三宅島情報 2000/10/06 本日でカトレア丸を現地対策本部とする体制を終了,神津島多幸湾付 近の村営ロッジに,三宅島火山現地対策本部を移すことになる.船内で 朝食の後,気象庁班の引越しの手伝い.気象庁側は三宅測候所と本庁火山観測班が本 部内の一角を確保.地震研3名(笹井,及川,大湊)は,気象庁の設営については手 伝うこともあまり無く,暇を持て余す. 天上山西の肩にプロトン磁力計が2年間作動していたが,地震による 崖崩れで放置されたままなので,これを回収すべく,神津島役場の許可 を得る(立ち入り禁止区域内).車道は通行不可能なので,天上山の南 側の黒島登山道から山越えで西側斜面に降りることにして,幸い村役場 職員の稲葉氏が道案内を兼ねて同行してくれることになった.13時40分 笹井,大湊,稲葉3名で出発,及川は携帯による連絡担当でロッジに待 機する.13時50分,黒島登山口から登り始め,14時50分プロトン磁力計 観測点KOZ に到着,磁力計本体のみ回収して直ちに引き返す.15時45分黒島登山口に 帰着.登山道の一部にも崩れたところがあり,一方北まわりの都道は復旧の目途が 立っていないので,回収には貴重な機会だった.強行軍で疲れたけれど. 気象庁班と同じ宿(見晴館)に宿泊. 2000/10/07 06:30 多幸湾三浦漁港待合所前に集合.ガスマスクなどを配布. 07:05 地震研3名(及川,大湊,笹井)信栄丸で出航.もう1隻は吉広 丸で共に坪田漁港を目指す. 08:30 新鼻沖で信栄丸ではSO2 2ppmを検出,一方吉広丸では0.2ppm位. 09:00 坪田漁港到着.北風で白色噴煙が南になびいている.噴煙は断続 的に盛り上がる.ガス検出されず. 09:30 P3C の火口偵察を待ち,上陸.車を取りに先発隊が空港に向けて 出発,及川が同行. 09:45 2隻の全員で新鼻沖のガス検出量の食い違いを再度確認せよ,と の指示.先発隊も空港から引き返す. 10:00 坪田漁港を離岸,新鼻沖を目指す. 10:30 新鼻沖でガス測定.丁度風下で青白い煙が海面に漂い,硫黄臭. しかしSO2 の測定値はかなりバラツク.船から見ると,新澪池跡 から山頂にかけて,大きく谷地形となっていて,青白色の火山ガ スはその地形にそって,下降していた. 10:40 本日の作業中止の指令,神津島に引き返す.今日は北北東の風で, 坪田側は風上でガスも検知されなかった.季節風が強くなると, 坪田側は風下になるので,滅多に無いチャンスを無駄にしたかも 知れない.また坪田林道出口付近の泥流を迂回すれば大路池まで は行けた可能性があり,残念. 12:20 神津島多幸湾に帰着. 明日(10/08)は沖合いに停泊して緊急脱出に備える船がドック入りす るので,三宅島での作業は無し.気象庁は9日以降に10人位の人員を投入 してGPS,ガス検知機,地震計などの設置を予定,ただし9日は悪天候の見 込み.このような状況を考慮して次のように決めた:1)大湊は岩手山 合同観測の準備のため,本日帰京.2)笹井・及川が残留して,気象庁 に同行し,GPS観測点に太陽電池設置,およびプロトン磁力計のROM交換 を行う. 14:10 大湊は漁船で下田に向かい,帰京. 笹井,及川は見晴館に宿泊. なお今回我々はデジカメを持参しなかったため,映像を直ちに送れな い.すいません.都道が泥流で通れなくとも,迂回路を使えば通れる場合があること が,本日の坪田先発隊の空港行きでも明らかになったが,これらの事情は実際に上陸 してみないと,分からないことが多い.当面 はガスの危険性が不明なこともあり,今日のようにおっかなびっくりの 試行錯誤を経た上で,観測体制を再度作り直すしか無さそうである. 笹井洋一