最近の成果

ここでは、最近の研究成果をイラストとともに紹介しています。 より詳しい研究成果や報告書、過去の計画の成果などはこちらをご覧下さい

平成27年度の成果

これらの図は下記の報告書に掲載されているものです。

口永良部島の火山噴火に関する観測と結果。 口永良部島では,2014年噴火後は火口近傍へ近づくことが困難になり,無人ヘリによる空中磁気計測や火口近傍の地震計設置,船舶を利用した二酸化硫黄ガス放出量の観測など,多項目の機動的観測が行われた。その結果,地震活動の活発化や火道の閉塞等,2015年噴火前の諸現象が捉えられただけでなく,噴火発生後には活動推移を把握し噴火警戒レベルを引き下げる判断にも役立てられた。

桜島のマグマ供給系と避難行動のモデルを付した噴火事象系統樹。 地盤変動観測から推定される桜島島内への1日当たりのマグマ貫入量と,これまでに発生した噴火事例に基づき,とるべき避難行動をまとめている。昭和噴火(1946年)の貫入量の「?」は観測データが乏しく信頼性に欠けることを示す。通常の噴火では,姶良カルデラの地下約10kmのマグマ溜まりから既存の火道を使って桜島島内へマグマが供給され,噴火活動が引き起こされている。2015年8月15日には,既存火道以外にマグマが貫入し,新規に火道が形成されたが,噴火には至らなかった。この時の地震活動のエネルギーは,大噴火が発生した大正噴火に比べて小さい。

東北沖のプレート境界で発生するゆっくり滑りとM5以上の地震との同期。 プレート境界で発生する相似地震と陸上の地殻変動データから,プレート境界の周期的なゆっくり滑りを発見した。大きな滑り速度がゆっくり滑りに対応する。ゆっくり滑りの発生間隔は1~6年程度と地域性があり(例えば三陸沖東部では3年間隔(右下図)),M5以上の地震活動と同期していた。東北地方太平洋沖地震が発生した時期にも,三陸沖ではゆっくり滑りが発生していた。ゆっくり滑りが大規模な地震を起こす固着域に周期的な力の変化をもたらすことで,地震発生数を変調させていると考えられる。

富士山宝永噴火(1707年)噴出物の鉱物組成分析から明らかにされたマグマシステム。 深さ4-6kmに揮発性成分にほぼ飽和したデイサイト質マグマ溜まりがあり,そこに噴火の数日前に深部から玄武岩質マグマが上昇・接触した結果,デイサイト質マグマの水分が急激に揮発し,爆発的噴火を引き起こした可能性が高い。最近3000年間の噴火でも同様の特徴が見られることから,将来の噴火においても,深部から上昇してきたマグマが浅部マグマと接触する際に何らかの明確な前兆現象が捉えられる可能性がある。

南海トラフ沿いの海底地殻変動。 上段:GPS-音響測距結合方式による海底地殻変動観測システムの概念図, 下段:西南日本の年平均変位速度。赤の矢印は東北地方太平洋沖地震の影響を補正した海底基準点の移動速度を示し,楕円は95%信頼区間を示す。白の矢印は東北地方太平洋沖地震以前の国土地理院のGNSS連続観測点の移動速度,緑の矢印はフィリピン海プレートのアムールプレートへの沈み込み速度(プレート相対運動モデルMORVELによる)を示す。

東北地方太平洋沖地震後の東北地方の面積ひずみ。 東北地方の地下の温度分布をもとに地殻・マントル内の粘性率の分布を推定して作成した構造モデルを用いた3次元シミュレーションにより求められた東北地方太平洋沖地震後1年後から2年後までの地殻変動。地表面における面積ひずみの大きさを色の違いで示した。実際の観測で得られている地表のひずみの大まかな特徴を再現することに成功した。

地震活動により推定された九州のひずみ速度分布。 熊本から別府にかけての地域では年間10-7オーダーの大きなひずみが地震活動によって進み,周辺での応力蓄積の可能性が示唆される。特に布田川断層や日奈久断層付近ではその値が大きくなっており,活断層の動きと同じ右横ずれ成分に卓越するひずみ場となっている。1996年1月から2013年7月に観測された深さ30km以浅の地震を解析に使用した。

応力場の時間変化による御嶽山のモニタリング。 地震のメカニズムから応力場を推定する手法を御嶽山の火山性地震に適用した。噴火前の火山下の応力場は広域応力場からずれており,火山活動の活発化を示している。

様々なデータを基に推定された沈み込む太平洋プレートの形状。 日本周辺に沈み込む太平洋プレートの沈み込み方向にいくつもの断面図をとり(左上図),その断面図の震源分布,地震波速度構造,構造探査等による形状の情報を集め,その結果から沈み込むプレート上面を推定し(中央上図),これらの複数の断面図のデータをもとに数値計算による補間手法を用いて,沈み込む太平洋プレートの3次元構造の形状を推定した(右図)。

日本海溝域における地震発生サイクルの数値シミュレーション。 日本海溝域の巨大地震が想定宮城県沖地震に与える影響を調べるため,巨大地震発生サイクル計算を行い,東北地方太平洋沖地震に相当するM9クラスの地震とその余効滑り(左上図),またそれ以前の宮城県沖地震に相当するM7クラスの地震や前震,以後の茨城県沖の最大余震等を再現できる様々な摩擦パラメータのモデルを構築した。それらの発生の様子の一例をM9クラスの地震を基準にして時系列で示している(右上図)。同様の現象を再現した76個のモデルによると,M9クラスの地震が発生してから宮城県沖地震が発生するまでの時間間隔は,M9クラスの地震発生前の宮城県沖地震の平均再来間隔の半分より短くなる場合が多くなる可能性があることがわかった(下図)。

南海トラフ巨大地震のリスク評価研究。 南海トラフ巨大地震によって,大阪の代表地点おいて予測されるリスクについて,リスクに影響する要因を,震源,地震動,地盤増幅,構造物被害,損失に分け,それぞれの要因について複数のモデルを用いて評価した。これにより,リスク評価に伴う不確実さの程度と,どの要因がそのリスク評価に伴う不確実さに効いているのかを明らかにした。

今市地震(1949年)による地滑り。 上図:1949年今市地震(M6.4) による降下火砕物の地滑りの分布。この地震が栃木県今市市(現日光市)で引き起こした多数の地滑りを明らかにするために,航空レーザー計測を実施した結果,緩斜面で16 箇所の深い崩壊性地滑り,急斜面で141箇所の浅い崩壊性地滑りが発生したことがわかった。また,この地震以前にも40 箇所の深い崩壊性地滑りがあったことが認められ,降下火砕物の地震時地滑りの危険性は容易には減少しないことがわかった。
下図: 野口の地滑りの断面図。上図中の緑の矢印の間の地滑りの断面図を示す。緩斜面が滑り,下方の河川を閉塞し,現在でも残存する天然ダムを形成した。ボーリング調査の結果,滑り面は深さ約5mにある小川火山礫層にあることがわかった。リングせん断試験によると,小川火山礫層は容易に破砕・液状化しやすく,高速で流動的な崩壊性地滑りの原因となったことがわかった。

XバンドMPレーダーを用いた桜島噴火に伴う地上降灰量予測実験。 桜島島内から鹿児島市内で降灰があった2013年8月18日に発生した爆発的噴火(噴煙高度5000m)のXバンドMPレーダー画像を解析し,レーダー反射因子時間積算と地上時間降灰量が関係式で表現できることを明らかにした。今後,事例を増やして関係式の高精度化を図ることにより,レーダー画像から高い空間密度で即時的に降灰量の予測を行うことが可能となる(写真提供:気象庁)。

釧路市における災害時避難の分析。 釧路市にて積雪期と非積雪期に津波からの避難経路に沿った避難訓練を実施し,その時の避難速度低下の場所とその原因を示す。GPS追跡及び動画撮影によりその速度と速度低下の原因を調査する実験を実施した。積雪期(青)には非積雪期(赤)とは違った場所・原因(記号)による避難速度低下があることを示す。

東アジア地域地震火山災害情報図の日本付近の拡大図。 東アジア地域の地質,活断層,地震の震央と震源域の分布,主要地震の犠牲者とその要因,津波災害,火山の分布,カルデラ,降下火山灰と大規模火砕流,主要火山イベントの犠牲者と要因を取りまとめた。産業技術総合研究所のウェブサイトで,図と説明書をダウンロードできる。(https://unit.aist.go.jp/ievg/press/20160520/index.html)

日本海溝軸を跨いだ基線上の海底間音響測距観測。 東北地方太平洋沖地震で大きな滑りが生じた日本海溝付近で行った海底間音響測距観測の結果を示す。2014年9月から2015年にかけての約7ヶ月間にわたって,海溝軸の太平洋プレート側と日本列島側に置いた装置間の精密な距離を連続測定したところ,距離の変化はほとんど見られなかった。このことは,上記の期間,海溝近傍のプレート境界断層浅部に沿って顕著な滑りが生じていないことを示唆する。


平成26年度の成果

平成25年度の成果

前計画までの成果