課題番号:2908

平成22年度年次報告

(1)実施機関名

公募研究

(2)研究課題(または観測項目)名

衛星による地震関連電離圏擾乱の検証とメカニズムの解明

(3)最も関連の深い建議の項目

    • 2. 地震・火山現象解明のための観測研究の推進
      • (3) 地震発生先行・破壊過程と火山噴火過程
        • (3-1) 地震発生先行過程
          • ア. 観測データによる先行現象の評価

(4)その他関連する建議の項目

  • 2. 地震・火山現象解明のための観測研究の推進
    • (3) 地震発生先行・破壊過程と火山噴火過程
      • (3-1) 地震発生先行過程
        • イ. 先行現象の発生機構の解明

(5)本課題の5か年の到達目標

(本課題は平成22年度公募研究である)

(6)本課題の5か年計画の概要

(平成22年度公募研究計画)
 地震に先行する地下水変化、ラドン発生、電磁気現象、電離圏擾乱についてはいくつかの報告はあるが、大地震の同一箇所での発生頻度が極めて低いことから、統計的研究は難しい。さらに、発生メカニズムが未解明であるため、上記諸現象の存否ですらいまだ決着はついたとはいえない(e.g Kamogawa, Eos, 2006, 2007, Rishbeth, Eos, 2006, 2007, Cliverd and Rodger, Eos, 2007)。しかしながら、1980年代以降に、地上観測から検知される地震に先行する電離圏擾乱現象は、衛星でも検知可能であると推定されるようになった。衛星ならば全地球的観測が行えることから、わずか数年間で数多くの事例を捉えることが期待でき、統計的検証が行えると思われる。この目的のためにフランスCNRSは、2004年に衛星DEMETERを打ち上げ、6年間弱で良質なデータを蓄積するに至った。DEMETERは電離圏パラメータを測定するために複数のセンサーを搭載しているが、その中でもVLF帯電波測定とイオン密度・温度測定が最も良質なデータを取得している。申請者は、この2つのセンサー開発と解析を担当しているグループ(フランスLATMOS)と2007年度より共同研究を始めた。本申請においては、地震に先行して観測された変動が、測定そのものの問題ではなく、現在の電離圏物理学で知られた現象とは異なることを示し、その変動の統計的検証を行い、得られた結果から、どのようなメカニズムでその変動が生じているかを研究する。

(7)平成22年度成果の概要

本年度で大きく進展したものは、次の2研究である。いずれも、大気圏・電離圏相互作用に起因し、地震先行電離圏擾乱の変動と類似する電離圏変動研究のものである。また、これらは、地震時に先行して観測された変動が地震起因でないことを示すのに重要であると考えられる。
(1) ひのとり衛星とDEMETER衛星で高高度電離圏電子密度・温度の経度構造の太陽活動度依存および年変化を調べた。これまで知られていなかった太陽活動度が高い時期にも活動度が低い時期と同様な構造が存在することを確認した。この経度構造はこれまでの知見を覆すほど大きな構造であることが分かったので、地震が電離圏に与える影響を研究する際にはこの構造の変化を考えることが必要不可欠である。現在この成果は論文査読中(JGR)である。
(2) 2009年7月22日東アジア・太平洋地域で発生した皆既日食時における高高度電離圏電子密度・温度変動についてDEMETER衛星のデータを用い解析を行った。日食の効果における温度低下ならびに電子密度現象が明瞭に見られたが、日食とは関連のない磁気嵐および赤道ジェット電流が日食時に発生したこともあり電離圏変動は複雑であった。しかし本研究により複雑な変動を分解して解釈することができそれぞんの変動の起源見いだすことができた。本成果は現在論文執筆段階である。
さらに地震に先行する電離圏変動の事例解析として四川地震時における電離圏変動を取り上げ、震央より南に地震前に電離圏擾乱があることが分った(NHESS, 2011)。

(8)平成22年度の成果に関連の深いもので、平成22年度に公表された主な成果物(論文・報告書等)

  • Onishi, T., J.-J. Berthelier, and M. Kamogawa, 2011, Critical analysis of the electrostatic turbulence enhancements observed by DEMETER over the Sichuan region during the earthquake preparation, Nat. Hazards Earth Syst. Sci., 11, 1-10, doi:10.5194/nhess-11-1-2011

(9)平成23年度実施計画の概要

本研究では、(1)地震に先行して観測された変動が、測定そのものの問題ではなく、(2)現在の電離圏物理学で知られた現象とは異なることを示し、(3)その変動の統計的検証を行い、得られた結果から、どのようなメカニズムでその変動が生じているかの手順で研究を推進する。現在までの前述(1)~(3)における成果は次の通りである。(1)電子密度データにおいて他の複数の衛星や電離圏モデルとのデータの比較、生波形データなどに立ち返り相対値の範囲かつ大きな範囲ならば評価に耐えうることを示した(現在論文執筆中)。(2)大気圏・電離圏相互作用に起因し、地震先行電離圏擾乱の変動と類似する電離圏変動研究が重要と位置づけ四波構造(JGR査読中)および皆既日食時の電離圏変動(論文執筆中)について研究を行った。(3)統計的検証の前に事例解析として四川地震を取り上げ、震央より南に地震前に電離圏擾乱があることが分った(NHESS, 2011)。。いずれの項目において現在までの成果は論文の査読中ないしは執筆段階であるため2012年度はこれらの受理を目指す。またこれらの論文すべて投稿した段階において(3)における統計的研究に取りかかる。

(10)実施機関の参加者氏名または部署等名

東京学芸大学 物理科学分野 鴨川仁

他機関との共同研究の有無

(11)問い合わせ先

  • 部署名等
  • 電話
  • e-mail
  • URL