平成16年9月22日

東京大学地震研究所

件名:9月17日噴出物の特徴とガラスの化学組成について

9月17日夕方降灰の火山灰には2種類の粒子が認められる.黒色で粘性の低い発泡ガラスが引きちぎられたもの(図1左)と灰色でやや角張った断面を持つガラスである(図1右).黒色ガラスはストロンボリ式噴火の際に引きちぎられた低粘性メルト部分,灰色ガラスはやや結晶化が進み大きい変形速度により破断したより内部(?)の部分であると考えられる.黒色のものにはペレー涙状のものもある.図2の化学組成からは,9月1日火山弾が結晶化の進んだものであり,16日と17日試料はその度合いがより低いことが分かる.ただし,17日の灰色ガラスにも結晶化が進んだものがある.図1左のような液滴状発泡ガラスは16日午前火山灰から見つかることから,一種の溶岩湖と考えられる溶岩ケーキが.16日午前に撮影されたことと矛盾しない.

図1 実体顕微鏡で見た9月17日夕刻降灰試料(浅間火山観測で採取).黒色,灰色粒子径はそれぞれ1/4mm程度.火山灰にはこれらがほぼ等量含まれるほか遊離した結晶がある.

図2 9月1日,9月16日午前,9月17日午後火山灰に含まれるガラス部分の分析値.参考に1783年軽石のガラス組成も示した.