2010年9月,2011年2月 ニュージーランド南島の地震

ウェブサイト立ち上げ: 2010年9月4日
更新日: 2011年2月24日

English

2010年9月4日,午前1時35分(日本時間,現地時刻では午前4時35分),ニュージーランド南島のクライストチャーチ付近でマグニチュード7.0の浅い内陸地殻内地震が発生しました(USGSによる).日本時間9月5日13時30分現在,この地震による人的被害は,死者0,重傷2,軽傷約100となっています(CNNによる).

また,2011年2月22日,8時51分(日本時間,現地では午後12時51分),クライストチャーチのほぼ直下でM6.3の地震が発生しました(USGSによる).日本時間2月22日15時30分現在,この地震によって65名の死者が出ていると報告されています(CNNによる).

これらの地震に関する情報を本ウェブサイトにまとめていきます.(広報アウトリーチ室)

※ 地震に関連する模式図などは『画像集サイト』で公開しています.


更新情報


—— 2011年2月22日の地震について ——


【2011年2月22日の地震の基本的な情報(USGSによる)】

  • 発生日時: 2011年2月22日 午前8時51分(日本時間,現地時刻では午後12時51分)
  • 震源の位置: 南緯43.60°, 東経172.71°,深さ5km
  • マグニチュード: 6.3
  • 地震のタイプ: 右横ずれ+逆断層
  • 関連するプレート: オーストラリアプレート,太平洋プレート
  • 近隣の主な都市: Christchurch,ほぼ直下
  • 人的被害や建物倒壊などが多数出ている

2010年9月の地震の余震分布と今回の地震の震源位置

2010年9月の地震(M 7.0)の震源を黄色の星で,この地震の発生(2010年9月4日)から12月31日の間に起きた余震の分布を赤の●で,今回の地震の震源を青の星でしめした.

【W-phaseによる震源メカニズム解】

世界中で観測された,この地震による地震波の記録からWフェーズを取り出し,Kanamori and Rivera (2008)の方法で解析した.上の余震分布を加味すれば,下図左から,右横ずれ断層と逆断層の成分をあわせもった地震のメカニズムであることがわかる.下図右はUSGSによるW-phase震源メカニズム解で,同様の性質を示している.

【震源過程インバージョン】

上で得られた震源メカニズムで断層のすべり分布を求めた.破壊の開始点付近でもっともすべり量が多く,1m前後と考えられる.

(以上,横田・尹・西田・大木・纐纈による.)


—— 以下,2010年9月の地震について ——


基本的な情報(USGS,GNS Science, CNNによる)

  • 地震発生日時: 2010年9月4日午前1時35分(日本時間;現地時間午前4時35分)
  • 震源の位置: 南緯43.55°, 東経172.18°,深さ10km 5km(のちにUSGSにより訂正された)
  • マグニチュード: 7.0 (モーメントマグニチュードMw
  • 地震のタイプ: 右横ずれ断層型
  • 関連するプレート: オーストラリアプレート,太平洋プレート
  • 近隣のおもな都市: Christchurch,震源から東約44km
  • 人的被害: 死者0,重傷2,軽傷約100(日本時間9月5日13時30分現在)

テクトニクス背景

ニュージーランドのテクトニクスは複雑です.北島全域と南島北部はオーストラリアプレートに,南島中央部・南部が太平洋プレートに乗っています.北島では太平洋プレートが東から西へ年間約8cmでオーストラリアプレートの下に沈み込んでいますが,南島南部ではオーストラリアプレートが西から東へ太平洋プレートの下に沈みこんでいます.この両者の中間にある南島中央部では横ずれ断層が発達しています.

今回の地震は,この南島中央部のテクトニクスを反映した,右横ずれ断層メカニズムである可能性が高いと思われます.

プレートテクトニクス

世界のプレート分布図.『謎解き地震学 No.1』参照.(http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/TOPICS_OLD/outreach/charade/platetectonics/)

ニュージーランドのテクトニクス

ニュージーランド周辺のプレートテクトニクス.PB2002モデルより(http://peterbird.name/publications/2003_PB2002/2003_PB2002.htm)


震源メカニズム

世界中で観測された,この地震による地震波の記録からWフェーズおよびP波の部分を取り出し,それぞれKanamori and Rivera (2008)およびKikuchi and Kanamori (1991)の方法で解析した.その結果(図1)とGNS Scienceが決定した余震の分布(図2)を併せて考えれば,ほぼ東西の走向で垂直に近い断層面で起きた,右横ずれのすべりによるMw 7.0程度の地震と考えられる.ここではWフェーズ解析による震源メカニズムを採用して断層モデルを作成し,それを用いて改めてP波データをインバージョンした.地表地震断層の観測結果などを参考にすると,わずかに北傾斜した,ほぼ垂直の右横ずれ断層となった(図3).最大で2mほどのすべりとなるアスペリティは地表地震断層の現れた地域にほぼ一致し,東端がChristchurchから30kmほど離れたところとなった.(横田・尹・川添・大木・纐纈による.図3およびその解釈は2010年12月時点での再解析結果に基づく.)

図1 Wフェーズ解析(左)とP波解析(右)による震源メカニズム

図2. 余震分布(日本時間9月4日14時15分現在)

図3.有限断層モデルによるインバージョン結果(すべり分布).GNSのサイト掲載地図に加筆.



この地域の震源分布

ニュージーランドでの地震の分布と3ヶ所での断面図.黄色い星は今回の地震の震源の位置,黄色い三角は火山の位置,点は1973年以降の震源の位置,色は震源深さをあらわす.また,黒い実線はプレート境界(PB2002モデル).北部での断面(E-F)では東から西へ太平洋プレートがオーストラリアプレートの下に沈み込んでいるのが震源分布からもわかる.中央部での断面(C-D)では横ずれ断層のため震源は浅いものが多い.南部での断面(A-B)では西から東へオーストラリアプレートが太平洋プレートの下に沈み込んでいる.

データには,1973年以降のPDEカタログからM3以上のものを,また,GNS Scienceから2000年以降のM2以上のものを抽出しプロットした.断面図にはA-B, C-D, E-Fからそれぞれ幅50km以内にあるものをプロットしている.(西田・大木による)

震源分布


この地域での過去の地震(USGS,佐竹教授による)

  • 1929年3月9日 Arthurs’s Pass(アーサーズパス)の50km南東でM7.1の浅い地震が発生した(死者はなかった模様).
  • 1994年6月には今回の地震から40km北西でM6.7とM5.9の地震が起きているが,死者や被害はなかった.

リンク