地震カタログデータベースの紹介 

地震予知情報センター   鶴岡 弘 


1.はじめに

 インターネットに代表される広域ネットワークの整備に伴って,コンピュータが相互に 接続されたネットワーク環境上で様々なサービスが提供されている.World Wide Web(WW W)もその一部であり,このシステムを利用することによって,情報の公開や共有が非常に 簡単になった.情報を公開したい人は,コンピュータをネットワークに接続してWWWの サーバプログラムを起動すればいいし,情報を見たい人は,コンピュータをネットワーク に接続し,ネットスケープやインターネットエクスプローラーなどのクライアントソフト ウェア(ブラウザ)を起動すればいいのである.

 WWWは文書(テキスト)だけでなく,画像・音声・映像などのマルチメディアを扱え ることが,爆発的に発展した要因であり,最近ではこのWWWを利用して,新聞記事,天 気予報,電車・バス等の時刻表,郵便番号,雑誌・図書の検索等ありとあらゆる情報をネ ットワークに接続されたパソコンやワークステーションから利用可能となっている.私自 身大変便利な世の中になったものだと思う.地震情報についても気象庁や防災科学技術研 究所などから震度情報や最近の地震活動マップがWWWを利用してアクセスすることが可 能で,日進月歩で情報の公開が進んできています.

 皆さんは,地震が発生したときに,その震源域周辺では過去どのくらい地震がおこって いるのだろうか?とか,深さ100kmより深い地震はどのくらい起こっているのだろうか とか,疑問に感じたことはないだろうか.WWWは最新の情報を提供するだけでなくてデ ータベースを作成しそれと連動して情報を提供できる機能を構築することが可能です.今 回,以上のような疑問にも簡単に答えられるように過去の地震カタログをデータベース化 してWWWから自由に検索,解析およびその可視化(地図に表示させる)ができるシステ ムを開発したので紹介します.

2.システム概要

 本システムは,1)WWWブラウザ,2)WWWサーバ,3)CGIスクリプト,4) 地震活動解析ソフトから構成されています.図1にシステム構成図を示します.システム 構築にあたって,GIF,PSファイルを出力できるプロットライブラリ,地震活動解析ソフ トの起動・HTML文書の生成を行うperlで記述されたCGIスクリプト,地震活動解析ソ フトをそれぞれ開発しました.WWWブラウザに対して,フレーム・フォーム機能をサポ ートしていることが必要ですが,現在ではほぼすべてのブラウザでサポートされているの で皆さんの環境でも多分大丈夫でしょう.WWWサーバはAPACHEを採用しています. 作成したperlのCGIスクリプトは約200行,地震活動解析ソフトは,GUIでの利用を前 提としてX11上で開発したソフトをバッチ処理で利用できるように修正し,システムに組 み込んでいます.

3.システムの特徴

 本システムの特徴は以下のようになっています.

1) フォームを用いた対話処理
 フォームに期間,領域,深さ,マグニチュードなどの検索パラメータを入力して, STARTボタンをクリックするだけで,検索・解析ができるシステムです.フォーム には,あらかじめ適切なパラメータが入力済みなので,皆さんはこのパラメータの値 を修正するだけです.

2)高速な解析結果表示
 解析結果をWWWブラウザでインライン表示できるGIFファイルに出力するので, 非常に高速に表示されます.サーバにSUN Ultra1(144MHz,メモリ64MB),クライア ントにWindows95(Pentiumu 120MHz,メモリ32MB)を10BASE-TでLAN接続され た環境において15,000件検索1000件表示にかかる時間は2秒以内です.皆さんのネッ トワーク環境においては,もう少し表示まで時間がかかるかもしれません.

3)地震活動解析表示
 現在利用可能は解析ルーチンは,震央分布表示,M−T図,地震数積算図,マグニ チュード別規模別分布表示,断面図,メカニズム表示ですが,ルーチンの増加には柔 軟に対応できるようシステムが設計されています.

4) リスト表示
 検索結果をリスト(数値)表示が可能なので,このリストをダウンロードして,皆 さんの地震解析ルーチンに入力することが可能です.

5) PDF出力対応
 画面上での表示のクオリティーはGIFファイルで十分ですが,高品質なプリンター出 力が可能となるようPDFファイル出力も可能となっています.PDFはAdobe社が提案 しているインターネット上でのファイルフォーマットで,PDFファイルを表示するため のソフトウェアがAdobe社から無償で配布されています.

4.利用の実際

 本システムの起動画面例を図2に示します.図2にあるように,画面左にユーザが設定 するパラメータ入力のフォームがあり,その右に解析結果が表示されるようになっていま す.皆さんは,データベースを選択し,選択されたデータベースに対して,任意のパラメ ータを入力して,試行錯誤的に地震情報検索・活動解析を行います.皆さんは地震カタロ グの更新作業や,地震活動解析ソフトのインストール作業から解放されることになります.

5.おわりに

 本システムは,プラットフォームに依存せずにインターネットに接続されたマシンから 地震検索・地震解析ができ,手軽に地震カタログを利用することができます.ただ,PC やWS上で開発されてきた既存のシステムの操作性を比べるとどうしても見劣りする面が あります.特にマウスが利用できないので,領域の選択など改善の余地が十分ありそうで す.この実現のためには,最近はやりのJAVAによるシステム開発も検討しています.な お,本システムは URL http://wwweic.eri.u-tokyo.ac.jp:8000/tseis/ で試験的に公開されています.地震カタログデータは随時更新しています.ご興味があれ ばアクセスしてみてください.


図1 システム概要


図2 利用の実際例


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Last modified: Sat Dec 13 23:33:45 JST 1997