目的
 噴火に至る地下のマグマプロセスの理解およびそれに基づく噴火予測には,噴火履歴の解読は必要不可欠の基礎的情報である.富士火山は火山体が若くかつ地形が急峻なため,国際的に有名な火山である割には地質調査が進んでいない.このような火山では,山体を掘削し山体内部の試料を直接手に入れることが,火山活動史やマグマの変遷,すなわち噴火履歴を明らかにする上で有効な手立てとなる.さらに,噴火推移も宝永噴火(1707年を除きほとんど分かっていないため,噴出物の解析から,過去の噴火推移を解き明すことにより,将来の噴火シナリオ作成に資することができる.
 我々は,文部科学省科学技術振興調整費(平成13〜15年度)「富士火山の活動の総合的研究と情報の高度化」(代表者 藤井敏嗣)に取り組んできた.この中で,富士山は,基底部には古い安山岩質の山体−先小御岳−が存在しその上位の小御岳,古富士,新富士と併せ四重の構造になっていることや,玄武岩質マグマが卓越する原因として主マグマ溜まりが通常より深い位置に存在すること,浅部に安山岩質の小マグマ溜まりが存在することを明らかにするなど,画期的な成果を上げることができた.当時の計画では掘削井を観測井としても活用するという2重の目的を達成する必要から掘削位置を山体斜面上に設定したが,残念ながら山体斜面には富士火山の活動初期の噴出物がほとんど堆積していなかった.このため,先小御岳,小御岳の安山岩質マグマの活動ステージから古富士以降の玄武岩マグマの活動ステージへどのようなプロセスを経て変化していったのか,詳しい手掛かりは得られていない.この変化のプロセスこそが,玄武岩マグマが卓越するという富士火山の特異なマグマ供給系がなぜこの場に形成されたのかを知る鍵となる可能性がある.本申請は,この富士火山の活動初期の噴火履歴に光を当て,富士火山の全噴火履歴を明らかにすると共に,この玄武岩質火山がどのようなメカニズムにより,この場所に生ずるに至ったのかを解明することを目的とする.

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