研究集会

地震・火山噴火の先行現象としての電磁界変動ワークショップ(第二回)

防災科学技術研究所 藤縄幸雄
東京大学地震研究所 歌田久司 (文責)


現在,兵庫県南部地震を契機として地震予知に係わる研究の計画が見直されようとしており,測地学審議会による予知計画30年のレビューを土台に新しい方向を探る努力が続けられている.平成9年9月に東京大学地震研究所において行なわれた「地震予知研究課題ワークショップ」における議論をもとに多くの研究者が地震予知研究の新しい方向を模索している.世界的に地震予知不可能論がいわれる中で,わが国の地震予知に向けた研究そのものの行方を探ると言う難しい局面を迎えているわけであるが,いずれの分野においても可能か不可 能かという疑問に対して十分に科学的な根拠をもって答えるのは難しいというのが実情であろう.もちろん,このワークショップのテーマである「電磁気的前兆現象」の研究分野においても例外ではない.

そのような疑問に答えるために考えられるアプロ-チの代表として,これまで知られている前兆現象候補リスト(いわゆる力武リスト)の各々を科学的に評価しようとするものがある.従来の予知研究では,明確に表現されているわけではないが,主としてこのようなアプローチ(すなわち事例の収集とその原因究明)がとられてきた.いいかえれば,まず現象の観測があって,そこからノイズや既知の他の現象を明確に区別し,地震との関係についての統計的・物理的な関係を明らかにすることである.これに対して,従来の予知研究の進め方の見直しの中で強調されているのは,地震発生の物理にしたがった前兆現象の発生を定量的に予測し,それを観測によって検証しようとするアプロ-チである.

このワークショップは,とかく議論の多い電磁気現象に焦点を当てて,多様な考え方・観測手法に基づいて研究を行なっている当事者と関連する周辺分野の研究者による議論を期待して企画したものである.集会は平成10年2月5日(木)に第一会議室において行なわれ,発表講演数は28件でのべ約80名が出席して活発な議論が交された.当初はすべての講演を口頭で行なっていただく予定であったが,時間の都合で7件はポスターによる発表にしていただくという事態となった.このような面からいえば会は盛況であったといえる.内容については,依然として現象の物理的解釈に関する研究が事例収集の観測研究に追いつかないという印象であった.すなわち上に示した二つのアプローチのうち,後者のアプローチや前者でも物理的な関係の解明についての研究が極めて不十分である.予知研究全般にいわれていることかも知れないが,このような状況の改善がこの分野には特に急務であると感じられた.この研究集会に参加した多くの研究者が筆者と同様の感想をもったとすれば,当初の目的は達せられたということができよう.


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Last modified: Sun Apr 19 1998