2005年パキスタン北部地震付近のテクトニクス解説(地球ダイナミクス部門:瀬野徹三)

プレートとプレートが互いに近づくタイプの境界は,一つは日本付近のような沈み込み帯だが,もう一つはヒマラヤのような衝突帯である.衝突はもともと沈み込んでいる海洋プレートに大陸プレートが含まれている時に起こる.今回の地震が起こった付近は,昔は沈み込み帯であったところに大陸プレートであるインドプレートがさしかかって衝突帯となったヒマラヤの西の端にあたる.



ヒマラヤ衝突帯に沿った歴史地震(コンター),地震活動(小丸)と今回の地震断層(赤,ERI地震学ノート).ヒマラヤでは歴史的にいくつか大地震が起こっている.


この付近はコヒスタン弧という島弧がアジアに衝突した後,コヒスタンにインド大陸が衝突している.またインドが衝突する前に沈み込んでいた海洋プレートが稍深発地震として北西に見えている.つまり衝突は最近で,沈み込み帯の性格も少し残っている.このような性格を持ったところとしては,1999年集集地震が起こった台湾やルーマニア,チモールなどがある.
ヒンズークシ地方の地質断層,稍深発地震(色のコンター),地震活動(黒点),今回の地震断層(赤,ERI地震学ノート)

したがって沈み込み帯も衝突帯も基本的にはよく似ていて,プレート境界付近で大きな地震が起こることがある.今回の地震でもプレート境界浅部が破壊したようである.衝突帯であるからといって特に地震が起こりやすいということはない.むしろ起こらなくなる場合が多い.しかしプレート境界が陸上に露出しているわけだから,地震が起こると被害が大きくなる.