6.2.1 助教

地震研究所では大部門制をとっており,独立した研究者としての助教には教授・准教授の基礎研究費の4 割相当の研究費を配分している.一方,大部門制では講座制の時代と違って,助教の育成に関する責任の所在が曖昧になる恐れがある.この問題に対処するために,所長,副所長,及び教授会選出2 名の教員で構成される助教フォローアップ委員会が,研究所の助教(特任助教を含む)全員を対象に,以下のような育成マネージメントに当たっている.

(a)

各助教の助言・相談役として,助教1 名に対して,2名の教授・准教授をフォローアップ担当者として指名する.

(b)

フォローアップ担当者からの報告を受けて,助教の研究環境や状況を把握し,必要に応じて状況の改善に当たる.

(c)

総合的判断にもとづき,助教の昇任人事を,人事委員会に提案する.

(d)

助教に対するアンケート調査に基づき,フォローアップ担当者の適性や, 助教と担当者の信頼関係を検討し,必要な場合には担当者を交代させる.


フォローアップ担当者の主な仕事は,以下のようなものである.

(a)

年度初めの助教との面談.ここで,年間目標の設定と確認,前年度の成果や目標達成の点検,不達の場合の原因分析と改善相談を行う.

(b)

科研費等の外部資金応募に対する助言.

(c)

助教の研究環境の改善に関する随時の相談.


助教から見たフォローアップ制度の改善点を知るために,2006 年から毎年1 回,助教に対するアンケートを行っているが,その結果を見る限り,約8 割がこの制度を非常に肯定的に捉えている.このほか,2004 年以後,部局長裁量経費の一部を,萌芽的・先端的研究の支援に用いている.テーマは所内公募で審査し,助教からの研究課題提案に対して,年間2〜8件程度の財政支援をしている.これにより,とくに意欲的で斬新なアイデアを持つ若手助教に対するインセンティブ付けを行っている.2003 年以後に採用された助教には,採用後10 年を目処にしてその研究・教育活動に関する総括的評価を行い,教授会として適切な助言を与える体制ができている.採用後7 年目からピア・レビューを開始することとなっており,2010 年から実際に総括的評価が実施され,これまでに3名の助教に対して助言が通知された.