サモア諸島沖の地震

ウェブサイト立ち上げ: 2009年9月30日(金)
最終更新日: 2009年10月26日(月)

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2009年9月30日午前2時48分(日本時間,現地では29日午前6時48分),南太平洋のサモア諸島沖(南緯 15.56°,西経 172.07°,深さ 18km)でMw8.0(USGSによる) の地震が発生しました.

マグニチュードが大きく震源の浅い地震のため,津波が発生し死者も出ています.

この地震についての詳細を報告します.(アウトリーチ推進室)


【更新情報】


【概要】

  • トンガ海溝で沈み込む太平洋プレート内で発生した正断層タイプの地震
  • 1933年3月3日の昭和三陸津波を起こした地震(M8.1)と類似
  • 津波について
    • 断層が北西-南東方向に伸びているため,それと直行した方向(南西・北東)で津波が大きくなることが予測できる
    • サモア諸島は震源のすぐ北東に位置したため,1mを超える津波が発生したと考えられる
    • 太平洋の中で日本で特に津波が大きくなるというわけではないが,数10cm程度の津波が日本沿岸にも達する可能性がある
    • 過去には1917年にほぼ同じ場所でM8の地震が起きており,12mの津波があった.この地震による津波は日本にも到達しており,串本でおおよそ1mの津波が観測されている.

【テクトニクス背景】

今回の地震が起きたトンガ海溝では,西側に位置するオーストラリアプレートに,太平洋プレートが東側から沈み込んでいる.今回の 震源あたりを北限に,海溝は北西,そして西へと方向をかえてフィジーへと続き,その更に西にはニューヘブリデス海溝がある.ニューヘブリデス海溝では,今 度はオーストラリアプレートが西から東へ,マイクロプレートの下に沈み込むような,複雑なテクトニクスになっている.

今回の地震は正断層型であることから,プレート境界上で起きたか,かあるいは海溝軸から離れる方向(今回の場合は東)で起きるアウターライズ地震と考えられる.

過去には,1917年にほぼ同じ場所でM8の地震が起きており,12mの津波が観測された.このときの津波は日本でも観測されており,串本では最大で1mの津波記録が残っている.

以上,都司 嘉宜教授・アウトリーチ室による

【津波伝搬のアニメーション】

断層が北西-南東方向に伸びているため,それと直交した方向(南西・北東)で津波が大きくなることが予測されます.サモア諸島は震源のすぐ北東に位置した ため,1mを超える津波が発生したと考えられます.太平洋の中で日本で特に津波が大きくなるというわけではありませんが,数10cm程度の津波が日本沿岸 にも達する可能性があります.

Simu-1

下図は津波の最大波高をあらわしたものです.北東-南西方向に波高が高いことが分かります.

hmax

以上,佐竹 健治 教授による


【1933年 昭和三陸地震】

1933年3月3日未明、三陸沖の日本海溝付近でM8.1のプレート内正断層型と考えら れる地震が起き、沿岸地域では震度5を記録。30~40分後には津波が来襲し、三陸町綾里では波高 28.7mに達した。死者・不明者は岩手県約2,700人、宮城県約300人、青森県30人、北海道13人。流 失・倒壊家屋は6道県で約6,000棟の被害が出た。

地震研究所創立から10年の間に、十勝岳噴火、北丹後地震、北海道駒ヶ岳噴火、関東地震、北伊豆地震、伊東群発地震、西埼玉地震、三陸地震津波等が相次 ぎ、現地調査と一般向け公開講演会の開催という、大規模・総合的調査と啓蒙体制の原型が作られていった。三陸地震津波の調査・研究結果については、公開講 演会が開かれ、地震研究所彙報別冊 第1号として出版された。

以上,桑原 央治 アウトリーチ室員による

【GPS津波計】

室戸沖に設置しているGPS津波計の記録が下記からご覧いただけます.

GPS津波計は津波を早期に検出してリアルタイムで沿岸住民に伝達し,津波被害を軽減することを目的として10年余り前に開発をスタートしました.(準リアルタイム表示もご覧いただけます)
http://www.tsunamigps.com/index.html

装置は,海面に浮かべたブイにGPS(人工衛星からの電波を受信して位置を精度良く 決定する装置)を搭載したもの(下図参照)で,無線によってデータを陸上基地局にリアルタ イムで伝送し,cm程度の精度で位置を推定してWeb上でリアルタイムに海面高をモニタできるようになっている.

GPStsunamiIllustbuoy_picture

クリックでそれぞれ拡大

大船渡に設置した実験では,2007年のペルー沖地震や2003年の十勝沖地震に伴った津波の検出に成功しました。現在は室戸の西方沖に設置されていて,2004年の紀伊半島沖地震に伴う津波を検出しました。

【共同研究機関】

  • 高知高専
  • 東北大学
  • (独)港湾空港技術研究所
  • 日立造船(株)
以上,加藤 照之 教授による

【J-arrayで観測された地震波形】

J-arrayで観測された波形のページ
(クリックで該当ページへ)

地震予知情報センター

【海半球プロジェクトで観測された地震波形】

海半球ネットワークプロジェクトとは,太平洋を中心とする海半球に,地震・電磁気・測地・津波・地殻変動などの地球活動を総合的 に観察するネットワークを展開して,グローバルに地球活動の様子を明らかにすることを進める計画です.平成8年より発足し,多くの成果を出しています. (詳細は「海半球ネットワーク計画 -地球内部を覗く新しい目-」をご覧ください.)
Map_ohp-s

図1: 観測点分布図(クリックで拡大)

OHRC-s

図2:観測された波形記録(クリックで拡大)

図2:横軸が時間(左図では全体で1時間,右図では3時間),縦軸は震源からの距離.左図では30秒のローパスフィルタがかけられており, 実体波(P波やS波)と,それに続く振幅の大きな表面波が見える.右図では100秒のローパスフィルタがかけられており,震源に近い大円を伝搬してきた表 面波(R1)と,遠い大円を伝搬してきた表面波(R2)とが観察できる.

以上,海半球観測研究センターによる


【アウターライズ地震とは】

海溝から海側にかけて,地形的にもりあがった”アウターライズ”という部分があり,そのようなところの地下で起きる地震を,アウターライズ地震という.こ の盛り上がりは,沈み込もうとするプレートが海溝の手前から曲がり始めるために出来るが,震源が浅い場合はこの曲げによる引っ張る力が働いて正断層型とな る.


【W-phase波形による震源メカニズム】

strike/ dip / slip

断層面1: 152.2 / 41.1 / -87.7

断層面2: 329.2 / 49.0 / -92.0

以上,横田 裕輔氏(修士2年)による


【リンク】