地震研究所は,1923年に発生した関東大震災を契機として,1925年に東京帝国大学の附属研究所として設立され,地震及び火山噴火に関する諸現象の解明と,これらに起因する災害軽減を研究することを使命としてきた.そのため,地震・火山現象のみならず,その根源となる地球内部のダイナミクスの包括的解明を含む,固体地球科学分野の諸問題に対して多面的かつ先端的研究を推進している.

地震研究所で推進すべき研究の方向性を明確化するため,これまでに何度かサインエンスプランが策定されてきた.現行のサイエンスプランは2009年にまとめられ(SP2009),同年に,それを実施するための改組案を含めて外部評価を受け,2010年から大幅な改組とともに実行に移された.改組に当たっては,柔軟で機動的な研究チーム編成を許容するとともに,研究基盤を充実させること等を方針として掲げ,研究組織は,個人の自由な発想を重んじる基礎研究を推進する「研究部門」,サイエンスプランに基づいて10年程度の長期にわたって安定的に研究を推進する「研究プロジェクトセンター」,優れた研究成果を生み出すための基盤的役割を果たす「サイエンスマネジメントセンター」,の3つのカテゴリに分けられた.現在は,2010年の改組以降に設置されたセンターを加えて,4つの研究部門,5つの研究プロジェクトセンター,3つのサイエンスマネジメントセンターから構成される (図1).

SP2009の開始から5年が経過し,その進捗状況や地震研究所を取り巻く状況の変化を考慮すると,今後,5年前のサイエンスプランをそのままの形で継続すべきかどうかは検討に値する.とくに,この5年間の中で発生した,我が国における観測史上最大の東北地方太平洋沖地震は,地震現象の解明とそれによる災害軽減を目的として設立された地震研究所に対しても非常に大きなインパクトを与え,地震研究所では,それを受けて「巨大地震津波災害予測研究センター」が設置されるに至った.一方,観測固体地球科学分野における従来とは全く異なるアプローチとして,素粒子物理学の応用を本格化させるための「高エネルギー素粒子地球物理学研究センター」を設置したのも,この5年の中での大きな動きである.以上の状況変化を踏まえて,地震研究所では,SP2009に基づく過去5年間の研究成果に基づきSP2009をレビューし,SP2009に新たな項目を追加するという形でサイエンスプランの改訂版(SP2009R)を作成し,2014年6月の外部評価に臨んだ.

今回発行する2013年度年報は,上記外部評価に用いた資料に基づくものである.この外部評価ではSP2009のもとでの5年間の成果が評価対象となっている.従って,外部評価用資料には,直近2年間の研究活動が記載されている例年の年報の内容を完全に含む.そこで,2013年度年報としては例年と同様のフォーマットではなく,外部評価のために作成した資料から,従来の年報の内容に対応する部分を編集して作成することとした.2013年度年報は,研究所の活動と各教員等の活動の2部から構成される.第1部には,過去5年間に渡る部門・センターの研究活動,組織・運営,各種研究業務を支援・推進するための活動がまとめられており,特に図表や外部リンクを積極的に取り入れることで,様々な成果を分かりやすく伝える試みを行なった.第2部については,例年の年報どおり直近2年間の各教員等の活動を示した.