地震観測研究の展望 観測データと物理モデルに基づき断層すべりの予測を目指す

海溝沿いのプレート境界型地震に関しては、この20年ほどでGNSS(全地球測位衛星システム)などによりプレート境界のすべりの状況をモニターできるようになってきました。海底地殻変動観測などにより精度も向上しています。また、摩擦の物理の解明によりプレート境界でのすべりの時間発展のモデル化も進展し、数値シミュレーションで観測された現象を再現できるようになってきました。
一方、日本の内陸でも地殻のひずみが空間的に不均一であることが観測から分かってきていて、これが内陸地震の発生に関係していると考えられています。

地殻の物性の違いから地震発生域を探る

東京大学地震研究所教授 加藤尚之東京大学地震研究所教授
加藤 尚之(かとう なおゆき)

断層でも強く固着してひずみをためやすい場所や、いつもすべっていてひずみがたまらない場所があります。また、地殻の中にも硬いところや軟らかいところがあります。このような断層すべりや変形の性質の違いが地震が起こりやすい場所を決めていると考えています。そのため、地下の物質の性質を知ることは重要で、どこで地震が発生する可能性が高いかを明らかにすることにつながるでしょう。

地殻の性質を明らかにし、地殻内で起こっている現象を観測により把握するとともに、地殻の変形や破壊のメカニズムに基づく物理モデルにより現象を再現することで、地殻現象をより深く理解することができます。最終的には、観測データと物理モデルから断層すべりの時間発展を予測して、地震発生の予測につなげることを目指しています。