総合討論

まとめ: 大村 誠 (高知女子大学)

omura@cc.kochi-wu.ac.jp


この報告では,総合討論に参加されなかった方にも理解できるように補足しつつ,当日 の記録をもとに大村がまとめたものです。さらに録音装置の不具合もあって,この報告は 当日の発言内容とは異なり,しかも未確認の情報も多く含まれていることをご了承くださ い。

総合討論                    司会:大村 誠(高知女子大)

司会:昨日から2日間にわたり,Lバンド干渉SARを中心としてた興味深い発表・講演をいただき,ありがとうございました。しめくくりの総合討論に移ります。昨日のパネルディスカッション「今後のLバンド干渉SAR」での議論も参考に,議論をお願いします。

○ALOS PALSARは観測モードが多数あるので,観測目的に応じたモードを選択することができる。一方,多数のモードがあるため,InSAR用のよいデータがとれるかどうか不安がある。LバンドSARは干渉性が高いので,たとえば,中くらいの分解能,偏波はHH,オフナディア角は34度くらいとして,打ち上げ直後の2回帰(92日)で全球の陸域データをとるということも考えられる。

○航空機SARは,高精度だが高価,S/Nはよい,多偏波観測(Pol SAR)に期待。

○NASDAの予算減のため,2001年度には外国衛星データ受信打ち切り,2002年度には外国衛星データはアーカイブデータの処理も中止される可能性がある。

○今後はアーカイブデータが不備となったり,過去のデータも処理されないとなれば大変困る。

○ユーザーがデータを注文するときは,データレコーダを搭載した衛星の海外受信に頼るか,代理店に注文することになる。

○中止された研究者配布の復活を希望する。リモートセンシングのプロモートが必要ではないか。

○政府機関は,目立つ衛星打ち上げにのみ注目するのではなく,センサを運用して得られたデータの活用促進にも力を入れてほしい。そのためには,学会などの要望をNASDAに伝えたり,データ利用の社会的重要性をアピールすることが必要である。


司会:これまでの議論をふまえつつ,ALOSに向けてのご意見をお願いします。

○InSARの重要性が認識されている分野・学会はある。ALOS打ち上げがこれ以上遅れないようにする必要がある。

○学会としての取り組みは,かなり難しいと思う。打ち上げの計画段階で意見を求められたときには意見を出して,意見が計画に反映されるように努めてはどうか?

○広い分野の学会(土木,リモートセンシング,電気通信,建築関係など)の間で意見の調整をしてはどうか?学会でのInSAR利用機運を高めることは重要で,たとえば政府の審議会の委員になるような人も学会員から選ばれる。


司会:組織的な動きは困難なようですが,私たちとしては,それぞれの分野でALOSへの期待を高めることが必要であり,関係機関から意見を求められたときには,ALOSの打ち上げがさらに延期されないよう意見を出すことが,当面できることであるとお考えの方が多いようです。


○各学会の中心メンバーにInSARとALOSの重要性を理解していただき,ALOS支持の意見を出していただけるとよい。

○ALOSやInSARの有効性を社会一般に広くアピールするためには,研究者を対象とする学会発表は聴衆が限られていて不十分である。

○たとえば,気象衛星「ひまわり」は社会で広く知られている。社会での認知が予算の獲得にもつながる。また,ユーザーとして,官公庁は重要である。政策決定者に対しても,ALOSデータの利用可能性を指摘しておくべきである。

○議論がALOSに集まっているが,ALOSは試験的な色彩のつよいシステムであり,LバンドInSARの有効性を確かめられたとしても,その寿命がつきる前に,ALOS以後のビジョンをもつことが重要である。

○情報収集衛星データの活用を望む。

○SAR利用法の開発にあたっては,つねに「何に役立つか,どう使うか」を意識しておく。

○現時点では,費用対効果を考えるとInSARの防災利用はアピールしにくい。

○たとえば火山観測では観測のタイミング選択の自由度が重要で,衛星搭載SARだと回帰日数が長く,利用が困難である。

○InSARの防災利用としては,阪神淡路大震災のとき地下埋設物の被害分布が地盤変動の急変部として検出できないかとの話があったが,衛星の回帰日数が44日と長いことで立ち消えとなった。また,豊浜(北海道)での岩盤崩落現場を検出できなかった。

○ALOS PALSARの利用成果をあげることが重要であるが,やはり時間分解能が不足する。短期的な防災利用の決め手にならないもどかしさを感じる。

○JERS-1のLバンドInSARは,時間スケール数年の気づかれなかった地殻変動検出に役立ったこともあるが,「ひまわり」のようなリアルタイム利用には向かない。

○ALOS PALSARを活用して,LバンドInSARの利用価値を示し,将来のビジョンにつなげたい。

○情報収集衛星データの防災目的での利用を期待する。


司会:この研究集会では,Lバンドを主とするInSARの使い方を示し,使い方を考え,将来に向けた議論を行うことができました。これらはALOS PALSARの運用が始まるまでにユーザー側として準備すべきことについて,重要な示唆を与えるものと思います。これで,総合討論を終わります。参加者の皆様にお礼申し上げます。