これらの関連各分野が有機的に繋がって行き地球全体の振る舞いが解明されるでしょう。 本紙面をお借りして研究会で発表なされた以下の方々(敬称略)に感謝いたします。瀬野徹三(東大地震研)岩森 光(名大理)木戸元之(東大海洋研)小河正基(東大教養) 河野 長(東大理)桜庭 中(東大理)田端正久(九大理)鈴木 厚(九大理)岩垣伴(広大理)Wei DongPing(中国科学院大学院)北村健彦(東大地震研)中田正夫(九大理)木戸元之(東大海洋研)亀山真典(東大海洋研)中久喜伴益(広大理)江口孝雄(防災科研)中川 貴司(東大理)柳沢 隆寿(東大理)浜野 洋三(東大理)竹広真一(九大理)陰山 聡(核融合研)佐藤哲也(核融合研)吉田晶樹(広大理)岩瀬康行(広大理)
(a) 速度場と磁場の軸対称成分の様子。(左)回転方向成分を示す。赤い部分は東向き、青い部分は西向きの平均速度を示す。コンターはヘリシティの分布を示す。(右)色で示すのはトロイダル磁場、赤い部分は東向き、青い部分は西向き、破線は南から北へ向かうポロイダル磁場で双極子的な磁場ができている。
(b) (a)の状態から時間がたった時の速度場と磁場、表し方は(a)と同じ。磁場の構造やヘリシティの分布は(a)と大局的には変わらないが、速度場の回転方向成分の分布が逆転している。すなわち、ダイナモ作用で磁場が十分大きく成長すると核の内部(内核も含む)はマントルより速く回転するようになる。
(c) 更に時間がたった時の 赤道面内での(上)渦度と(下)磁場の回転軸方向成分の分布。磁束の集まった部分(下図のコンターの多い所)は高気圧性の渦(時計まわり上図で青い部分)の内部に集中している。磁束を中に集めた高気圧性の渦が磁気圧でふくらむために、差動回転はこの渦の回転方向(外側で西向き、内側で東向き)に支配される。結果として内核付近はマントルより速く回転するようになる。
図4: 3次元MHDダイナモのシミュレーションの結果、自発的に生成された磁場の構造を磁力線で表示したもの。図の球面は外核半径の2倍の位置を表し、磁場の強さが磁力線の密度に比例するように磁力線の出発点を選んでいます。各磁力線上で青 --> 緑 --> 黄色の方向に磁場のベクトルが向いています。この図から強い双極子成分が生成されたことが分かります。各磁力線を外核の表面まで追跡すると、磁力線は外核の表面に一様に分布しているのではなく、いくつかの離散的なスポットから出ており、それらスポットは外核内部の対流胞の位置に対応していることが分かっています。(核融合研:陰山 聡氏提供)
Last modified: Sun Apr 19 1998