「1998年 職員研修(技術発表会)実施について

研修運営委員会


 本研究所では、1971年頃より技術系職員、特に観測所職員を中心として業務遂行上必要な基礎知識・技術・技能の向上を目的とした勉強会が始まった。
 この勉強会は、年に一度研修会として行われる事となり、職員が常勤している観測所が当番観測所となり、各々の観測所のセンサーから解析までの観測システム全体を通して新技術、職員相互の経験・知識を学びあい日常の観測業務に反映させてきた。その後、臨時観測・合同観測など観測点増設に伴う土地貸借の手続き等の書類提出など事務手続きに関して事務部との連携、また本所職員とは技術・情報交換の必要性などにより隔年毎に本所、観測所での研修が行われるようになった。
 1992年からは、更に高度な専門的知識を修得する事を目指し、他大学・他機関の方々の参加も得て、本所において集合研修が実施されるようになった。こうした研修では他大学も含め技術系職員の発表も行われ、年々研修の成果を上げるに至った。
 1994年6月に、地震研究所は、全国大学の共同利用研となり、部門・センター制を基本とする組織改革を行った。 観測・実験、データ処理と研究事務、計器開発等を担っている技術系職員は、それまで所属研究室の枠内で仕事の配分や技能の習得を考えていればよかった。しかし、研究室という枠組みが消失したことで、異なる研究分野の教官の研究を補助したり、多分野に跨る観測研究計画に参加することが要請された。
 一方、そのために必要な新しい知識・技能を獲得できる場は、研究所として用意されていなかった。こうした経過と反省を踏まえ技術系職員と所側とが、何回かの話し合いを持った。この結果、技術系職員が各分野で活躍できる場を制度として保証するとともに、技術系職員による技術発表を主とする職員研修として、本年度より新たに「職員研修制度」を発足させる運びとなった。
 新職員研修制度の形態としては、従来から行われている全員を対象とした「集合研修」(以後全体研修という)を一層充実させると共に、数人以上で行う「グループ研修」と、個人で技能や資格を取得する「個人研修」がある。
 研修運営委員会は、日常業務の中で個人や地震研究所全体の技術レベルを向上させるような成果が期待できるものを「研修」として認定し、これを積極的に支援する考えである。
 研修は、申請書を研修運営委員会に提出することと研修成果報告書の提出を義務とする。
 本年7月1日(水)より3日(金)の3日間にわたり新研修制度として実施した全体研修の参加者は、技術職員36名(地震研究所28名、東北大学大学院理学研究科3名、名古屋大学理学部2名、京都大学防災研究所3名)、所長、事務長、部門主任、センター長他、総計70名であった。
 研修1日目は、所外研修として最近運用が開始された、横浜市の「高密度強震ネットワーク」について見学した。横浜市災害対策室の方々および地震研究所の菊地教授より災害対策への活用・運用の実際・基礎研究への利用についての説明をして頂いた。 その後、30分程度の質疑応答のあと同市役所敷地内に設置してある強震計施設を見学し終了した。
 研修2,3日目は、藤井所長の挨拶のあと、技術発表会に移り11名の技術職員と4名の教官・図書職員による発表が行われた。発表内容は、観測点設置に際し点の選定、事務手続き、施工、建設、データ伝送、処理に関するもの。伊豆半島地域における地震観測網の整備と20年以上にわたる観測機器と処理方式の進化に伴う震源情報の高精度化。過去に得られた貴重な地震記録の保存と利用者に効率的な環境を提供するためのデータベース化について。フィールド観測の解析と使用する機器の測定精度の検証、測定環境や気象条件などによる誤差要因と観測精度の関係について。ボーリング孔に埋設し初期応力測定などに有効使用できる回収型歪計の開発の現状と4ヶ所で行われた測定実験の結果報告。数多くのデータや情報を敏速且つ正確に伝達する手段として有効なWWW(World Wide Web)について、特に緊急時など必要に応じ簡単にホームページが開設できるソフトの紹介と実演。など多岐にわたる分野の発表があり、活発な意見の交換が行われた。
 今回、3日間の研修を修了し、研修成果報告書を提出した者には、地震研究所所長名による研修修了証書が交付され、本年度の全体研修を終了した。
 また、研修2日目の夕刻より懇親会を催し、技術職員相互の親睦をはかるとともに忌憚のない意見を頂いた。多くのご意見を頂き研修運営委員会は、他大学の関連部局の施設長に了承を得るよう交渉し、他大学の技術職員の方々にも技術発表を行って頂く。地震研究所の「全体研修」が全国大学の固体地球科学関連で働く技術職員の実力養成の場として活用されることを目指すという方向で検討することとなった。
 最後になりましたが、今回の全体研修実施にあたっては、地震研究所内外の多くの方々にお世話になりました。横浜市役所総務局災害対策室には所外研修の機会を提供して頂きました。東北大学大学院理学研究科、名古屋大学理学部、京都大学防災研究所の関係各位には、各機関の技術職員の「全体研修」出席に便宜を図って頂きました。また所長、事務長、所長補佐、各部門主任・センター長や何人かの教官には、技術発表を全て聞いて頂きました。とりわけ技術職員がいわば缶詰状態であるため、会場の設営、会場確保の事務手続き、懇親会の準備など全てにわたって、事務部の皆様の全面的な協力を頂きました。心から感謝する次第です。


1998年 職員研修 (所外研修:横浜市災害対策室での研修風景)


広報の目次 へ戻る

地震研究所ホームページトップ

Last modified: 1998/10/8