2.10.5 火山噴火

(1) 火山活動に起因する地震活動の予測

火山はマグマ蓄積で応力場の変化が頻繁に起こる場所である.このことに注目し,静穏期にある伊豆大島火山で観測された地殻変動と地震活動の関係を調査した.観測された地殻変動から計算した震源域の応力変化をrate and state friction lawに代入すると,地震活動度を良く説明できることが判った.更に,マグマの蓄積時には揮発性成分が震源域に供給され封圧が上がり地震活動が一層高まるが,収縮時には封圧が下がり地震活動が一層低くなるとするモデルのほうが,観測される地震活動度をより良く説明できることも明らかになった.これは,地震活動度の定量的な評価により地下の揮発性成分の挙動を捉えられる可能性を示唆する.

(2) 噴火シナリオに基づく噴火予測

地震・火山噴火予知研究成果の社会への還元のひとつとして,活動的な火山での将来の噴火予測のための「噴火シナリオ」試作を全国共同で実施した.「噴火シナリオ」は,枝に確率を付した噴火事象分岐図のことであり,過去の地質学的あるいは古記録上の噴火履歴と噴火観測研究の結果に基づいて作成するものである.この4年間に三宅島,桜島,新燃岳,有珠山について噴火シナリオを作成した.このうち,有珠山において,山腹噴火と山頂噴火の分岐が,脱ガスの異なる度合いによるマグマの浮力の違いによって起こったことを示した.また,新燃岳の噴火に際しては,地震研究所が中心となって,特別研究促進費「2011年霧島火山(新燃岳)噴火に関する総合調査」を実施し,全国の火山研究者が参加した.この研究成果については火山噴火予知研究センターの章で記述した.