氏名酒井慎一
職名准教授
所属観測開発基盤センター
専門地震学

最終更新日 09/06 2017

研究内容

 「なぜ、そこで地震が起きるのか」といった地震現象の本質を解明することを目的として、地震観測を行っている。そのため、起きた地震のことをなるべく詳細に正確に知りたい。国の基盤的地震観測網が整備されて20数年が経過し、陸域における均質な地震の検知は可能になってきた。しかし、基盤観測網等を利用した気象庁一元化震源では、震源決定や発震機構解における決定精度や分解能が不十分な研究がたくさんある。例えば、大地震発生前の微小地震の活動変化や構造変化の検知、大地震発生後の余震分布から地震断層形状の決定やその後の活動の推移予測、大きくない地震の発震機構解から求める周辺の応力分布等の研究においては、自らの観測を基盤観測網に付加して解析を行い、新たな成果を得てきた。  解析手法に関しても、最近の地震検知法や震源決定手法の発展(MF法やDD法)によって、桁違いに多くの震源を検知し、それらの相対的な位置が詳細に決められるようになった。その分布から複雑な断層システムが明らかになり、地下構造や地殻変動と関係づける研究が進められている。ただ、地震発生の鍵となる地下の流体分布やより細かな地質構造との比較を行い、応力やひずみの分布とその不均質性の研究を行って、地震発生の本質に迫るためには、もっと分解能の高い情報が必要になってくる。そこで、地震活動度が比較的高い時に、より震源に近づいて、密度の高い観測を行っている。  いつもとは違う現象が起きる時には、そこには何か理由があるはずである。それを知るためには、通常の状態を知っておく必要がある。そのため、普段の状態を観測しておかなければならない。さらに、3次元的な震源分布を精度良く得るためには、なるべく震源域直上での観測データが必要である。そこで、注目すべき地域には、基盤観測網より密な観測網をあらかじめ構築し、待ち構えている。  観測データをテレメータし、それをモニターすることによって通常の活動度を自動的に知り、何か異常が起きた際には必要に応じて新たな観測を追加している。研究にとって、1秒を争うようなリアルタイム観測である必要はないかもしれないが、次の行動を迅速に決めるためには、なるべく早く正しい情報を得る必要がある。最近では、熊本地震や鳥取県中部の地震の余震観測、長野県北部の地震や栃木県北部の地震の臨時観測、茨城県北部や箱根山の観測等で、震源域直上に稠密な観測網を構築し、基盤的観測網だけでは得られない多くの知見を得てきた。これらは、内陸地震の発生に至る過程を解明する研究にとって、重要な情報となっている。  しかし、地震観測の形態は、まだ完成していない。最新の地震観測システムでも、やがて陳腐化して、時代遅れのものになってしまう。そのため、技術の進歩に応じて、最新の技術を導入した機器開発も行わなければならない。例えば、観測点の迅速な展開を容易にするため、機器メーカーと共同で開発した小型軽量で低消費電力なものを準備している。数個の乾電池で稼働できる程度の低消費電力にすれば、雪で閉ざされてしまう冬季の山間部での観測が実現する。積雪のない地域では、太陽電池パネルで、電源の稼働期間を延ばすことも可能である。このような機器の開発のためには、世界の最新技術の動向を知り、それらを地震観測に導入する努力が必要で、いくつかの業者と共同開発を行っている。

主要論文・著書

Shin'ichi Sakai, Seismicity of the Northern Part of the Itoigawa-Shizuoka Tectonic Line, Earth Planets Space, 56, 1279--1283, 2004.

Sakai, S., T. Yamada, M. Shinohara, H. Hagiwara, T. Kanazawa, K. Obana, S. Kodaira and Y. Kaneda, Urgent aftershock observation of the 2004 Off Kii-Peninsula earthquake using ocean bottom seismometers, Earth Planets Space, 57, 363--368, 2005.

S. Sakai, N. Hirata, A. Kato, E. Kurashimo, T. Iwasaki, and T. Kanazawa, Multi-fault system of the 2004 Mid-Niigata Prefecture Earthquake and its aftershocks, Earth Planets Space, 57, 417--422, 2005.

Sakai, S., A. Kato, T. Iidaka, T. Iwasaki, E. Kurashimo, T. Igarashi, N. Hirata, T. Kanazawa, and the group for the joint aftershock observation of the 2007 Noto Hanto Earthquake, Highly resolved distribution of aftershocks of the 2007 Noto Hanto Earthquake by a dense seismic observation, Earth Planets Space, 60, 83--88, 2008.