第２回　「東北地方太平洋沖で発生する地震・津波の調査観測」運営委員会　議事録

１．日時 平成26年3月7日（金）　13時00分〜17時00分

２．場所 東京大学地震研究所　１号館　３Ｆ　会議室

３．出席者

委員長　　　長谷川　昭　東北大学大学院理学研究科名誉教授　

委　員　　　松澤　　暢　東北大学大学院理学研究科教授　

　　　　　　西澤あずさ　海上保安庁海洋情報部技術・国際課海洋研究室長

　　　　　　畑中　雄樹　国土交通省国土地理院地理地殻活動研究センター

地殻変動研究室研究室長

　　　　　　土井　恵治　気象庁地震火山部地震予知情報課長

　　　　　　篠原　雅尚　東京大学地震研究所教授

　　　　　　末次　大輔　海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域

プログラムディレクター

　　　　　　日野　亮太　東北大学災害科学国際研究所教授

　　　　　　小平　秀一　海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域

プログラムディレクター

　　　　　　佐藤比呂志　東京大学地震研究所教授

　　　　　　宮内　崇裕　千葉大学大学院理学研究科教授

　　　　　　池原　研　　産業技術総合研究所地質情報研究部門副研究部門長

　　　　　　金松　敏也　海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域技術研究主幹

　　　　　　宍倉　正展　産業技術総合研究所活断層・地震研究センター研究チーム長

　　　　　　谷岡勇市郎　北海道大学理学研究院教授

　　　　　　佐竹　健治　東京大学地震研究所教授

　　　　　　笠谷　貴史　海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域技術研究副主幹

オブザーバー吉田　康宏　文部科学省研究開発局地震・防災研究課地震調査管理官

新井　雅史　文部科学省研究開発局地震・防災研究課本部係長

三浦　哲　　東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センター教授

石村　大輔　東北大学災害科学国際研究所助教

町田　祐弥　東京大学地震研究所特任研究員

藤原　敦子　「東北地方太平洋沖で発生する地震・津波の調査観測」事務局

４．議　題

委員長　挨拶

配付資料・出席者の確認

文部科学省研究開発局　地震・防災研究課　挨拶

議事�T　事業実施状況と今後の計画

（資料番号）

１．　個別テーマの事業実施状況と今後の計画

1-1　東北地方太平洋沖地震の震源域における長期海底地震観測

(東京大学地震研究所 篠原雅尚） （東北25-2-1-1）

1-2　宮城県沖における海底地震繰り返し観測

(東北大学災害科学国際研究所 日野亮太) （東北25-2-1-2）

2-1　変動地形学的及び地震地質学的活構造調査

(千葉大学 宮内崇裕：発表者 石村大輔） （東北25-2-2-1）

2-2　陸域構造調査

(東京大学地震研究所 篠原雅尚：発表者 三浦哲) （東北25-2-2-2）

3-1　海底の地震性堆積物を用いた地震発生間隔の研究

(産業技術総合研究所 池原研) （東北25-2-3-1）

3-2　海底地すべりと堆積物の強震動による変形の研究

(海洋研究開発機構 金松敏也) （東北25-2-3-2）

3-3　北海道太平洋沿岸と三陸海岸における津波堆積物調査

(北海道大学 谷岡勇市郎) （東北25-2-3-3）

4-1　海底地形調査

(海洋研究開発機構 笠谷貴史) （東北25-2-4-1）

総合討論

議事�U　その他

５．配布資料

東北25-2-0-1　「東北地方太平洋沖で発生する地震・津波の調査観測」運営委員会　　　　議事次第

東北25-2-0-2　「東北地方太平洋沖で発生する地震・津波の調査観測」運営委員会　　　　出席者一覧

東北25-2-0-3　「東北地方太平洋沖で発生する地震・津波の調査観測」運営委員会　　　　座席表

東北25-2-0-4　 第１回「東北地方太平洋沖で発生する地震・津波の調査観測」運営委員会　　　　議事録（案）

東北25-2-1-1　東北地方太平洋沖地震の震源域における長期海底地震観測

東北25-2-1-2　宮城県沖における海底地震繰り返し観測

東北25-2-2-1　変動地形学的及び地震地質学的活構造調査

東北25-2-2-2　陸域構造調査

東北25-2-3-1　海底の地震性堆積物を用いた地震発生間隔の研究

東北25-2-3-2　海底地すべりと堆積物の強震動による変形の研究

東北25-2-3-3　北海道太平洋沿岸と三陸海岸における津波堆積物調査

東北25-2-4-1　海底地形調査

６．議事概要

　

　長谷川委員長から「本委託研究は東北地方太平洋沖地震の発生を受けて立ち上がったものの、残念ながら今年度で終了ということになっている。本日はこれまで得られた多くの成果を報告してもらえることを期待すると同時に、できれば今後地震発生の理解をさらに追及できるような努力を期待したい。」との挨拶があった。

配布資料の確認、出席者の確認を行った。

　文部科学省研究開発局地震・防災研究課より、「本委託研究は巨大地震の機構を解明し、長期評価に資するため、もしくは防災に貢献するために立ち上がったものであるが、残念ながら今年度で終わることになった。しかしながら、この委託研究で得られた成果が、今後行われる日本海溝における地震発生の長期評価の見直しに活かされることを期待している。」との挨拶があった。

委員長の下、議事を進行した。

議事�T　事業実施状況と今後の計画

１．個別テーマの事業実施状況と今後の計画

1-1　東北地方太平洋沖地震の震源域における長期海底地震観測

（東京大学地震研究所）

　平成24年度に開始した宮城県南部から福島沖にかけての海底地震観測が平成25年11月に終了したことが報告された。回収された海底地震計データを解析した結果、998個の初期震源に対し387個の精度の良い震源を決定し、海溝付近の深さ20-50kmで地震が活発に発生していることが説明された。平成24年度から行われた本委託研究による観測によるデータを基に海域下における速度構造との比較を行った結果、東北地方太平洋沖地震発生前、直後にはあまり見られなかったフィリピン海プレート周辺での地震活動が活発になったことが説明された。また、プレート境界付近では、逆断層タイプの地震が見られるが、正断層、横ずれ断層タイプの地震も見られたことが説明された。それに対し、地震のメカニズムの時間変化や、低周波地震などの特異な地震活動についての議論が行われた。

1-2　宮城県沖における海底地震繰り返し観測

(東北大学災害科学国際研究所)

　本委託研究による海底地震計、海底水圧計による繰り返し観測が平成25年11月に終了したことが報告された。平成25年度後期に回収された水圧計によるによる時系列を検証した結果、年間10hpaを越えるような変化が見られる観測点はなくなったことが説明された。また、本震による余効変動の抽出、解釈を継続して行っているが、海底上下変動には粘性緩和の影響が顕著であること、海底水平変動の西向き成分も粘性緩和で説明可能であること、地震時に大きく滑ったとされる宮城県沖領域では、粘性緩和による余効変動が卓越することが説明された。それに対し、粘性緩和のモデルや、構造、パラメータについての議論などが行われた。

2-1　変動地形学的及び地震地質学的活構造調査

（千葉大学）

　平成25年度は、東北地方太平洋沖沿岸域における海水位変動調査、平成24年度に山田町小谷鳥にて行われたトレンチ・ボーリング調査の追加分析が行われたとの報告があった。追加分析では放射性炭素年代測定、トレンチ壁面試料の強熱減量の測定、テフラ分析、土色の測定を行い、1896年明治三陸津波、1611年慶長三陸津波、869年貞観津波に対比可能な津波堆積物を認定したとの説明があった。また、堆積速度曲線、トレンチ壁面試料の乾燥密度、強熱減量の測定の結果に基づき、869年貞観津波の際の地殻変動の存在が示唆されたとの説明があった。それに対し、歴史地震と津波堆積物の対応や、地殻変動の沈降、隆起を解釈するための方法に関する議論が行われた。

2-2　陸域構造調査

（東京大学地震研究所）

　石巻-酒田、及びいわきー新潟測線上においてGPS連続観測点を高密度に配置し、既存のGEONET等と組み合わせて、2013年に東北地方で見られた歪分布に関して報告があった。解析を行った結果、東北地方北部では、北西−南東伸張・北東―南西短縮、南三陸沿岸では、西北西―東南東短縮、脊梁山脈中部では南北短縮の主歪分布を示すとの説明があった。また、2011年4月以降の面積歪分布では、太平洋沿岸南部、脊梁山脈周辺での収縮傾向が東北地方太平洋沖地震の発生後初期から見られたとの説明があった。また、今後の課題として、稠密観測網のメリットを生かせるデータ解析法の適用や、歪場の不均質と地殻構造との関係を検討する必要があるとの説明が行われた。これに対し、伸張、短縮の歪時空間変化などについての議論が行われた。

3-1　海底の地震性堆積物を用いた地震発生間隔の研究

（産業技術総合研究所）

　平成25年度に「なつしま」NT13-19航海において前弧域下部である三陸沖から宮城沖にかけての日本海溝において24本のコアの採取が行われ、試料の解析結果についての報告があった。解析の結果、タービダイトの挟在頻度は宮城沖県沖の方が高く、挟在する完新世テフラをもとにタービダイトの堆積間隔はほとんどのコアで100-150年程度であり、海域の北側に比べて南側の方が短い傾向を示すとの説明があった。また、日本海溝沿いでのタービダイト古地震学の可能性として、日本海溝の大きい堆積速度がタービダイトをきれいに保存する役割があるため、海底堆積物中のタービダイトの堆積間隔から地震発生履歴の推定が期待できるとの説明があった。今後は年代を正確に決めていくことで、堆積間隔の意味付けや、南北での差を説明していくことが課題であるとの説明があった。それに対して、年代測定に関してなどの議論が行われた。

3-2　海底地すべりと堆積物の強震動による変形の研究

（海洋研究開発機構）

　平成25年度に「なつしま」NT13-19航海において、海溝陸側下部斜面平坦面において採泥調査を行われ、調査の結果、2011年地震に誘発された海底地すべり層、変形層は一部にみられると解釈されるが広域的には見られないこと、流動層の帯磁率は層序学的上下層の値と異なるため、外部から流入したと解釈される、などの報告が行われた。今後の展開として、変形層の解析を進め、その結果と年代から東北地震と海底変動の関連を考察するとの説明が行われた。

3-3　北海道太平洋沿岸と三陸海岸における津波堆積物調査

（北海道大学）

　平成25年度に根室海峡沿岸、別海町にて津波堆積物調査を行ったとの報告があった。調査の結果、根室海峡沿岸では、古津波堆積物の候補となる層が2枚確認され、これらの層は17世紀津波を示す層、約2000~2500年前の層を示しており、これらの層は十勝から根室で見つかっている古津波堆積物と対応される可能性が高いとの説明が行われた。また、根室沖で発生したとされる17世紀巨大地震の津波断層モデルを設定し別海での津波高を計算した結果、約1.5mの津波が発生することが明らかとなり、本委託研究による調査結果と整合性を示す結果になったとの説明があった。それに対し、津波断層モデルなどについて議論が行われた。

4-1　海底地形調査

（海洋研究開発機構）

　東北地方太平洋沖地震の発生後から平成25年度上四半期までの航海の測深データをコンパイルし、北緯37.5度から39.5度にかけての地形データセットを作成したとの報告が行われ、100mグリッドでもばらつきの少ないデータであるとの説明がされた。地震前に取得された測深データとの比較を行ったところ、震源域近傍の海溝軸付近の限られた領域で明瞭な地形変化が検出されたとの報告があった。また曳航体及びかいこうランチャーを用いた曳航調査により大水深での地層探査手法を確立し、マルチチャンネル音波探査では得られない詳細な海底下構造を得る致傷探査手法を確立したとの報告があった。それに対し、南北方向での地形変化の拡がりなどについての議論が行われた。

総合討論

　年度毎の成果報告書とは別に、委託研究全体の総括報告書の作成について議論が行われ、委託研究により「どこまで理解が進んだか」、「何を積み残したか」を中心にサブテーマ毎にまとめてはどうかとの提案があった。これに対し、総括報告書の読者として誰を想定しているかとの質問があり、成果報告書は専門家向けに、総括報告書は一般の読者を想定しているとの回答があった。また、総括報告書の公開はweb上で行うのか、との質問があり、これに対して、web上での公開と冊子体の作成を行いたいとの回答があった。また総括報告書の内容として、「何を目指したか」の記述も必要ではないかとの意見があった。さらに委託研究が中途で終了したことも、説明義務があるため、総括報告書では明記する必要があるのでは、との意見があった。最後に、委託研究全体の総括報告書の作成については、合意し、今後事務局において内容･様式等を検討し、作成依頼することとした。

議事�U　その他

　平成25年度成果報告書の提出が3月17日であるとの確認が行われた。

以上