5-15. 地震活動及びGPSデータに基づく,日本列島下の広域応力場の形成メカニズムの研究

 

日本列島下の広域応力場とその形成メカニズムに関して,解明すべき課題を示すとともに,可能な解の検討を行った.

西南日本,日高地方などでは,最大主圧縮力軸が,海洋プレートの沈み込み方向に直交(走向とほぼ平行)している.海溝軸に平行な最大主圧縮力軸は,プレートの沈み込みにより陸側のプレートが「押される」ことと矛盾するように思える.この観測事実は,プレート境界で働く固着力が,陸側プレート内に働く応力の海洋プレートの沈み込み方向と直行(走向と平行)な成分より小さいことを示している.固着域の摩擦係数は,岩石摩擦実験から推定されている値よりずっと小さいと考えられる.

海洋プレートと陸側のプレートの固着力の大きさは,プレート境界に発生する地震の発生予測だけでなく,内陸地震を発生させる応力場の解明においても重要な問題である.この問題解決のためには,糸静線近傍や東北地方日本海沿岸部など,プレート境界近傍における応力測定を行うともに,メカニズム解など地震データを活用することが重要である.

日本海東縁における相対運動は,太平洋側のプレート境界以上に,日本列島内陸の変形や応力場に決定的な影響を与える可能性がある.「アムールプレート」の東・南縁の収束形態については不明な点が多く,内部変形の可能性も指摘されている. また,内陸部(特に西南日本)の応力場の不均質性は既存の地殻構造によって強く支配されていると考えられる.

GPS観測網によって明らかにされた様に,歪速度が最も大きいのは,新潟神戸歪集中帯である.しかし,最近の稠密GPS観測によって,糸魚川静岡構造線北部や,跡津川断層にそって,小さな変位場の飛びやトレンドの急変があることが明らかになってきた.幅数10km,年間短縮量〜2cmの卓越的歪集中ゾーンと,幅数km,年間短縮量〜2mm の2次的境界が複合的に分布しているように見える.この様な複合的変形の全体像を解明することは,境界条件の解明のみならず,内陸地震の発生予測そのものにとっても極めて重要である.

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