2.12.1 全国の地震データ流通とデータベース

(1) 全国地震観測データ流通ネットワークJDXnet

新しい大学間の全国地震観測データ流通ネットワークJDXnet(図1)を各大学 や防災科研との共同研究として開発した.JDXnet は,衛星回線に代わって,独立 行政法人情報通信研究機構(NICT) が運用する全国規模の超高速広域ネットワーク JGN-XやNTT が提供するフレッツ回線などの地上回線を利用した次世代データ流通 ネットワークである.また,国立情報学研究所(NII) が運用する超高速広域ネッ トワークSINET4の広域L2 網を用いてデータ交換ルートを二重化し,安定性と信頼 性を高めたシステムを運用している.

(2) 新J-array システム

新J-array システムは,世界の大地震(M5.5 以上,日本付近はM5 以上) の発生 時に日本列島で観測された地震波形データを30 分から2 時間の長時間記録として 保存したものである.波形データは準リアルタイムで処理し, J-arrayサイトで即日公開し ている(図2).またその中から,M7 以上の大地震についての記録を選んでDVDを毎年作成し,全国の研究者に提供している.

(3) 全国地震波形データベース利用システム HARVEST

各大学が収集している地震波形データを 全国地震データ等利用系 システムサイトに公開し,データの活用ならびに各大学と全国の研究者の 共同研究を推進するためのシステムHARVEST(図3)を開発し,各大学に提供 している.このシステムにより,どこの大学の利用システムでも共通のインター フェースで地震波形データを利用したり,データ利用申請したりすることが可能 となっている.ハードウェア・ソフトウエアの更新を行い,安定した運用を提供 している.

(4) チャネル情報管理システム

チャネル情報管理システム(CIMS)は,全国の大学や防災科研,気象庁などの各 機関の地震観測点の情報を分散管理するデータベースである(図4).各機 関が管理する観測点の情報をCIMS に入力すれば,自動的に他機関に転送されて更 新されるため,他機関の観測点の変更情報を迅速にかつ正確に利用できるように なる.2007年10 月から各大学で利用を開始し,その後も継続してこのシステムの 安定した運用と不具合修正を実施している.

(5) 緊急地震速報の伝達と利活用

気象庁に予報業務許可申請(地震動) を行い,予報業務の許可のもと,東京大学情 報ネットワークシステムUTnet やSINET4 等のネットワークを介して緊急地震速報 の伝達を行っている.学内で,緊急地震速報の仕組みや技術的限界を周知し,利 用するための必要な事柄を検討し,Web コンテンツと同様なアクセスのみで緊急 地震速報を簡便に受信できるようにし,端末表示装置の開発(図5)も行っ た.2011年からは情報学環総合防災情報研究センターと共同で,学内に複数の配 信サーバを設置して,全学に緊急地震速報を提供している.東京大学本部棟等防 災訓練でも活用された.