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地球流動破壊部門

地震活動の監視手法

 統計モデルに基づいて開発された手法により,活性化や静穏化などの地震活動の微小変化を検知することができる.変化の有意性は,変化を含むモデルと含まないモデルとのAICの差で示される.図は2003年7月26日宮城県北部の地震(M6.4)前のb値低下の有意性を示す.

宮城県北部地震(2003.7.26)の発生前の地震活動度
宮城県北部地震(2003.7.26)の発生前の地震活動度

仮想都市の地震災害予測シミュレーション

 都市の防災対策を講じる際に,基礎的情報を提供するツールとして仮想都市の地震災害予測シミュレータを開発している.これは,震源断層から都市各地点までの地震波伝播過程,各種構造物の地震応答過程をまとめて計算する手法であり,都市の地震災害について高い空間分解能での予測を与える.

仮想都市の地震災害予測シミュレーション
仮想都市の地震災害予測シミュレーション(左)仮想都市(中)都市の被害予測(右)建物の中の部屋の家具のゆれ

地震・火山活動予測と変動検出

 地震および火山活動の経過を力学的な視点や確率過程としての面から分析し,活動を予測する方法についての研究を進めた.例えば,小地震発生経過の特徴からさらに大きな地震が起こるかどうかを判定する方法について,活動予測を継続的に試みることによってその実効性を検討し,その際,予測の当否を検証する有効な方法として,タイムシフト検定の利用を提案した.

大気と固体地球の共鳴振動

 常時地球自由振動の励起振幅を詳しく解析してみると,固体地球の振動と大気音波とが音響共鳴を起こしている事が分かってきた.観測された共鳴振動は,長周期大気音波の存在を示唆しているが,直接の観測例はないため,一昨年度から東京大学千葉演習林において気圧計のアレー観測を行ない長周期大気音波の検出を試みている.現在までの我々の微気圧計のアレー観測により,波長が数10km程度の音波の分散を測る事に成功した(図参照).

大気と固体地球の共鳴振動
大気と固体地球の共鳴振動

固液複合系の力学的性質

 我々は固液複合系の力学的性質を理論および室内実験により研究し,地震波探査で得られる速度構造や減衰構造から地下に存在する流体の量や性質を推定する手法の開発を行っている.本物の岩石を用いる溶融実験は非常に難しいが,地球物質とよく似た性質を持つ有機物のアナログ物質を用いることで実験を簡単化することに成功し(図),弾性波速度や減衰,差応力下での流動特性などを調べる精度の良い実験を行っている.

アナログ部分溶融物質の顕微鏡写真
アナログ部分溶融物質の顕微鏡写真

密度成層場でのプルームの生成

 我々は室内実験や数値シミュレーションによる熱対流や熱・組成プルームの研究を進めている.マントル最下部Dモ層に起因するプルームを念頭に,重い下部層の存在(密度差,層圧,粘性差)が発生する熱プルームにどのような影響を与えるのか,その速度,大きさ,下層液体の輸送,などを明らかにしつつある.図はこのようなプルームの一例であり,重い下部層を温度差による浮力がサポートできず,温度プルームと組成プルームに分裂している様子がわかる.

分裂したプルーム
分裂したプルーム(上図は組成像,赤色部が重い下部液体.下図は温度像.)

揮発性元素による惑星物質科学

 揮発性元素のひとつである希ガスは,化学的に不活性なため物理的プロセスを探究するのに有用なトレーサーである.地球及び地球外物質中の希ガス濃度・同位体組成を質量分析計により測定し,マグマ活動における物質移動や熱史に関する制約,地表における浸食レートの推定,地球外物質の起源の解明等を進めている.また,K-Ar年代やPu-Xe年代を通して火山活動や惑星形成に関する年代学的研究も行っている.

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