現象の説明

 このような違いができる理由は,「熱は化学成分より速く拡散する」という性質にあります.今,かりに2つの タイプの2層に重なった液体を想定しましょう(図参照).さらに,これらの2層の境界が何らかの原因で乱された とします.乱された境界を通じて,拡散速度の速い熱の拡散が進行した場合,何が起こるでしょうか?

(タイプ1)低温低濃度の液体が下に高温高濃度の液体が上にある場合

 この場合,上に飛び出た部分がますます軽くなり,下に飛び出た部分がますます重くなるので,乱れた境界がさ らに乱れて成長してゆくことが推定されます.

(タイプ2)高温高濃度の液体が下に低温低濃度の液体が上にある場合

 この場合,乱れた境界では,熱の拡散とともに乱れを打ち消す方向に力が働くため,安定な成層構造が形成され ることになります.

 

火山の下では?

 一般に,下方のマントルから地殻に供給されるマグマは,地殻のマグマ溜まり中にあるマグマよりも高温で高密 度であるという性質をもっています.したがって,繰り返しマグマが供給されるマグマ溜まり中では,(タイプ2) の対流,つまり,拡散対流層が形成されやすい環境にあるということが推定できます.


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