東京大学地震研究所 2008年四川地震
[Update 2009.06.03]
文部科学省「2008年中国四川省の巨大地震と地震災害に関する総合的調査研究」補助金(特別研究促進費)の成果報告書(英文)が公開されました。
2008年6月26日 文部科学省報道発表:
「2008年中国四川省の巨大地震と地震災害に関する総合的調査研究」 への科学研究費補助金(特別研究促進費)の交付のお知らせ
文部科学省より:文部科学省では、先般の中国四川省で発生した巨大地震について、中国側の要請を踏まえ、巨大地震によってもたらされた地震災害を、 我が国研究者の学術的知見を結集し、中国側と共同して総合的な調査を行うことにより、中国における二次災害の軽減と復興戦略策定等に資するため、 東京大学等の研究者に科学研究費補助金(特別研究促進費)を交付することといたしましたので、お知らせいたします。
報道発表資料(PDF)
【概要】
2008年5月12日15:28(日本時間)、中国・四川省を震源とするM7.9(USGS調べ)の 地震が発生しました。 このサイトでは地震研究所が解析・入手した結果を随時更新していきます。
【震源解析結果】
震源過程(暫定解2) [2008.5.15]
【現地レポート】 静岡大学 林愛明教授より![]()
【余震分布】 (USGSによる震源決定)Google Earth [2008.5.19]
【地質図・関連図】震源域とその周辺の地形・活断層と主な歴史地震の分布図を追加しました。【テクトニクス】
(池田、2008,地質学会メールマガジンより)![]()
- 震源は Longmenshan Thrust Zone (龍門山衝上断層) と思われる(下図の黄色で示されたのが龍門山断層、震源は赤星 [He and Tsukuda, 2003 (PDF) に加筆]).
- インドの衝突によってそびえるヒマラヤの北には,チベット活構造区が広がり,活断層で多くの地震が発生している.2001年の昆侖地震(M8,下図中央の茶色星)の際には 400kmにもわたって地表地震断層が出現した(EIC地震学ノート,Lin, A., M. Kikuchi, and B. Fu, "Rupture segmentation and process of the 2001 Ms 8.1 Central Kunlun earthquake, China", Bull. Seismo. Soc. Am., 93, 2477-2492, 2003, Lin et al. "Co-seismic strike-slip and rupture length produced by the 2001 Ms 8.1 Central Kunlun earthquake", Science, 296, 2015-2017, 2002.). 今回,地震によって被害が発生した重慶や成都は,このチベット活構造区の東にある四川盆地に位置している.
- 四川盆地とチベット高原との地形境界をなすLongmenshan Thrust Zone (龍門山衝上断層,北東―南西走向,図の紫矢印が応力のかかっているおおまかな方向)は,3本の断層と付随する摺曲からなり,幅は約 60キロ.収束速度は年間4-6ミリ程度(地形・GPSから推定).また,四川盆地 の南西側にはKangding Fault Zone (康定断層帯、下図緑線)がほぼ南北に延び,チベット高原の東縁を限っている.これは長さ1400キロにも及ぶ横ずれ断層で,青海省から四川省を通って雲南省まで伸びる.ここでは多くのマグニチュード7以上の歴史地震が発生している.左横ずれレートはおよそ年間10ミリ程度と,龍門山衝上断層よりも活動度は高い.
- 12日の地震のメカニズムは,北東―南西走向の逆断層である( http://neic.usgs.gov/neis/FM/neic_ryan_cmt.html) ことから,この地震はLongmenshan Thrust Zone (龍門山衝上断層)で発生したと考えられる. この周辺では,12日の地震よりも東側で,1933年にM 7.5の地震が発生している.
- 12日の地震は首都北京などでも有感であった。地震波エネルギーの減衰が小さい大陸地殻で、M8クラスの大きな地震が起きると、1000km以上の広範囲にわたって有感となる場合があるということが示唆される。
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【中国の過去の地震】
- 龍門山断層の北東端付近では,1976年8月16日,23日にそれぞれM7.2の地震が発 生している(四川松潘地震).これらの地震は宏観現象により予知された.
高橋博(1980)中国の地震対策-その1.地質ニュース,No315, p38 (PDF)- 1933年8月25日には今回の地震の約50km北東でM 7.5の地震が発生した.この地震によって6800人の死者が出たほか,川がせき止められて4つの地震湖ができた.この地震湖は45日後に決壊し,洪水によって2500人の犠牲者がでた(中国 地震目録による).
【リンク】
- USGSのサイト
- 日本建築学会災害委員会のページ
- J-arrayで観測された波形&波動伝播アニメーション
- 名古屋大学 NGY地震学ノート(震源過程解析)
- 筑波大学八木研究室(震源過程解析)
- 産総研地質調査総合センター
- 気象庁「5月12日の中国四川省の地震について」
- 建築研究所国際地震工学センター
- 日本地震学会 情報誌 なゐふる
- 国土地理院 「人工衛星データを用いて中国・四川省の地震に伴う地殻変動を面的に把握」
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