課題番号:2912

平成22年度年次報告

(1)実施機関名

公募研究

(2)研究課題(または観測項目)名

臨界現象の概念に基づいた大地震前における臨界点の検知

(3)最も関連の深い建議の項目

    • 2. 地震・火山現象解明のための観測研究の推進
      • (3) 地震発生先行・破壊過程と火山噴火過程
        • (3-1) 地震発生先行過程
          • ア. 観測データによる先行現象の評価

(4)その他関連する建議の項目

  • 2. 地震・火山現象解明のための観測研究の推進
    • (3) 地震発生先行・破壊過程と火山噴火過程
      • (3-1) 地震発生先行過程
        • イ. 先行現象の発生機構の解明

(5)本課題の5か年の到達目標

(本課題は平成22年度公募研究である)

(6)本課題の5か年計画の概要

(平成22年度公募研究計画)
 近年、ギリシャ・アテネ大学物理学科のバロストス教授らは通常の時間スケールとは異なり、イベントが起こるたびに時間が進むナチュラルタイムという新概念を提唱した(Varotsos et al., Phys. Rev. E., 2002)。彼らによれば、この概念を臨界現象に適応させると、2次相転移でいう臨界点の発生時を予測できる。また、この概念は、物性物理学のみならず生物物理や医学にも応用でき、心筋梗基までを予測可能とされている。一方、物質の破壊を臨界現象の物理から見る視点は、地震などの地球科学的現象を含め1980年代から発展してきたが、臨界現象の時間発展自体が難問であるため主破壊である臨界点の予測にまでは研究が至っていない。しかしながら、ナチュラルタイムの概念を用いれば主破壊の発生をも地震活動度から予測できる可能性がある。最近我々は、2000年伊豆諸島群発地震に関してナチュラルタイムの解析が有効であることを示した(Uyeda et al., J. Geophys. Res., 2009)。以上より、本研究においては、従来も精力的に進めてきたナチュラルタイム概念における地震先行検出の可能性を探る。

(7)平成22年度成果の概要

我々はナチュラルタイム解析を用いて地震カタログの統計的性質を調べた。その結果、事象(地震)の順番と強度(マグニチュード)が臨界点の検知において重要な役割を果たすことが分った。さらに、日本の地震カタログを用いて1995年以降のM7以上の大地震である1995年阪神淡路地震、2000鳥取県西部地震、2003十勝沖地震、2004紀伊半島沖地震、2005年福岡県西部地震、2008岩手宮城内陸地震についてナチュラルタイムを用いて地震に先行する臨界点検知を行った。十勝沖、岩手・宮城内陸を除く大地震については従来の研究と同様な臨界点と思われる変化が見られた。
ばね・ブロックモデルを用いて地震の時系列を発生させナチュラルタイム解析を行った。その結果統計的性質は実際の地震カタログとほぼ同様な結果を得た(Varotsos et al., 2010)。

(8)平成22年度の成果に関連の深いもので、平成22年度に公表された主な成果物(論文・報告書等)

  • Uyeda, S., and M. Kamogawa, 2010, Reply to Comment on “The Prediction of Two Large Earthquakes in Greece”, Eos Trans. AGU, 91(18), doi:10.1029/2010EO180004.
  • Varotsos, P. A., N. V. Sarlis, E. S. Skordas, S. Uyeda and M. Kamogawa, 2010, Natural time analysis of critical phenomena. The case of Seismicity, Europhys. Lett., 92, 29002.

(9)平成23年度実施計画の概要

ナチュラルタイム概念は生まれたばかりであり、提唱者であるギリシャのグループもまだ数々の臨界現象にナチュラルタイムの概念が適応できるか否かを調べている段階である。同様に、ナチュラルタイムそのものの物理的基礎についても仮説が提示されている程度であり、世界中の研究者がその仕組みについて議論を行っている段階である。われわれは従来もギリシャのグループとは共同研究を進めてきたが、平成23年度も、引き続き彼らと十分な議論を進め、ナチュラルタイムの原理について研究を深める予定である。またさらに多くの大地震における事例解析を行う予定である。

(10)実施機関の参加者氏名または部署等名

東京大学地震研究所 上田誠也

他機関との共同研究の有無

東京学芸大学物理学科 鴨川仁 東京学芸大学大学院 渡辺泰行

(11)問い合わせ先

  • 部署名等
  • 電話
  • e-mail
  • URL