第1回 「東北地方太平洋沖で発生する地震・津波の調査」運営委員会

日時:  平成25年9月24日(月) 13時30分〜17時30分

場所:  東京大学地震研究所 会議室(1号館3階) 

出席者

委員長   長谷川 昭 東北大学大学院理学研究科名誉教授 

委 員   松澤  暢  東北大学大学院理学研究科教授 

      今村 文彦 東北大学災害科学国際研究所教授

      西澤あずさ 海上保安庁海洋情報部技術・国際課海洋研究室長

      西村 卓也 国土交通省国土地理院地理地殻活動研究センター

地殻変動研究室主任研究官

      篠原 雅尚 東京大学地震研究所教授

      末次 大輔 海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域プログラム

ディレクター 

      伊藤 喜宏 東北大学大学院理学研究科助教

(日野亮太東北大学理学研究科准教授代理)

      小平 秀一 海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域プログラム

ディレクター

      佐藤比呂志 東京大学地震研究所教授

      宮内 崇裕 千葉大学大学院理学研究科教授

      荒井 晃作 産業技術総合研究所地質情報研究部門研究員

(池原研産業技術総合研究所副研究部門長代理)

      金松 敏也 海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域技術研究副主幹

      宍倉 正展 産業技術総合研究所活断層・地震研究センター研究チーム長

      谷岡勇市郎 北海道大学理学研究院教授

      佐竹 健治 東京大学地震研究所教授

      笠谷 貴史 海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域技術研究副主任

オブザーバー吉田 康宏 文部科学省研究開発局地震・防災研究課地震調査管理官

新井 雅史 文部科学省研究開発局地震・防災研究課本部係長

石村 大輔 千葉大学大学院理学研究科特任研究員

尾鼻浩一郎 海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域主任研究員

杉岡 裕子 海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域研究員

三浦 誠一 海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域技術研究副主任

伊藤 亜紀 海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域技術研究主事

石山 達也 東京大学地震研究所助教

室谷 智子 東京大学地震研究所特任研究員

中東 和夫 東京大学地震研究所特任研究員

藤原 敦子 運営委員会事務局

議事概要

 長谷川委員長の挨拶の後、委員の出欠ならびに配付資料の確認を行った。

 文部科学省研究開発局より、「東北地震は未だ多くの事が解明されていない。この委託研究により得られる新たな知見が、他の防災プロジェクトなどへフィードバックされる事を期待している。また、国民へ成果を発信していく事も重要である。」との挨拶があった。

引き続き委員、オブザーバーの自己紹介の後、委員長の下、議事を進行した。

 

議事T 事業実施状況と今後の計画

1-1 東北地方太平洋沖地震の震源域における長期海底地震観測

(東京大学地震研究所)

 2011年東北地方太平洋沖地震の震源域において長期観測型海底地震計を用いた地震観測を5カ年に渡り実施していく予定である事が説明された。平成23年度の観測は36台の長期観測型海底地震計および4台の広帯域海底地震計を用いて、茨城・房総半島沖の海域で実施中である事が報告された。また、24年度の観測は23年度観測域に隣接する福島沖の海域で11月から実施予定である事が報告された。観測点配置や観測域の選定には、日本海溝に整備が予定されている日本海溝地震津波観測網整備(ケーブル式観測システム)の進捗状況を考慮しながら行う事などが説明された。

 

1-2 海溝海側を含む東北地方太平洋沖地震震源域周辺域の海底地震観測

(海洋研究開発機構)

 東北地方太平洋沖地震の震源域周辺海域で広帯域海底地震計や短周期型海底地震計を用いて海底自然地震観測を行う事が説明された。平成23年度は房総沖南部の海域で海底地震観測網を構築し、現在観測を継続中である事が報告された。今後は十勝沖などでも観測を実施予定である事が報告された。委員から観測領域の設定などについての質問があり、それに対し、陸上観測で得られている低周波地震の発生域で広帯域地震観測を行う事により、低周波地震震源位置の正確な把握などを行って行く予定である事などが説明された。

 

1-3 宮城県沖における海底地震繰り返し観測

(東北大学理学研究科)

 東北地方太平洋沖地震の地震時滑りが極大であった宮城県の周辺海域において、繰り返し海底地震観測および水圧観測を行う事が説明された。平成24年度は10月に1台の海底地震計と2台の海底圧力計を設置予定である事が報告された。また、これまでに得られた圧力計データから、余効変動による海底面沈降レートに時空間的違いがある見られる可能性がある事が説明された。それに対し、圧力計データの精度などについて議論が行われた。

 

2-1 海域構造調査

(海洋研究開発機構)

 日本海溝周辺域、及び日本海溝軸で平成27年度まで構造調査を実施していく予定である事が説明された。平成24年度は陸域構造調査と共同し、福島県相馬沖の日本海溝海側の海域から、山形県米沢市にまで至る海陸統合構造探査を実施予定である事が報告された。また、宮城沖日本海溝軸部において2012年3月に、高解像度構造調査を実施予定である事が説明された。それに対し、アウターライズ地震の震源分布などについての議論などが行われた。

 

2-2 陸域構造調査

(東京大学地震研究所)

 平成24年度は東北地方太平洋沖地震発生後の地殻活動を予測する為に10月下旬からGPS観測点20点を東北地方に設置予定である事が説明された。また、海域構造調査と共同で実施する、海陸統合構造探査の陸域測線では9月にバイブロサイスによる発震作業を実施した事が報告された。得られた暫定的な反射断面には往復走時で約8秒の深部に反射面が見られる事が説明された。それに対し、今後海陸統合解析を行うことで、不均質構造の理解を深める事が出来るのではないかといった議論などが行われた。

 

2-3 変動地形学的および地震地質学的活構造調査

(千葉大学)

 巨大地震サイクルと海岸低地の発達過程について調査を行っているとの報告が行われた。三陸海岸で実施した予察調査の結果、北部域では最近100万年間隆起が継続している事や、南部域では最近数1000年では沈降が示唆されている事などが報告された。今後はトレンチ調査、ボーリング調査や海水変動調査を実施予定である事が説明された。それに対し、ボーリングデータから津波履歴も調査できるのではないかといった意見などが出された。

 

3-1 海底の地震性堆積物を用いた地震発生間隔の研究

(産業技術総合研究所)

 平成23年度は観測船「みらい」「ゾンネ」を用いて、三陸沖から磐城沖の前弧海盆域から日本海溝底にかけての領域で、ピストンコアラー、グラビティーコアラーを用い、合計21本の柱状試料を採取した事が報告された。得られた試料を解析した結果、東北地震によると考えられるタービダイトを確認した事が説明された。24年度は23年度に得られた試料の解析を進めると共に、仙台から青森沖の海域で試料採取が予定されている事が報告された。それに対し、コア採取の限界水深などについて議論が行われた。

 

3-2 海底地すべりと堆積物の強震動による変形の研究

(海洋研究開発機構)

 平成23年度から26年度にかけ、海底堆積物試料の採取を行い、最終年度である27年はデータのとりまとめを行う予定である事が、説明された。23年度は2012年2月から3月にかけて、東北地震震源域近傍において、海底堆積物コアの採取を行い、現在産業技術総合研究所と連携しつつ、解析中である事が報告された。これまでの解析の結果、地震後に複数のタービダイトが確認された事などが説明された。24年度は23年度に採取された試料の解析を継続する事、新たな試料の採取を行う予定である事などが説明された。

 

3-3 沿岸の地質調査に基づく地震・津波発生履歴に関する研究

(産業技術総合研究所)

 下北半島や房総半島沖で過去の巨大津波の履歴解明と波源の検討を目的として津波堆積物の調査を行う事が説明された。これまでに得られた試料からイベント砂層と考えられる層が確認された事が報告された。平成25年度以降は房総半島の太平洋岸を重点的に、鹿島灘までの領域で調査を行う予定である事が説明された。それに対し、茨城沿岸域では津波堆積物調査に適した場所が少ない事などが議論された。

 

3-4 北海道太平洋沿岸と三陸海岸における津波堆積物調査

(北海道大学)

 平成24年度は釧路周辺、及び別海地域で津波堆積物の調査を実施した事が報告された。得られた試料から、釧路地域では根室や十勝の様な明瞭な津波堆積物は観察できなかった事が説明された。また、青森県太平洋岸で東北地方太平洋地震による堆積物が1年間でどのような変化をするか調査した結果、2cm以下の津波堆積物は痕跡が失われている事がわかり、今後の津波堆積物調査では注意する必要がある事が説明された。平成25年度は最新の分析装置を用い、試料の室内分析を行う事などが説明された。

 

3-5 過去の地震の断層モデル構築のための地震・津波シミュレーション

(東京大学地震研究所)

 平成24年度は地震の発生メカニズムの解釈が十分ではない、1938年福島県東方沖地震群、1927年房総沖地震についての資料・記録の収集と検討を開始した事が説明された。1938年の地震記録の波形記録と2011年に周辺域で発生した地震波形記録を比較すると、これまで考えられてきたメカニズムとは異なった地震が1938年には発生していた可能性がある事が報告された。また、1927年の地震について波形データや津波データを用いて震源位置の再検討を行った結果、気象庁やISSで報告されている位置とは異なっている事が報告された。それに対し、房総沖の地震はプレート境界が複雑な場所で発生したと考えられるので、より震源決定精度を良くする必要がある事などが議論された。

 

4-1 海底変動地形解析

(東京大学地震研究所)

 平成23年度は海底変動地形の予察的検討を行い、三陸沖の海溝軸周辺や大陸棚では正断層群が発達しているという解析結果が報告された。24年度は三陸沖で新規データの取得作業を行う予定である事や、反射法探査データ再解析結果とボーリングデータの比較を行う予定である事が説明された。それに対し、反射法探査データ再解析方法などについての議論が行われた。

 

4-2 海底地形調査

(海洋研究開発機構)

 平成24年度は測深データやサブボトムプロファイラーを用いた地形調査、重力計などを用いた地球物理調査を2012年6月に実施し、得られたデータは現在コンパイル中である事が報告された。今後も新たなデータ取得を進めていくと共に、過去に取得された地球物理データの再処理を行って行く予定である事が、説明された。それに対し、測深データの精度などについての議論が行われた。

 

総合討論

 委員長から各テーマの5か年の研究計画計画、観測研究の全体像がわかる配布資料を用意してほしい、という意見が出された。

 また、委員から「各テーマの目標達成に向かって研究を進めて頂きたい」、「各テーマが連携し、より良い成果が得られる事を期待する」といったコメントが出された。 

 

議事U その他

 次回の運営委員会は年度末の2012年2月もしくは3月に開催を予定している事が説明された。