2.2.1 GNSS観測と地殻ダイナミクス

(1) 国内におけるGNSS観測研究

東海地方直下で発生するスロースリップの実態解明のため,静岡大・東海大等とも協力しつつ,東海地方に稠密GNSSアレイを構築して2004年から連続観測を行っている.これらのデータを用いて,スローイベントや固着域の時空間分布とひずみ分布の関係などを継続的に調査している.1996年以来のGNSS観測結果と水準測量結果から2000年〜2005年に発生した長期スローイベントの再解析を行ったところ,この長期スローイベントによるすべり域は短期すべり域が大規模に拡大した領域で発生したものであることを明らかにした(図1).

このほか,「ひずみ集中帯」におけるGNSSの合同集中観測や2011年東北地方太平洋沖地震に伴う余効変動を計測するための臨時観測に参加している.この地震の余効変動は長期的な地震サイクルにどのような影響があるのかは極めて興味深い問題である.この観点から余効変動のメカニズムについても調査を行っている.

(2) 国外におけるGNSS観測研究

地震研のGNSS研究グループは諸外国,特に西太平洋地域,において1990年代より先駆的な観測研究を行ってきた.2004年12月26日にスマトラ島沖で発生した地震・津波を契機として,日本とインドネシアの間で国際的な共同研究がスタートした.2009年から3年間は外務省と文科省の共同プログラムである地球規模課題対応国際科学技術協力事業(英語略称SATREPS)(課題名:インドネシアにおける地震火山の総合防災策,研究代表者:東大地震研 佐竹健治)を実施し,ジャワ島においてバンドン工科大学などと共同でGNSS観測を実施した(図2).また同じSATREPSでインドを対象とした共同研究事業(課題名:自然災害の減災と復旧のための情報ネットワーク構築に関する研究,研究代表者:慶応大学 村井純)にも参加しヒマラヤ前縁弧におけるGNSS観測を実施している.