9.2.1 計画の内容

我が国における地震予知に関する研究は,測地学審議会(後の科学技術・学術審議会測地学分科会)による建議に基づき1965年に始まり,観測体制が整備されるとともに地震発生機構に関する理解が進んだ.1999年に開始された「地震予知のための新たな観測研究計画」では,地震発生機構を理解し,それに基づく物理モデルと観測データにより,地殻活動の推移予測を目指して計画を進めた.火山噴火予知研究は1974年から建議による火山噴火予知計画の下で推進され,特定の火山では前兆現象をほぼ確実に検出可能になるなどの成果をあげてきた.2009年からは地震予知と火山噴火予知の研究計画が統合され地震・火山噴火予知研究計画となり,プレートの沈み込みという共通の地学的環境で発生する地震と火山噴火についての理解を深めるための研究を強化した.2011年東北地方太平洋沖地震の発生により,これまでの研究計画では,低頻度ではあるが大規模な地震や火山噴火の研究が不足していたことや,地震・火山噴火による災害を軽減するために地震・火山に関する理解を活用する研究が不十分であることが明らかになった.2014年からは「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」として,歴史学・地質学と連携して近代観測以前の時代の巨大地震,大規模噴火の研究を強化し,防災に関連する工学や人文・社会科学と連携して災害科学の一部として地震・火山噴火の研究を進める研究計画となった.研究計画の策定は,科学技術・学術審議会測地学分科会で行われたが,企画部の教員をはじめ,地震研究所からは多くの教員が検討に参加した.