桜島地域におけるJERS-1 L-band InSAR と ERS C-band InSARの比較
Comparison of JERS-1 L-band InSAR and ERS C-band InSAR around Sakurajima

○村上 亮(国土地理院)、奥山 哲(京都大学大学院)、Pierre Briole (IPGP, France), Dominique Remy(IRD, France), 飛田幹男(国土地理院)、藤原智(文部科学省)、矢来博司(国土地理院)
○Makoto MURAKAMI (GSI), Satoshi OKUYAMA(Kyoto Univ.), Pierre Briole(IPGP, France), Dominique Remy(IRD, France), Mikio TOBITA(GSI), Satoshi FUJIWARA(GSI), Hiroshi YARAI(GSI)


Abstract:A direct comparison of L-band and C-band InSAR results for the same area will give us a good indication of reliability of the technology. We started a joint study to compare the ERS and JERS interferograms of Sakurajima volcano. We found that both results agree well for the area of good coherence. Deformations which suggest inflation of 2 indisual spherical pressure sources are found in both and they are consistent. Also an interesting subsidence occurring in a small region on the eastern flank of the volcano is found in both. The time evolution of the inflation derived from two data sets agreed well, too. These agreements suggest that both results are highly reliable.

1. はじめに
 干渉合成開口レーダーは、地殻変動場の面的把握を特徴とするが、を他の観測手段と総合的に使用して火山の地殻変動を計測し、マグマの蓄積 上昇、移動等の物理的な過程を定量的に理解することが重要である。

合成開口レーダーの干渉の技術的内容は、使用波長によってかなり異なる面がある。これまで我が国ではJERS-1がLbandのセンサーを搭載していたため主にLbandを用いる技術が発達してきたし、一方ヨーロッパではCbandの干渉技術やそれに基づく地殻活動のモデリングが発展してきた。

今後、この技術をさらに進展させるためには、日欧双方で独自に開発してきた技術情報を交換し共同研究を実施して、その手法をさらに高度なものにすることが有効であると考える。

国土地理院では、これまで、我が国のJERS-1を用いて岩手山、伊豆大島、有珠山、桜島等の火山の地殻変動を検出しそれぞれの火山で進行している火山性変動の定量的解釈を行ってきた。一方、Brioleらは、エトナ火山、ナポリ近郊カンピフレグレイカルデラ等を対象にして、ヨーロッパのERS衛星を用いて同様の研究を実施しており、Cbandにおいて経験をつんでいる。  

現在、われわれは、2004年に打ち上げが予定されている宇宙開発事業団の地球観測衛星ALOSや欧州のERSおよびENVISATならびにカナダのRADARSATなどを用い、より高度な火山性地殻変動の観測および解析技術を開発することをめざす共同研究を行っている。

平成11年度は、交流育成制度によりBioleが我が国を訪れ、日本側の研究進捗状況について調査したほか、共同で研究を実施している桜島(日本側はJERS,フランス側はERSの干渉解析を行い両者の結果を比較する研究である)の現地調査を行った。平成12年度からは、それぞれがこれまで開発した手法を用いて、桜島の解析を実施しており、今回は、双方の中間結果を持ちより地球物理学研究所において、詳細な比較検討をおこなった。

2. 桜島におけるERSとJERS干渉結果の比較
同一地域を対象として、波長の異なるL-bandおよびC-band干渉SARで地殻変動を観測し、それを比較する解析自体これまでに限られた例しかない。今回、桜島を対象とした双方の成果を比較した結果、同様の地殻変動がそれぞれに検出されており、双方の開発した手法の信頼性が非常に高いことが実証されたので、紹介する。

ここでは、双方で検出が確認された地殻変動の特徴について簡単に紹介する。


 この図は、日本側によってなされたJERS-1解析による1993年から1997年までの九州南部の地殻変動を色彩の変化で示す干渉図であるが、鹿児島湾北部(国分市付近)の変動(隆起に相当する)、桜島北部の変動(隆起)、桜島東部のごく局所の変動(沈降)が検出されている。



一方、上の図は、フランス側によってなされたERSの解析による、桜島周辺の地殻変動図であるが、JERS-1に比べると干渉している領域が限られるものの、国分市周辺、桜島北部、および桜島東部の局所的な変動がJERS-1と同様に検出されている。

 国分市周辺の変動は、鹿児島湾中心部付近の地下にあるマグマ溜まりの膨張として解釈すべきであり、桜島北部の変動は、桜島北部のやや浅い部分にある別のマグマ溜まりの膨張と考えられる。

また、桜島東部の沈降している部分は、黒神地区の土石流堆積地に相当するが、沈降の原因が例えば土石流堆積物の自重による収縮によるものか、溶岩の収縮またはゆっくりした移動によるものか、もしくは、それ以外によるものかは、今後の検討に待つ必要がある。

 さらに、国分市周辺の地殻変動から推定する湾内のマグマ溜まりの膨張に関しては、期間内の複数の観測を解析して時間的な推移を調査した結果、時間的に進行速度が一様ではなく、1995-1996年にかけて特に変動が進んだことが双方の解析から明らかになり双方の手法の信頼性を示す結果となったうえ、火山学的にも極めて興味深い結果がえられた。

 今回は中間段階での結果の比較であるので、今後さらに双方で検討を行い議論を深める必要はあるものの、基本的に両者の結果はよく一致しており、波長の異なる日仏双方の解析結果が基本的に整合したことは、それぞれの手法の妥当性が確認されたことを意味する。さらに、両者を統一して解析することにより、時間変化に関する情報量が拡大する可能性が開ける。

参考文献

奥山哲 京都大学修士論文
D. Remy, P. Briole, and S. Bonvalot, CORRECTION OF TROPOSPHERIC EFFECTS IN SAR INTERFEROMETRY, ATA ON VOLCANIC AREAS: APPLICATION TO VULCANO, STROMBOLI (ITALY), COTOPAXI (ECUADOR) AND SAKURAJIMA, Abstract for EGS, XXVI General Assembly, Nice, France, 25 - 30 March 2001