東京大学地震研究所

2008年5月12日中国・四川省の地震の震源過程(暫定解)

[Update 2008.05.13]



中国・四川省の地震について,遠地波形を使っての暫定解です.

断層面はおおよそ北北東-南南東の走向を持っています.傾斜方向は西傾斜と東傾斜の両方ですべり分布を求めてみました.特徴としては,震源付近で一つすべりがあって(M7程度),北東に向かって,ほぼユニラテラルで破壊が進行しています.どちらの傾斜を取った場合でも破壊開始点から40〜60km離れたところで,すべりが大きな領域(アスペリティ)がありますが,その深さは設定した断層の傾斜方向でやや異なっています.残差としては,東傾斜の断層面を設定した解析の方が小さな値となっていますがその差は大きくなく,波形の一致具合からはどちらの断層面が適当かを決めるのは難しい状態です

現在の解析では断層長さ全体を100kmとしていますが,主張な破壊領域は震源から80km程度です.

波形を見ると,初動付近と20〜30秒遅れて少なくとも2つのパルスが見られます.このうち,後者のパルスが2つのアスペリティで構成されているようなので,この範囲では主要なすべり域としては合計3つの領域があるようです.また,波形のさらに後半部分でもいくつかパルスが見られ,これの再現は不十分です.これを再現するためには更に断層を拡げる必要があるかも知れません.また,現在の最大すべり量は15m前後でかなり大きな値となっています.断層面を拡げることでこの値も小さくなく可能性があります.これらも含めて今後,再検討を行っていく予定です.

断層面の傾斜方向をどちらにするかで,アスペリティを地表に投影した位置が変わります.これらを現地調査や被害状況などと比較することで,断層面を特定できるものと考えられます.

 

東傾斜:  走向: 23°, 傾斜:61°, Mo=5.1e20 Nm, Mw 7.7, Dmax 約16m
西傾斜:  走向:230°, 傾斜:32°, Mo=5.1e20 Nm, Mw 7.7, Dmax 約11m
 

 

○ 東傾斜の場合

断層面上でのすべり分布(クリックで拡大) すべり量を地表面に投影したもの(クリックで拡大)


 東傾斜の場合の波形

 

○ 西傾斜の場合

断層面上でのすべり分布(クリックで拡大) すべり量を地表面に投影したもの(クリックで拡大)

 

西傾斜の場合の波形

 

(東京大学 地震研究所 地震火山災害部門 特任研究員 引間和人)

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