岩森光教授らの共同研究の成果がプレスリリースされました

東北地方太平洋沿岸域が沈降するメカニズムを解明 -超巨大地震サイクル後半の沈降速度の増加-

物質科学系研究部門の岩森光教授らによる、超巨大地震サイクルに伴う東北地方太平洋沿岸域の沈降メカニズムに関する共同研究の成果論文「Mechanism of subsidence of the Northeast Japan forearc during the late period of a gigantic earthquake cycle(超巨大地震サイクル後半における東北日本前弧域の沈降のメカニズム)」が、4月5日に国際学術誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載されました。

詳細は、京都大学からのプレスリリースをご覧ください。

東北地方太平洋沿岸域が沈降するメカニズムを解明 -超巨大地震サイクル後半の沈降速度の増加-(京都大学プレスリリース資料へ)

2018年インドネシア・クラカタウ火山噴火・津波

 2018年12月22日(現地時間21時頃, UTC14時頃),インドネシア・ジャワ島とスマトラ島に挟まれるスンダ海峡において津波が発生し,クラカタウに近い沿岸域において大きな災害が生じた。噴火活動を続けているアナク・クラカタウ島の南西側が大きく崩壊している様子が明らかになったことから,津波はこの火山島の山体崩壊に伴い発生したと考えられている(PVMBG*1)。
 アナク・クラカタウ島では現在も噴火活動が続いており,その推移が注目される中,今回の崩壊イベントにおける崩壊量や崩壊プロセス,沿岸への津波の伝搬過程,さらにこれらと噴火活動との関係は,日本国内の類似事例の理解を進めるためにも早急に解明する必要があろう。そこで,アナク・クラカタウ島の崩壊と周辺への津波伝搬のシミュレーションを行ったので,その暫定的な結果について報告する。アナク・クラカタウ島は,1883年の巨大噴火で形成されたクラカタウ・カルデラの北東縁に成長した新しい火山島である(Fig. 1, 2)。 崩壊前は,東西2.1 km,南北2.3 kmの大きさで,標高300 mを超える中央火砕丘と山麓にかけて広がる溶岩流からなる島であった(Fig. 3)。山体南西斜面は水深約270 mのカルデラ底まで続き,急峻な地形をなしていた。今回の崩壊はこの南西側で発生し,山頂を含む島の約半分が失われたと考えられる。

詳細については,火山噴火予知研究センターのページをご参照ください.

竹内准教授,川勝教授らにより,海洋アセノスフェアの「柔らかさ」のその場観測に成功

海洋アセノスフェアの「柔らかさ」のその場観測〜アセノスフェアを観測する新たな手段〜

竹内 希 (東京大学地震研究所 准教授)
川勝 均 (東京大学地震研究所 教授)
塩原 肇 (東京大学地震研究所 教授)
一瀬 建日(東京大学地震研究所 助教)
杉岡 裕子(神戸大学理学研究科 准教授)
伊藤 亜妃(海洋研究開発機構地球深部ダイナミクス研究分野 技術研究員)
歌田 久司(東京大学地震研究所 教授)

●独自開発した計測技術を駆使し,海洋リソスフェア及びアセノスフェアの柔らかさの指標である,地震波減衰特性の精密特性を実現した.

●リソスフェアは減衰が弱く,アセノスフェアは減衰が強いことに加え,地震波の周波数により減衰の強さがどう変わるか初めて解明した.

●岩石実験の結果との対比により温度や状態を議論できるようになり,新たなアセノスフェアのモニタリング手段を獲得した.

詳細:プレスリリース資料 (PDF)

IceCubeで観測されたTeV(テラ・エレクトロンボルト)領域のエネルギーを持つニュートリノの地球による吸収を用いた反応断面積測定

保科 琴代 (IceCube Collaboration)

Nature 551, 596–600 (2017)  doi:10.1038/nature24459
https://www.nature.com/articles/nature24459
https://www.youtube.com/watch?v=OdWZA5UxmOk

ニュートリノは物質を構成する基本粒子のうち、レプトンに属し、質量は大変軽く(現在は上限値がわかっているのみ)、電荷を持たず、物質とは弱い相互作用でのみ反応するという特殊な粒子です。弱い相互作用では、物質中で反応が起きると、一部はそのニュートリノと対になる荷電レプトン(電子、ミューオンなど)に変化した上で、物質に全てのエネルギーを吸収されて消滅します。残りのニュートリノは、エネルギーの一部を反応地点に落としたあと、さらに先に進んでいきます。

ニュートリノの反応断面積の理論値は、ニュートリノのエネルギーが増加するにつれ増加しますが、実験的な測定は歴史的に人工的に加速器によって生成できるエネルギーによって制限され、これまで400GeV(ギガ・エレクトロンボルト)が上限でした。本研究では、大気中で宇宙線と空気分子の衝突によって生成される大気ニュートリノおよび宇宙から飛来する宇宙ニュートリノが、地球によってどのように吸収されるかを調べることで、数十TeV〜数百TeVのニュートリノの反応断面積を測定することに世界で初めて成功しました。また、本研究で初めて、高エネルギーニュートリノの地球による吸収現象が観測されました。

ニュートリノの反応断面積を調べるには、地球の物質量が、ニュートリノが通過する経路に従って異なることを用います。同じエネルギーのニュートリノでも、全物質量が大きい経路(Zenith angle 180 deg)を経由したものと、全物質量が小さい経路を経由したもの(たとえばZenith angle 100 deg)では、ニュートリノが生き残る数が異なります(図b)。この吸収分布を、地球の質量分布とさまざまなニュートリノの反応断面積を仮定してシミュレーションします。最後に、これらのシミュレーションとデータと比較することで、もっともデータをよく説明する反応断面積を得ます。

本研究では、2010年にIceCubeニュートリノ観測施設で収集された10784例のニュートリノ事象を用いました。これらをシミュレーションと比較した結果、標準理論が予測する反応断面積に対するスケールパラメターとして、1.30+0.21-0.19 (統計誤差) +0.39-0.43 (系統誤差) の値を得ました。いくつかの標準理論を超えた反応断面積モデルでは、エネルギーが高くなるにつれ反応断面積が非線形に大きくなることが予測されていますが、それを強くサポートするような増加傾向は見られませんでした。

IceCubeでは現在7年分のデータがあり、さらに測定精度を上げた観測が進んでいます。また、本研究により、すくなくとも数百TeV領域までのニュートリノの反応断面積は誤差の範囲内で標準理論で説明できることがわかりました。この結果をふまえ、標準理論による反応断面積を既知のものとして、逆に地球の内部密度構造を測定する研究が進行中です。いずれの研究も、IceCubeの将来計画であるIceCube Gen2、KM3-Net計画のPhase 2.0などでニュートリノ事象の観測統計数を上げることにより、さらなる発展が期待されています。

2013年11月21日西之島の噴火活動

ウェブサイト立ち上げ:2013年11月21日

最終更新日:2017年4月28日

2017年4月18日に再び噴火があり、このページで情報を随時更新しております。

2013年11月21日小笠原諸島の西之島周辺で噴火活動が起きました。


西之島2017年噴火による溶岩流の分布と推定される噴出率(続報) (前野深)
西之島の噴火活動(2017年4月25日上空観察) (前野深)
西之島2017年噴火による溶岩流の分布と推定される噴出率 (前野深)
ひまわり8号AHI画像による西之島の活動再活発化の検出(金子隆之)
西之島の噴火活動 2017年4月21日上空観察(中田節也)
2017年4月18日からの西之島の噴火活動について(武尾実)

2016年11月7日西之島調査の動画を公開
2016年10月26日西之島調査の概要について
2016年10月11日【プレスリリース】小笠原諸島西之島の火山成長過程と生物相成立過程の調査を開始
2015年7月15日「なつしま」から観察した西之島の噴火活動状況(前野深)
2015年3月15日西之島における噴火活動について[続報](前野深)
2015年3月4日西之島の火山活動(中田節也)
2015年2月5日までの西之島噴火活動について[続報](前野深)
2014年12月23日までの西之島噴火活動について[続報](前野深)
2014年12月14日西之島における噴火活動について[続報](前野深)
2014年12月3日西之島火山の活動–父島での空振モニタリングで判明(市原美恵・西田究)

2014年11月20日西之島における噴火活動について[続報](前野深)
2014年11月13日西之島の噴火活動(観察者:中田節也)
2014年10月24日西之島における噴火活動について[続報](前野深)
2014年9月5日西之島における噴火活動について[続報](前野深)
2014年8月18日西之島における噴火活動について[続報](前野深)
2014年7月14日父島で捉えた西之島火山の活動に伴う空振(市原美恵)
2014年7月8日西之島における噴火活動について[続報]前野深
2014年5月27日西之島における噴火活動について[続報](前野深)
2014年1月16日西之島における噴火活動について[続報](前野深)
2014年01月10日西之島における噴火活動について(前野深)
2013年12月26日12:30-13:00西ノ島の火山活動(観察者:中田節也)
2013年12月25日西之島2013年活動の航空機観察(観察者:金子隆之)
2013年12月24日新島成長過程[続報](観察者: 前野 深)
2013年12月20日12:20-13:05上空観察(観察者: 前野 深)
2013年12月17日新島成長過程[続報](前野 深)
2013年12月13日 新島成長過程(前野 深)
2013年11月24日午前11:20-12:05 上空観察(観察者:中田節也)
2013年11月21日9時13分~31分 上空観察(観察者:金子隆之)


2017年4月28日

西之島2017年噴火による溶岩流の分布と推定される噴出率(続報)

概要: 西之島の噴火により流出した溶岩の分布,体積,噴出率について,4月25日に実施した上空からの観察結果1)をもとに解析した。溶岩流はスコリア丘北側の3ヶ所の火口から西側に向けて流出し,低所を埋めながら海岸に向けて流れている(図1)。分布面積はおよそ24万m2(火口を除く)である。4月21日の観察結果2)も含めたこれまでの面積,体積,噴出率の推移はTable 1のようになる。なお,溶岩による地形の被覆状況から,内陸部での溶岩の厚さは平均2.5-5 m,海岸に流出した部分については平均10 mと仮定している。これらの値には大きな誤差が含まれている可能性があるが,それを考慮したとしても流出した溶岩の総体積はすでに約100万m3に達していると考えられる。4月21日から25日までの4日間の平均噴出率は,21日までの3日間の噴出率よりやや増加し,およそ19万m3/day(5-6トン/秒)と推定される。この値は2013-2015年噴火時の平均噴出率と同程度である(図2)。噴出率の変化は活動推移を予測する上で重要であり,今後注視していく必要がある。

図1 緑色部分が4月25日までに流出した溶岩のおよその分布。黄色は4月21日までの分布。赤丸は推定火口位置。国土地理院による2016年7月25日の西之島の正斜画像3)を使用させて頂いた。

Table 1 溶岩流の分布面積,推定される体積および噴出率

図2 2013-2015年噴火時の噴出率の推移(黒はトータル,緑は陸上部分のみ)と今回の噴火の噴出率(赤)との比較。

[参考資料]
  1. 火山噴火予知連絡会資料 西之島の噴火活動(2017年4月25日上空観察)(2017年4月25日)(東大震研)
  2. 火山噴火予知連絡会資料 西之島の噴火活動(2017年4月21日上空観察)(2017年4月21日)(東大震研)
  3. 国土地理院による西之島の噴火活動関連情報のHP: http://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html

 

(2017年4月28日火山噴火予知研究センター前野)


2017年4月26日

※報道関係の方へ: 写真の引用は,読売新聞社にお伺いください。

西之島の噴火活動(2017年4月25日上空観察)

概要: 西之島の噴火活動を上空より観察した(読売新聞社の協力による)。観察日時は,4月25日13:55-14:25のおよそ30分間である。スコリア丘山頂に2つの小火口,北側山腹・山麓に3つの溶岩流出口が存在し,新たな溶岩流は西之島の西側を広く覆っている(写真1)。

 スコリア丘山頂の小火口のうち南側のものは活発で,ストロンボリ式噴火を繰り返し発生している(写真2)。数秒~数10秒ごとに灰褐色噴煙と共に火山弾を激しく噴出し,弾道を描いて飛散するものの中には長径数mを超えるものも含まれる。一方,山頂北側にも小火口が存在するが,こちらは不活発であり,灰色噴煙を伴う爆発が観察中に一回観測されたのみである(写真3)。噴火前のスコリア丘山頂のすり鉢状火口は,今回の活動による噴出物でほぼ埋まり,火砕物が降り積もることにより小火砕丘を形成し高度を増している。

 溶岩流はスコリア丘北側山腹・山麓に形成された3箇所の溶岩流出口(このうち山麓に近い2箇所は21日に観察された流出口1)から西側に向けて流出し(写真3),2014-2015年に噴出した溶岩を広く覆っている。西側では溶岩先端は海に達している。幅およそ200 mに渡り西海岸を横切り海に流入し,水蒸気を上げて前進している(写真4)。旧島は新たな溶岩と接し,一部は新たな溶岩に覆われているものの大部分は残存している。溶岩流は南西側でも先端が海岸付近まで達し,海に向かい進んでいる(写真5)。

 ストロンボリ式噴火は継続し,山頂すり鉢状火口は埋まりさらに高度を増しつつある。また,山麓・山腹からの溶岩流出は継続し,その流域面積は22日より大きく拡大していると考えられる。これらのことから,西之島の活動はこの4日間で衰えておらず,活発な状態にあるといえる。

写真1 スコリア丘北側山腹・山麓から流出した溶岩流が西側を広く覆う。(読売新聞社機より前野撮影)

写真2 スコリア丘山頂でのストロンボリ式噴火。元のすり鉢状火口内のやや南寄りに小火口が形成され,火砕丘を成長させている。(読売新聞社機より前野撮影)

写真3 スコリア丘および北側溶岩流出口の状況。白矢印は山頂小火口,黄色矢印は山腹・山麓の溶岩流出口。(読売新聞社機より前野撮影)

写真4 西海岸に達した溶岩流。およそ200 mの幅で海に流入し,島を拡大し始めている。(読売新聞社機より前野撮影)

写真5 南西海岸に達し,海に迫る新溶岩流(最も大きい舌状のローブ,白矢印)。(読売新聞社機より前野撮影)

[参考資料]
  1. 火山噴火予知連絡会資料 西之島の噴火活動(2017年4月21日上空観察)(2017年4月21日)(東大震研)
謝辞: 観測の機会を与えて頂いた読売新聞社,日本テレビには感謝致します。

 

(2017年4月26日火山噴火予知研究センター前野)


2017年4月22日

西之島2017年噴火による溶岩流の分布と推定される噴出率

概要: 西之島で再開した噴火により流出した溶岩の分布,体積,噴出率について,21日に実施した上空からの観察結果1)をもとに解析した。溶岩流はスコリア丘北側の2ヶ所の火口から西側に向けて流出し,低所を埋めるように流れている(図1)。その分布面積はおよそ10万m2(火口を除く)である。溶岩による地形の被覆状況から,溶岩は高い流動性を有しており,層厚はせいぜい平均2-4 m 程度と考えられる。したがって流出した溶岩の体積は20-40万m3と推定される。流出の開始を地震活動が活発化した18日8時頃2)と仮定すると,およそ3日間の平均噴出率は約10万m3/day となる。この値は,2013-2015年噴火時の活動初期や2014年の低調な頃と同程度の噴出率である(図2)。噴出率の変化は活動推移を予測する上で重要であり,今後注視していく必要がある。

図1 黄色部分が今回の活動で流出した溶岩の分布。黄色丸は推定火口位置。西之島の全体像はWorldView-3による2016年5月2日の画像。

図2 2013-2015年噴火時の噴出率の推移(黒はトータル,緑は陸上部分のみ)と今回の噴火の噴出率(赤)との比較。

[参考資料]
  1. 火山噴火予知連絡会資料 西之島の噴火活動(2017年4月21日上空観察)(2017年4月21日)(東大震研)
  2. 火山噴火予知連絡会資料 2017年4月18日からの西之島の噴火活動について(2017年4月21日)(東大震研)

 

(2017年4月22日火山噴火予知研究センター前野)


2017年4月21日

ひまわり8号AHI画像による西之島の活動再活発化の検出

ひまわり8号 Advanced Himawari Imager(AHI)画像によって,西之島の活動再活発化が捉えられました(図1).ひまわり8号は全球を10分毎という高頻度で観測することができます.

4月17日2時50分UTC (日本時間17日11時50分)に,最初の熱異常が認められ(図2の矢印),この頃噴火が始まったと推定されます.4月19日の7時00分UTC (日本時間19日16時00分)頃から熱異常が増加し(図3の矢印.3.9 umのチャンネルで顕著に見えます),現在も高い状態が続いています(図4).(4月20日15時40分現在)

図1 熱異常の時間変化:年チャート(2017年)
図2 ひまわり8号画像: 
2017年04月17 日- 02:50 UTC(幅は約200 ㎞)
図3 熱異常の時間変化:日チャート( 2017年4月19日)1.6 um, 2.3 umの波長域 では,昼の時間帯は太陽光の影響で観測困難となります.
図4 ひまわり8号画像: 2017年04月20 日- 04:20 UTC
(幅は約200 ㎞)

 

(2017年4月20日火山噴火予知研究センター金子)


2017年4月21日

※ 報道関係の方へ:写真の引用については,朝日新聞社にお伺いください.

西之島の噴火活動(2017年4月21日上空観察)

2017年4月18日頃に噴火活動を再開したと考えられる西之島において、上空観察を4月21日午前中実施した。西之島では、活発な噴火活動が継続しており、島中央部にある火砕丘付近から二つの溶岩が流下しているのが確認され、溶岩流は流域面積を拡大していた。

観察結果は以下のように要約される。
1.火砕丘の頂部にある火口は新しい溶岩と思われる噴出物で満たされていた。
2.火砕丘の中央北寄りの複数箇所から火山灰噴煙が数十秒おきに立ち上り、火山弾が上空約100m程度に噴き上がっていた。これらの噴火地点を中心として黒っぽく盛り上がり、新たに低い火砕丘が形成されているように見える。
3.元の火砕丘の上斜面北西側に、溶岩の流出口が位置しており、赤熱と青白いガスの放出が認められた。溶岩は斜面を下って、火砕丘の西側裾野を巻いて移動し、さらに南側に流れて扇状に広がっていた。
4.また、火砕丘の北側裾野には別の溶岩流出口があり、そこでも盛んに青白いガス放出を伴って赤熱が見られた。溶岩はそこから西に流れながら途中で複数に分岐し、一部は旧島の脇を通って海岸砂浜に達していた。

観測日時:2017年4月21日(金)午前9時15分〜9時40分
使用航空機:朝日新聞社機あすか

写真1:北側上空から見た西之島(朝日新聞社機から中田撮影)
写真2.南西側から見た火砕丘。火口内は溶岩と思われる噴出物に埋め尽くされている。中央部に火山灰を放出する火孔があり赤熱が認められる。写真左側奥に溶岩(西側へ向かう流れ)の出口が認められる(赤熱し火山ガスが出ている)。その手前に斜面を流れ下る溶岩流が認められる。(朝日新聞社機から中田撮影)
写真3.二筋の溶岩流の全景。西側の流れ(写真中央から右)は先端で3つに分岐し旧島の脇を流れ海岸の砂浜に到達。南側への流れ(写真上方向)も写真中央で幾つかに分岐。(朝日新聞社機から中田撮影)

謝辞:観測の機会を与えていただいた朝日新聞社には感謝します。

(火山噴火予知研究センター:中田節也)


2017年4月21日

2017年4月18日からの西之島の噴火活動について

海上保安庁による上空からの観測で,4月20日14時過ぎに西之島の噴火が確認されたが,地震研究所が昨年10月に西之島の旧島に設置した地震・空振観測データから,この噴火に至る活動の推移を調査した.その結果を以下にまとめる.

図1は西之島の観測点から伝送されてくる地震記録のスペクトログラムの4月1日〜19日までのデータを示している.4月17日11時頃から一群の震幅の大きなシグナルが発生し始め,次第にその頻度が増大していく様子が確認できる(赤丸で囲った部分 ).この活動はそれ以前には見られない活動である.さらに,18日8時頃から連続的続くシグナルが確認でき,それは19日も一日中継続している.

図1

そこで,4月17日〜18日の地震・空振データをダウンロードして,これらのシグナルの実態を確認した.図2及び図3に4月17日と18日のそれぞれ一日分の地震記録と空振記録を示す.17日6時過ぎに高周波の地震の一群が発生し,その後,11時頃から低周波の相似地震の一群が発生し始めた(図2).

図2

この17日に発生した相似地震と空振記録を図4に示す.この低周波相似地震に伴った空振は確認できないので,これらの活動には噴火が伴っていなかったと考えられる.この相似な低周波地震の発生頻度は18日に向けて徐々に増大し,18日に入ると頻発するようになる(図3).

図3

18日の相似地震と空振記録の例を図5に示す.18日の時点でも,この活動に伴う空振は確認できなかった.このような低周波の相似地震群の発生は,2011年新燃岳噴火のマグマ湧出期にも確認されており,その後の推移と合わせて判断すると,この時期に火道内部をマグマが上昇,充填したのではないかと推定される.ひまわり画像による最初の微弱な熱異常は17日11時50分頃に確 認されており,低周波地震の発生とほぼ一致していることも上の 推定を示唆する.

図4
図5

その後,7時37分には最初の明瞭な空振が観測され,それに引き続く形で微動が発生している(図6).この空振の振幅は17Paあり,これが最初の噴火イベントではないかと考えられる.微動は1Hzから2Hzの間に卓越周波数を持ち,その卓越周波数が短時間の間に大きく遷移する特徴を持っている.この微動のスペクトログラムを図7に示す.この微動が収まった6分後の8時0分に約48Paの空振を伴う噴火イベントが発生した.このときの地震と空振記録を図8に示す.この噴火イベントの後,図9に示すような断続的な微動波群がほぼ連続して発生し続ける状態に遷移した.この活動は19日まで継続しており,この時期に溶岩流が火口から溢れ出たのではないかと推察される.

図6
図7
図8
図9

(火山噴火予知研究センター:武尾実)


2016年11月7日西之島上陸調査の動画


 

火山噴火予知研究センターのHPでも情報を更新しています。

火山噴火予知研究センター: 2013-2014年西之島の噴火について【最終更新日:2014年8月17日】


 

2015年7月15日

(火山噴火予知研究センター:前野深)

「なつしま」から観察した西之島の噴火活動状況

概要:

2015年6月11〜21日に実施されたJAMSTEC研究船「なつしま」による研究航海(NT15-E2*)中,船上から西之島の噴火活動状況について観察した.西之島は中央スコリア丘でストロンボリ式噴火を数10秒〜1分程度の間隔で継続するとともに,溶岩流がスコリア丘東山腹に形成された小火口丘の麓から流出し,島の南東端で海に達して島を拡大し続けている.噴煙下を航行した際には,船上に降灰が認められた.火山灰は,さまざまな形態を有する新鮮な黒色~褐色ガラスにより構成され,ストロンボリ式噴火を引き起こしている低粘性のマグマに由来するものである.西之島の噴火活動は依然として活発な状況にある.

 

* 研究の概要については下記ホームページを参照:
「海洋調査船による西之島および周辺海域の学術調査研究~海底面の撮影や地形調査、試料の採取、西之島火山の観察などを実施~(http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20150715/

 

西之島の状況:

「なつしま」は西之島から4.5 km以上離れた海域に6月13〜18日の期間滞在した.その間,深海探査機ディープ・トウを用いた海底地質調査および試料採取を行い,ディープ・トウ潜航の合間に船上から西之島を観察した.調査期間中,ストロンボリ式噴火と溶岩流出は絶えることなく,マグマ供給は依然として継続していることが確認された.船の位置,同じ位置から撮影した島の形状,島の輪郭(5月に海上保安庁が報告)をもとに中央火口丘の標高を見積もったところ,140-150 m程度であった.このことから,国土地理院により標高137 mと計測された3月1日以降,中央火口丘はやや高くなったと考えられる.溶岩流はスコリア丘東山腹に形成された小火口丘(標高約100 m)の麓から南方向に流出し,緩斜面を形成して海に達し,島を拡大し続けている.活動的な中央〜南東域を除き,溶岩流は停止しているように見え,海蝕崖や砂州の発達が認められた(写真1).旧島は西側の一部に残されており,カツオ鳥とみられる海鳥が飛来している様子が観察された.

写真1 南東側から撮影した西之島(6月15日12:22).東側山腹には小丘が成長し,南東端では溶岩流が海に流出して水蒸気の白煙を上げている.
写真1 南東側から撮影した西之島(6月15日12:22).東側山腹には小丘が成長し,南東端では溶岩流が海に流出して水蒸気の白煙を上げている.
西側から撮影した西之島旧島(6月15日14:05).砂州が発達し海とは隔絶している.
西側から撮影した西之島旧島(6月15日14:05).砂州が発達し海とは隔絶している.

ストロンボリ式噴火:

スコリア丘の山頂火口(直径50-60 m)から数10秒〜1分程度の間隔で濃い茶褐色の噴煙を勢い良く上げている.噴煙には弾道放出物が伴われることが多い.弾道放出物は,大きいものは長径数 m,固化したマグマだけでなく流動性のある状態,すなわちスパッター(溶岩のしぶき状の塊)として噴出しているものもあることが映像や画像から判読できる(写真2).噴煙の継続時間は数十秒程度で,まず淡褐色の弱い噴煙が生じ,その直後に勢いのある濃い茶褐色噴煙が上昇,そして徐々に弱まりながら薄い褐色へと変わり沈静化するという推移が一般的である.上昇速度が早い勢いのある噴煙は概ね1分以内の継続時間で,比較的長い静穏の後に起こることが多い.そのような,間欠的で勢いのある噴煙には多数の弾道放出物が伴われる.弾道放出物は,小さいものは火口上100 m程度まで上昇し,スコリア丘中腹まで到達する場合があるが,大きいものを含め多くは火口近傍に着弾するか,火口内に戻っている.夜間には噴煙の根本が赤熱し,灯台のような様相を呈している.赤熱した比較的大きな弾道放出物が飛散する様子は,肉眼でも観察することができた.

調査中,噴煙は常時南西からの風の影響を受け,ほとんどの場合上昇しつつ北東方向へ流れていた.噴煙高度は数100〜500 mで,風の強度により高度が異なっているようであった.噴出直後には濃い褐色噴煙であるが,島から離れるにつれて火山灰が噴煙から沈降・離脱し,噴煙の色は徐々に薄れて白色となる.噴煙軸付近では,西之島から4.5 km以上離れた場所ではほぼ白色の噴煙となっているが,黒色火山灰の降灰や火山ガス臭が認められた.

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写真2(左上)ストロンボリ式噴火を繰り返し,勢い良く噴煙を上げるスコリア丘.手前は海に流れ込み水蒸気の白煙を上げる溶岩流.スコリア丘の東麓(右手)に溶岩流の給源と考えられる小火口丘が認められる.南側から撮影(6月15日12:26).(右上)噴火に伴う濃褐色噴煙と弾道放出物.噴煙は西からの風の影響を強く受けている(6月17日6:19).(左下)弾道放出物の拡大(6月15日14:14).最大長径は数m程度.不規則な形状を示し,溶岩のしぶき状の塊(スパッター)として噴出しているものもある(右下)南西から撮影した夕暮れ時の噴煙.噴煙の根本が赤熱している(6月16日18:58)

 

溶岩流:

西之島の南東端では溶岩流が海に流入し,水蒸気の白煙を上げている(写真3).スコリア丘東側には小火口丘(標高約 100 m)が形成されており,火口付近からは白煙が立ち上がっている.小火口丘の北側は火口壁の一部を構成し,明瞭な地形的高まりとして認められるが,小火口丘南側から南東海岸にかけては緩い斜面が続き,途中に白煙が上がっている箇所が複数ある.地形的特徴や白煙の分布状況,赤外カメラによる熱画像をもとにすると,溶岩流は小火口丘の麓,標高70-80 m付近から流出し,南東斜面を流下して島の南岸で海に流れ出ている.

南東端で海に流入する溶岩流は,水平距離にしておよそ 800 mに渡り分布しているが,水蒸気を上げている部分は局所的で10カ所以上ある.溶岩流は海岸付近では複数のローブ(舌状・袋状の構造)に分岐しており,それぞれの先端が海水と接触し水蒸気を上げている.水蒸気は時折激しく上がることがある.夜間は海に流入する溶岩ローブの先端が赤熱し,その分布が明瞭に認識できる(写真4).南東部の活動的な溶岩流では,先端部以外の場所も,高解像度写真では局所的に陽炎のように像が揺らいで観察され,赤外カメラでも高温を示した.一方それ以外の古い溶岩流も赤外カメラでは周囲大気よりもやや高い温度を示した.

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写真3(左)島の南東端で海に流入する溶岩流(6月15日13:49).(右)スコリア丘東山腹に形成された小火口丘とその麓から南東に流れ出ている溶岩流(6月15日12:25)

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写真4 赤外カメラで撮影した西之島.(左)南東から撮影(6月16日19:56).(右)南西から撮影(6月17日19:43).海に流出している溶岩流の先端部と火口から上昇する噴煙の様子が高温部として認められる.南東側ではスコリア丘東麓から続く内陸部の溶岩も,先端ほどではないが高温を示す.南西側からの画像では,古い溶岩も周囲大気よりやや高い温度を示す.

 

火山灰:

6月13~17日の間の複数回,噴煙下を航行するタイミングを見計らい船橋および船首甲板部に火山灰採取用トレイを設置し,火山灰を採取した.火山灰は,長径~数100 μm 以下で光沢のある透明度の高い褐色ガラス,黒色ガラス,結晶片,岩片により構成される.ガラス質火山灰は,平滑な破断面を有するもの,ガラスが引き延ばされたことによる鋭利な部分や滑らかな曲面を有するもの,Bubble wall型のもの,また,ごくまれに極度に引き延ばされて毛髪状の形態となっているものが存在する.これらはいずれも低粘性マグマによるストロンボリ式噴火に典型的に認められる火山灰の特徴であり,現在活動中のマグマに由来する本質ガラスと考えられる.また,多くの弾道放出物が火口内に戻っている様子(Fall back)が観察されていることから,火口内でリサイクルされたガラス片,岩片も同時に噴出していると考えられる.

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図 1 (左上) 火山灰の全体像. (右上) 火山灰粒子の拡大.透明度のある褐色~黒色粒子で発泡度は多様である. (左下) いくつかの特徴的な形態を有する火山灰粒子.小目盛100 μm,大目盛 1 mm.(右下) 褐色ガラス質粒子の拡大.顕著なガラス質光沢を有する.

 

 


2015年3月14日

(火山噴火予知研究センター:前野深)

西之島における噴火活動について(続報)

概要: 西之島の噴火活動で新たに形成された部分の面積,噴出量,噴出率について2015年2月27日 (JST) までの状況についてまとめた.島の大きさは東西2 km 南北1.8 km,面積はおよそ 2.6 km2 である.溶岩流の北側への延伸は止まったものの,2月以降拡大が再開した東側ではゆっくりと島の成長は続いており,依然として溶岩が供給されている.中央火砕丘の成長も継続しており,火口直径は90 m ほどになっている.噴出量はおよそ1億 m3,噴出率は15-20万 m3/day と推定される.島の成長は鈍化しているが,これは溶岩が徐々に深くなる斜面を埋め立てているためであり,溶岩流出率は大きくは変化していない.噴火活動は依然として活発と推定される.噴出率,火口形状,溶岩表面構造の時間変化は今後の活動推移を予測する上で重要であり,引き続き注視していく必要がある.

[面積変化]

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図2 東側溶岩ローブ群および中央火口の様子.上図が2月5日(JST),下図が2月27 日(JST).中央火砕丘の火口径は直径 90 m 程度,火口縁の輪郭がはっきりとしてきた. TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ).

 

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図3 西之島の新たに形成された部分の面積変化(左)および面積増加率(右).エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.

 

[噴出量および噴出率]
図4 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2,3,7,12 月)とその前後の経過等をもとに推定されるおよその平均溶岩高さと山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.
図4 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2,3,7,12 月)とその前後の経過等をもとに推定されるおよその平均溶岩高さと山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.
図5 期間毎の平均噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図4の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.
図5 期間毎の平均噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図4の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

 

 

[参考資料・ホームページ]
  • 海上保安庁水路部 (1993) 5万分の1沿岸の海の基本図海底地形地質調査報告書「西之島」, p. 47.
  • 国土地理院における西之島付近の噴火活動関連情報: http://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html
  • 株式会社パスコ 西之島噴火活動モニタリング: http://www.pasco.co.jp/disaster_info/141118/

 


2015年3月6日

(火山噴火予知研究センター:中田節也)

西之島の火山活動(2014年3月4日)

  • 観測日:午後2時〜2時半。午後6時10分〜6時45分。
  • 途中硫黄島で給油。
  • 使用航空機:朝日新聞社機「あすか」Citation Encore
  • 天候:晴れ。南西の風。

 

噴火開始から1年3ヶ月を過ぎた西之島では,活発な噴火活動が続いている。これまで溶岩が中央やや南に位置する火砕丘の麓から方向を変えて流れ続け,島の面積はしだいに拡大してきた。観察中は,その火砕丘からストロンボリ式噴火が連続的に発生し,爆発で吹き飛んだ溶岩片(火山弾およびスコリア)が火口の周囲に堆積し続けていた。火山灰噴煙は火口の上約百m上昇し,白色となって,そのまま数km北東に流れている。一方,溶岩は溶岩チューブシステムを使って東側に流れそのまま海に流入し,海岸線数百mにわたって白色の水蒸気が上昇している(写真1,2)。そこでは,新しい溶岩が海岸の手前数百mのところで,すでに固まった溶岩の表面を複数箇所で突き破り,そのまま地表を流れて海に突っ込んでいる。新しい溶岩流は両側に堤防が発達し、中央をより暗色で表面ががさがさの溶岩が占めている。夜間は新しい溶岩部分だけが赤熱している(写真3,4)。

中央の火砕丘では,ストロンボリ式噴火が継続しており,数秒から数十秒間隔で爆発が繰り返して起こり,数秒間隔で爆発が連続する(写真5)。火砕丘の頂部はすり鉢状に凹んだ火口であり,火口の表面はスコリアや火山弾が覆っており,溶岩は直接火口底まで出現していない。

※ 報道関係の方へ:写真の引用については,朝日新聞社にお問合せください

写真1:東側から見た西之島。左上にある中央火砕丘ではストロンボリ式噴火を繰り返しており,その裾野から樹枝状の溶岩流が四方に広がる。東側では溶岩が海に注いでいる。
写真1:東側から見た西之島。左上にある中央火砕丘ではストロンボリ式噴火を繰り返しており,その裾野から樹枝状の溶岩流が四方に広がる。東側では溶岩が海に注いでいる。
写真2:東側で海に注ぐ溶岩流。溶岩堤防に囲まれた新鮮でごつごつした表面の溶岩が海中に没し,水蒸気を上げている。
写真2:東側で海に注ぐ溶岩流。溶岩堤防に囲まれた新鮮でごつごつした表面の溶岩が海中に没し,水蒸気を上げている。
写真3:ストロンボリ式噴火を繰り返す中央火砕丘と海に注ぐ溶岩流が夜間にはよくわかる。途中から溶岩が地上に現れそのまま海に注ぐ溶岩チューブシステムの様子がよく分かる。北東側から撮影。
写真3:ストロンボリ式噴火を繰り返す中央火砕丘と海に注ぐ溶岩流が夜間にはよくわかる。途中から溶岩が地上に現れそのまま海に注ぐ溶岩チューブシステムの様子がよく分かる。北東側から撮影。
写真4:海に注ぐ溶岩流の夜間の様子。
写真4:海に注ぐ溶岩流の夜間の様子。
写真5:ストロンボリ式噴火で飛び散る噴石。
写真5:ストロンボリ式噴火で飛び散る噴石。

 


 

2015年2月13日

(火山噴火予知研究センター:前野深)

西之島における噴火活動について(続報)

概要: 西之島の噴火活動で新たに形成された部分の面積,噴出量,噴出率について2014年2月5日 (JST) までの状況についてまとめた.島の大きさは東西2 km 南北1.8 km,面積はおよそ 2.5 km2 である.昨年9月以降続いていた溶岩流の北側への延伸は止まったものの,溶岩供給は継続しており,東側に新たな溶岩ローブを形成し,拡大を続けている.新たな溶岩は傾斜20度程度の斜面にせり出し始めており,その先端は最も深い部分で水深100 m近くに達していると考えられる.一方中央火砕丘も成長し続けており,すり鉢状の大火口内の中央にはさらに凹部が認められ,拡大を続けている.噴出量は9500 万±1000 m3,噴出率は一時低下したものの再び増加し,およそ30万 m3/day と推定される.島の成長は一時鈍化したものの,溶岩流出と中央火砕丘の成長は衰えておらず,活発な活動は依然として続いている推定される.噴出率,火口形状,溶岩表面構造の時間変化は今後の活動推移を予測する上で重要であり,引き続き注視していく必要がある.

 

[面積変化]
図1 西之島の新たに形成された部分の輪郭の変化.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) をもとに作成している.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) の海底地形図をもとにしている.
図1 西之島の新たに形成された部分の輪郭の変化.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) をもとに作成している.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) の海底地形図をもとにしている.

 

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図2 北側溶岩ローブ群および中央火口の様子.左上図が1月14日(JST),右上図が2月5 日(JST).中央火砕丘の火口径は直径 80 m 程度,火口内の影部分(凹部)が拡大している.下図は新たに東側に流出している溶岩ローブ群(2月5 日 JST).TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ).
図2 北側溶岩ローブ群および中央火口の様子.左上図が1月14日(JST),右上図が2月5 日(JST).中央火砕丘の火口径は直径 80 m 程度,火口内の影部分(凹部)が拡大している.下図は新たに東側に流出している溶岩ローブ群(2月5 日 JST).TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ).

 

図3 西之島の新たに形成された部分の面積変化.エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.
図3 西之島の新たに形成された部分の面積変化.エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.
図3 西之島の新たに形成された部分の面積増加率.エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.
図3 西之島の新たに形成された部分の面積増加率.エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.

 

[噴出量および噴出率]
図4 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2,3,7,12 月)とその前後の経過等をもとに推定されるおよその平均溶岩高さと山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.
図4 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2,3,7,12 月)とその前後の経過等をもとに推定されるおよその平均溶岩高さと山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.
図5 期間毎の平均噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図4の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.
図5 期間毎の平均噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図4の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

 

[参考資料・ホームページ]
  • 海上保安庁水路部 (1993) 5万分の1沿岸の海の基本図海底地形地質調査報告書「西之島」, p. 47.
  • 国土地理院における西之島付近の噴火活動関連情報: http://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html
  • 株式会社パスコ 西之島噴火活動モニタリング: http://www.pasco.co.jp/disaster_info/141118/

 


 

 2015年1月5日

(火山噴火予知研究センター:前野深)

西之島における噴火活動について(続報)

概要: 西之島の噴火活動で新たに形成された部分の面積,噴出量,噴出率について2014年12月23日 (JST) までの状況についてまとめた.島の大きさは東西1.7 km 南北1.8 km,面積はおよそ 2.3 km2 である.溶岩流の北西側への延伸,溶岩膨張割れ目の発達は継続しており,溶岩は北側全域に供給されていると考えられる.また西側へ流出した溶岩により,残されていた旧島は埋没寸前になっている. 噴出量は8000~9000 万 m3,噴出率はやや減少し,10-20万 m3/day と推定される.島の成長は鈍化しているものの,中央火砕丘の大火口は再び拡大して 80 m 程度になっており,活発な活動は継続していると推定される.噴出率,火口形状,溶岩表面構造の時間変化は今後の活動推移を予測する上で重要であり,引き続き注視していく必要がある.

[面積変化]
図1 西之島の新たに形成された部分の輪郭の変化.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) をもとに作成している.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) の海底地形図をもとにしている.
図1 西之島の新たに形成された部分の輪郭の変化.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) をもとに作成している.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) の海底地形図をもとにしている.

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図2 9月以降成長を継続している北側溶岩ローブ群.左図が12月1日(JST),右図が12月23 日(JST).TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ).中央火砕丘の火口径は12月23日時点で直径 80 m 程度である.旧島は溶岩流により埋没寸前である.

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図3 西之島の新たに形成された部分の面積変化(左)および面積増加率(右).エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.

[噴出量および噴出率]
図4 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2,3,7,12 月)とその前後の経過等をもとに推定されるおよその平均溶岩高さと山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.
図4 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2,3,7,12 月)とその前後の経過等をもとに推定されるおよその平均溶岩高さと山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.
図5 期間毎の平均噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図4の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.
図5 期間毎の平均噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図4の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

 

 

[参考資料・ホームページ]

海上保安庁水路部 (1993) 5万分の1沿岸の海の基本図海底地形地質調査報告書「西之島」, p. 47.

国土地理院における西之島付近の噴火活動関連情報: http://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html

株式会社パスコ 西之島噴火活動モニタリング: http://www.pasco.co.jp/disaster_info/141118/

 


 

2014年12月14日

(火山噴火予知研究センター:前野深)

西之島における噴火活動について(続報)

概要: 西之島の噴火活動で新たに形成された部分の面積,噴出量,噴出率について2014年12月1日 (JST) までの状況についてまとめた.島の大きさは東西1.7 km 南北1.8 km,面積はおよそ 2.2 km2 である.溶岩流の北~北西側への延伸,溶岩膨張割れ目の発達の様子から,溶岩は継続的に北側全域に供給され,浅海を埋め立てながらゆっくり前進し続けていると考えられる.一方,中央火砕丘の大火口は,埋積が進み直径が10月より小さく 60 m 程度になっているが,標高はやや高くなり,成長は継続していると推定される.噴出量は 8500±1000万m3,噴出率は10月よりやや低下したものの,25-30万 m3/day の水準は維持しており,活動は依然として活発である.噴出率,火口形状,溶岩表面構造の時間変化は今後の活動推移を予測する上で重要であり,引き続き注視していく必要がある.

 

[面積変化]

図1 西之島の新たに形成された部分の輪郭の変化.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) をもとに作成している.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) の海底地形図をもとにしている.
図1 西之島の新たに形成された部分の輪郭の変化.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) をもとに作成している.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) の海底地形図をもとにしている.

 

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図2 9月以降成長を継続している北側溶岩ローブ群.上図が11月20日(JST),下図が12月1 日(JST).TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ).中央火砕丘の火口径は12月1日時点で直径 60 m 程度である.
図2 9月以降成長を継続している北側溶岩ローブ群.上図が11月20日(JST),下図が12月1 日(JST).TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ).中央火砕丘の火口径は12月1日時点で直径 60 m 程度である.

 

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図3 西之島の新たに形成された部分の面積変化(上)および面積増加率(下).エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.

 

 [噴出量および噴出率]

図4 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2,3,7月)とその後の経過等をもとに推定されるおよその平均溶岩厚さと山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.
図4 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2,3,7月)とその後の経過等をもとに推定されるおよその平均溶岩厚さと山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.

 

 

図5 期間毎の平均噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図4の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差
図5 期間毎の平均噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図4の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差

 

[参考資料・ホームページ]
海上保安庁水路部 (1993) 5万分の1沿岸の海の基本図海底地形地質調査報告書「西之島」, p. 47.
国土地理院における西之島付近の噴火活動関連情報: http://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html
株式会社パスコ西之島噴火活動モニタリング: http://www.pasco.co.jp/disaster_info/141118/

 


2014年12月3日

(火山噴火予知研究センター:市原美恵・西田究)

西之島火山の活動 –父島での空振モニタリングで判明-

 

父島の気象観測所に設置したオンライン空振観測点のデータと,気象庁地震観測点の東西成分を用いて,西之島火山の空振モニタリングを開始しました.

観測点の位置を,図1に示してあります.三日月山観測点の地震計東西成分(JMA.CHJI3.EW)と気象観測所の気圧計(EV.CHI.NB)の相関を取ることで,西之島火山の活動をモニターする事が出来ます.

 

図1
図1

図2の上段のグラフは,地震計と気圧計の振幅を表しています.青が三日月山の地震計東西成分,緑が気象観測所の気圧計の振幅です.また,下段の図で,縦軸ゼロ付近の赤と青のパターンが,西之島火山の空振を検出していることを意味しています.そして,中段のグラフが,マイクの信号の中にどのくらい空振が入っているかを示すものです.割合が小さくなる原因として,(1)風のノイズが大きくなる,(2)空振が小さくなるの2つが考えられます.(1)の場合には,振幅が大きくなって中段のグラフが小さくなるはずですが,多くの場 合そうなっていませんので,(2)が原因だと考えられます.つまり,空振の到来の有無がちゃんと計測されているようです.

図2
図2

10月28日以降,間欠的な空振活動が何回か見られましたが,11月13日からほぼ連続的に検出されています.間欠的な活動が何回か起こったあと、連続的に噴火に移行したようです.このように長く空振が続くのは,空振観測を始めて以来2回目で,前回は5月半ばから6月半ばに見られました.

謝辞:空振観測に当たっては,小笠原村役場,気象庁のご協力を得ています。記して感謝します。

 


 2014年11月20日

(火山噴火予知研究センター:前野 深)

西之島における噴火活動について(続報)

概要: 西之島の噴火活動で新たに形成された部分の面積,噴出量,噴出率について2014年11月9日 (JST) までの状況についてまとめた.島の大きさは東西1.6 km 南北1.8 km,面積はおよそ 2 km2 である.9月以降の北側への拡大は継続しており,旧西之島は北西の高まり(標高約20 m)を除き新たな溶岩流に覆われている.溶岩流の延伸と溶岩膨張割れ目の発達の様子から,北側全域に溶岩が供給され続けていると考えられる.中央火砕丘の成長も継続し,火口径は10月より拡大して直径 70 m 程度と推定される.噴出量は 8000±1000万m3,噴出率は10月よりやや低下したものの,20万 m3/day を超える水準で,活動は依然として活発である.噴出率,火口形状,溶岩表面構造の時間変化は今後の活動推移を予測する上で重要であり,引き続き注視していく必要がある.

[面積変化]
図1 西之島の新たに形成された部分の輪郭の変化.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) をもとに作成している.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) の海底地形図をもとにしている.
図1 西之島の新たに形成された部分の輪郭の変化.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) をもとに作成している.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) の海底地形図をもとにしている.
図2 9月以降に新たに形成された北側溶岩ローブ群.10月18日(JST),
図2 9月以降に新たに形成された北側溶岩ローブ群.10月18日(JST),
図2 9月以降に新たに形成された北側溶岩ローブ群. 11月9 日(JST).TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ).中央火砕丘の火口径が直径 70 m 程度まで拡大している.
図2 9月以降に新たに形成された北側溶岩ローブ群.
11月9 日(JST).TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ).中央火砕丘の火口径が直径 70 m 程度まで拡大している.

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図3 西之島の新たに形成された部分の面積変化(上)および面積増加率(下).エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.

 

[噴出量および噴出率]
図4 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2,3,7月)とその後の経過等をもとに推定されるおよその平均溶岩厚さと山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.
図4 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2,3,7月)とその後の経過等をもとに推定されるおよその平均溶岩厚さと山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.
図5 期間毎の平均噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図4の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.
図5 期間毎の平均噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図4の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

 

[参考資料・ホームページ]

海上保安庁水路部 (1993) 5万分の1沿岸の海の基本図海底地形地質調査報告書「西之島」, p. 47.

国土地理院における西之島付近の噴火活動関連情報: http://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html

株式会社パスコ西之島噴火活動モニタリング: http://www.pasco.co.jp/disaster_info/131122/

 

 


 

2014年11月13日

(火山噴火予知研究センター:中田節也)

西之島の噴火活動:北側への溶岩流出と南よりの火砕丘でストロンボリ式噴火を継続。 西之島旧島(黄色っぽい低地)は溶岩平原の西端にわずかに残っている。溶岩が海に注入している場所からは水蒸気が上がっている。2014年11月13日昼頃,朝日新聞社機から上空と海上から中田が撮映。

※報道関係の方へ:朝日新聞社の協力により撮影しています。画像の引用については、朝日新聞社にお問合せください。

*画像をクリックすると動画が再生されます

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2014年10月24日

(火山噴火予知研究センター:前野 深)

西之島における噴火活動について(続報)

概要: 西之島の噴火活動で新たに形成された部分の面積,噴出量,噴出率について2014年10月18日 (JST) までの状況についてまとめた.島の大きさは東西1.6 km 南北1.7 km,面積はおよそ 1.9 km2 である.9月以降北側へ大きく拡大し,旧西之島は北西の高まりを残してほぼ新たな溶岩流に覆われた.溶岩流は中央火口丘の北側を崩して溶岩ローブ群を形成した後,さらにその先端を破り複数個所から樹枝状に分岐して現在の形状に成長したと考えられる.8月に主火口内に確認された溶岩ドーム状の高まりや火口凹地形は,火砕丘の成長により消滅した.北側への拡大は継続し,海底火山体山頂北端に迫っている.噴出量は 7000±1000万m3,噴出率は9月26日までの期間より下がったものの,30万 m3/dayの高い水準であり,活動は依然として活発である.噴出率,火口形状,溶岩表面構造の時間変化は今後の活動推移を予測する上で重要であり,引き続き注視していく必要がある.

[面積変化]

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図1(左)西之島の新たに形成された部分の輪郭の変化.(右)期間毎のおよその溶岩流の分布.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) をもとに作成している.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) の海底地形図をもとにしている.

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図2 9月以降に新たに形成された北側溶岩ローブ群.左図が9月26日(JST),右が10月18日(JST).TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ).9月には北側への溶岩流出により火砕丘が崩れている様子が認められたが,10月に入り火砕丘は崩壊地形を埋めて再び成長した.8月に認められた主火口内の溶岩ドームとみられる地形的高まりや火口凹地形は消滅した.

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図3 西之島の新たに形成された部分の面積変化および面積増加率.エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.

[噴出量および噴出率]

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図4 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2,3,7月)とその後の経過等をもとに推定されるおよその平均溶岩厚さと山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.

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図5 噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図4の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

[参考資料・ホームページ]
  • 海上保安庁水路部 (1993) 5万分の1沿岸の海の基本図海底地形地質調査報告書「西之島」, p. 47.
  • 国土地理院における西之島付近の噴火活動関連情報: http://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html
  • 株式会社パスコ 西之島噴火活動モニタリング: http://www.pasco.co.jp/disaster_info/131122/

 


2014年9月5日

(火山噴火予知研究センター:前野 深)

西之島における噴火活動について(続報)

概要: 西之島の噴火活動で新たに形成された部分の面積,噴出量,噴出率について2014年9月4日 (JST) までの状況についてまとめた.島の大きさは東西1.6 km 南北1.2 km,面積はおよそ 1.25 km2 である.東側への溶岩流出は継続しており,埋め残されていた東側の浅海部分はほぼ埋め尽くされた.島の東端はやや延伸し,海底山体の斜面に達している.一方,8月13日に撮影されたTerraSAR-X衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) で主火口内に確認された溶岩ドーム状の高まりや火口凹地形は不明瞭になっており,主火口内が溶岩でほぼ満たされたと推定される.噴出量はおよそ5000-6000万m3,噴出率は変動しているものの10万 m3/day を超える水準を維持しており,活動は依然として活発である.噴出率,火口形状,溶岩表面構造の時間変化は今後の活動推移を予測する上で重要であり,引き続き注視していく必要がある.

[面積変化]

図1 西之島の新たに形成された部分の輪郭の変化.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) をもとに作成している.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) の海底地形図をもとにしている.

 

図2 主に7月中旬以降9月3日(UTC)までに形成・成長した部分.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ).8月上旬に認められた主火口内の溶岩ドームとみられる地形的高まりや火口凹地形は不明瞭になり,主火口内が溶岩でほぼ満たされた可能性がある.

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図3 西之島の新たに形成された部分の面積変化および面積増加率.エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.面積増加率は減少を続けた後,5月以降大きく変動している.

[噴出量および噴出率]

図4 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2,3,7月)とその後の経過等をもとに推定されるおよその平均溶岩厚さと山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.

 

図5 噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図4の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

 

[参考資料・ホームページ]
  • 海上保安庁水路部 (1993) 5万分の1沿岸の海の基本図海底地形地質調査報告書「西之島」, p. 47.
  • 国土地理院における西之島付近の噴火活動関連情報 http://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html
  • 株式会社パスコ 西之島噴火活動モニタリングhttp://www.pasco.co.jp/disaster_info/131122/

 


 

2014年8月18日

(火山噴火予知研究センター:前野 深)

西之島における噴火活動について(続報)

概要: 西之島の噴火活動で新たに形成された部分の面積,噴出量,噴出率について2014年8月13日までの状況についてまとめた.島の大きさは東西1.55 km 南北1.2 km,面積はおよそ 1.2 km2 である.6月以降継続していた東側への拡大は7月下旬までに停止したものの溶岩供給は継続し,7月下旬からは北東部で溶岩が流出し始め,一旦減少した面積拡大率が再び増加に転じている.東西および南方向では,海蝕による島の縮退が若干認められる.一方,8月13日(UTCでは12日)に撮影されたTerraSAR-X衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) によると,北側の火口群が合体して大火口を形成するとともに,火口内に直径50 mほどの溶岩ドームとみられる高まりが形成されていることがわかった.噴出量はおよそ5000万m3,噴出率は5月中旬以降変動しているものの10万 m3/day を超える水準を維持しており,活動は依然として活発である.また,溶岩ドーム形成は火口の閉塞を意味するため,今後ブルカノ式噴火等の爆発的な噴火を起こす可能性がある.噴出率,火口形状,溶岩表面構造の時間変化は今後の活動推移を予測する上で重要であり,引き続き注視していく必要がある.

[面積変化]

図1 西之島の新たに形成された部分の輪郭の変化.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) をもとに作成している.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) の海底地形図をもとにしている.

 

図2 主に7月中旬以降8月12日(UTC)までに形成・成長した部分.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ).中央火口内に溶岩ドームとみられる地形的高まりが出現している.ストロンボリ式噴火が停止している可能性があるが,上空観察による確認が必要である.

 

図3 西之島の新たに形成された部分の面積変化および面積増加率.エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.面積増加率は減少を続けた後,5月以降大きく変動している.20140818nisinoshima4

図3 西之島の新たに形成された部分の面積変化および面積増加率.エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.面積増加率は減少を続けた後,5月以降大きく変動している.

[噴出量および噴出率]

図4 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2,3,7月)とその後の経過等をもとに推定されるおよその溶岩厚さの平均値と山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.

図5 噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図3の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

 

[参考資料・ホームページ]
  • 海上保安庁水路部 (1993) 5万分の1沿岸の海の基本図海底地形地質調査報告書「西之島」,p. 47.
  • 国土地理院における西之島付近の噴火活動関連情報 http://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html
  • 株式会社パスコ 西之島噴火活動モニタリングhttp://www.pasco.co.jp/disaster_info/131122/

 


2014年7月14日

(火山噴火予知研究センター:市原美恵)

父島で捉えた西之島火山の活動に伴う空振

小笠原諸島・西之島では,活発な噴火活動が続いているが,観測情報は非常に限られている.そこで,一般にアクセス可能な最近接の陸地である小笠原村父島に空振計を設置し,西之島の噴火活動に伴う空振の観測を試みた.父島は,西之島東方130km の距離にある.遠距離での空振観測は,大気構造の影響で伝播経路が曲げられ,まったく届かなくなることも多いが,大気構造によってはシグナルを捉えられる可能性もある.2014年4月25日から連続観測を開始し,6月9日までのデータを解析した.その結果,西之島火山方向からの空振が,5月12日の夜以降頻繁に届くようになったことが分かった.振幅の大きなシグナルは,父島と母島の地震計でも捉えられており,その到来時刻の差から,西之島からの空振であることはほぼ間違いない.海上保安庁による航空機観測では,4月15日と5月21日の間に新しい火口が開いたことが報告されており,また,衛星観測(TerraSAR-X, パスコ)は,5月6日と17日の間に,西之島東側への溶岩流出が始まったことを示している.父島における空振観測によって,西之島火山の活動状況を高い時間分解能で把握できる可能性がある.

図1:空振の検出と到来方向を推定するため,空振計(白山工業製・SI102およびSI103)を3点(赤丸①②③)設置した.100 Hz サンプリングでオフライン収録している.西之島の空振は父島から見て278oN の方向から来ると予想される.

 

図2:2014年5月20日の解析結果.シグナルが見やすい1-7Hzの周波数帯を取り出している.(a)は平均2乗根振幅の3観測点平均,(b)(c)はそれぞれ,観測点2と観測点3のデータの観測点1に対する時間遅れを調べたもの.(d) は(b)(c)の結果を用いて,どちらの方向から伝播したと考えるのが3点の観測データをよく説明するか(センブランス値)を計算したもの.値が大きい(赤色に近い)ほど,空振が明瞭に捉えられていることを示す.白い点線は西之島方向(観測点から見て北から時計回りに278°方向)から音波が伝播したと考えられる値で,この位置と赤色の濃い部分が一致しているとき,西之島方向からの空振が捉えられていることを示唆する. 6時前から13時過ぎまでの間で,振幅(a)が大きくなっているのに,(d)に大きな値が見られないのは,風のノイズが大きくなったことを意味する.この期間,空振が来ていないのか,ノイズで見えなくなっているのかは,このデータだけからは決められない.一方,3時前から5時の間では,振幅(a)が非常に小さくなっているにも関わらず,空振が見えない.少なくともこの時間帯には,空振は来ていなさそうである.空振の有無が伝播の影響によるものか,活動変化によるものかは,まだ切り分けられていない.

図3:父島における高層大気の観測値(気象庁)と空振検出状況の比較.西之島から父島への方向への(a)実効的音速(音速+風の効果)と(b)風速,(c)西之島方向からの空振伝播の確からしさを示す値(図2(d)の278oにおけるセンブランス値をとりだしたもの),(d)最大センブランス値を示す方向.5月12日の夜から頻繁に,センブランス値の大きい値が見られるようになり,その時には,いつも西之島方向からの伝播(278o)を示していた.空振の伝播は,大気構造(特に,実効的音速)の影響を強く受ける.父島気象観測所では,1日2回(9:00, 21:00),ゾンデによる高層気象観測がおこなわれている.この計測間隔は,空振検出状況の変化に対して,時間分解能が不足しているが,5月12日を境に大気構造に明瞭な変化があるようには見られない.また,(b)の枠の上に示す赤い×印は,気象観測が行われた時刻付近で,空振が検出されていることを示す.×印のついた時間の大気構造とそれ以外の間にも,系統的な違いは見られない.従って,空振検出状況の変化は,西之島の火山活動の何らかの変化を示している可能性がある.より大きな空振を出す活動に変化した,火口が,父島へ空振が届きやすい高度や位置に変化した,などの可能性がある.

 

図4:TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ).2014年5月6日(左)と5月17日(右)を比較すると,新しい溶岩が主火口群から東側に流出し始めていることがわかる.5月21日と6月11日には新しい火口も発見された(海上保安庁).空振観測は,これらの画像データの間を埋める連続情報として有用である.

 

図5:父島で捉えた西之島からの空振波形.1-7Hzの帯域でフィルターを掛けたもの.1.5秒くらいの間隔でパルスが発生しているように見える.

謝辞:
空振観測に当たっては,小笠原村役場,JAMSTEC,川上和人氏(森林総合研究所),鴨川仁研究室(学芸大学)のご協力を得ている.


2014年7月8日

西之島における噴火活動について(続報)

概要: 西之島の噴火活動で新たに形成された部分の面積,噴出量,噴出率について2014年6月30日までの状況についてまとめた.島の大きさは東西1.6 km 南北1.1 km,面積はおよそ 110万m2 である.東側への溶岩流出が継続して島が拡大しているほか,主火口群の北側と南側へも新たな溶岩が流出し,これまでの溶岩を覆い始めている.面積増加率は6月に入り増加に転じたものの,その後再び減少している.ただしこれは東側に流出した溶岩が海底火山体の山頂火口縁を超えて深い方向に拡がっているためで,噴出率(およそ25-30万 m3/day)は大きく変わっていないと推定される.噴出量は4000-5000万m3 で,1973-74年噴火の噴出量のおよそ2倍に達している.溶岩の供給は継続しており,活動は依然として活発な状態にあるといえる.噴出率の推移や溶岩表面構造の時間変化は今後の活動推移を予測する上で重要であり,引き続き注視していく必要がある.

[面積変化]

図1 西之島の新たに形成された部分の輪郭の変化.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) をもとに作成している.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) の海底地形図をもとにしている.

 

図2 主に5月中旬以降に形成・成長した部分.東側への溶岩流出が継続して島が拡大しているほか,主火口群の北側と南側へも新たな溶岩が流出し,これまでの溶岩を覆い始めている.

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図3 西之島の新たに形成された部分の面積変化および面積増加率.エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.面積増加率は減少を続けた後,6月に入り増加に転じたもののその後再び減少している.ただしこれは東側に流出した溶岩が海底火山体の山頂火口縁を超えて深い方向に拡がっているためで,下記のように噴出率は大きく変わっていない.

[噴出量および噴出率]

図4 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2月および3月)とその後の経過等をもとに推定されるおよその溶岩厚さの平均値と山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.

図5 噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図3の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

[参考資料・ホームページ]
  • 海上保安庁水路部 (1993) 5万分の1沿岸の海の基本図海底地形地質調査報告書「西之島」, p. 47.
  • 国土地理院における西之島付近の噴火活動関連情報
  • http://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html
  • 株式会社パスコ 西之島噴火活動モニタリング
  • http://www.pasco.co.jp/disaster_info/131122/

 

2014年5月27日

西之島における噴火活動について(続報)

概要: 西之島の噴火活動で新たに形成された部分の面積,噴出量,噴出率について2014年5月6日までの状況についてまとめた.島の大きさは東西1400 m 南北1100 m,面積はおよそ 90万m2 である.面積増加率は減少傾向にあり,見かけ上の成長は鈍化しているが,これは溶岩流が水深の深い方向へ拡大しているためである.これまでの噴出量は2800万~3500万m3 で,1973-74年噴火の噴出量(およそ2400万m3)を上回ったと推定される.噴出率は2~3月のピーク時よりやや減少し,4~5月では20万 m3/day程度と推定される.また,衛星画像をもとに溶岩表面構造の時間変化を調べたところ,大部分で溶岩ローブ群の膨張を示す亀裂の形成・拡大が進行していることがわかった.これらのことから,溶岩の供給は継続しており,活動は依然として活発な状態にあるといえる.噴出率の推移や溶岩表面構造の時間変化は今後の活動推移を予測する上で重要であり,引き続き注視していく必要がある.

[面積変化]

図1 西之島の新たに形成された部分の輪郭の変化.TerraSAR-Xによる衛星画像 (協力: 株式会社パスコ) をもとに作成している.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) の海底地形図をもとにしている.

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図2 西之島の新たに形成された部分の面積変化および面積増加率.エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.面積増加率は1月から減少傾向にある.

 

[噴出量および噴出率]

図3 噴出量とその変化.黒はトータルの噴出量.緑色は陸上部分の体積.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.陸上部分の体積については,国土地理院による測量データ(2月および3月)をもとに推定される溶岩厚さの平均値と山頂標高の増加曲線をもとに見積もっている.噴出量はすでに前回噴火のおよそ2400万m3を上回ったと推定される.

図4 噴出率(1日当たりの噴出量)とその変化.黒はトータルの噴出率.緑色は陸上のみに対する噴出率.図3の噴出量ダイアグラムをもとに見積もっている.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.噴出率は2014年2月にかけて増加し,2~3月は 25万m3/day程度であったが,4月に入ってからは20万m3/day程度と推定される.2013年11月からの平均噴出率は約18万m3/dayである.

図5 TerraSAR-Xにより撮影された島北西部(旧島と新たに形成された溶岩ローブ群との境界部)の33日毎の画像.溶岩ローブの成長方向と同方向にパン皮状の亀裂(cleft)が形成され,徐々に開口,拡大していく様子が観察される.代表的な部分として,黄色波線で囲んだ部分の拡大を図6に示す.黄色矢印は目印となる旧島の溶岩.

図6 溶岩ローブに形成された亀裂の成長の様子(図5の黄色波線で囲んだ部分の拡大,画像の横幅は約80 m).

溶岩表面における開口亀裂の発達の様子(図5,6)と,亀裂形成域で標高が増加していること(2014年2月16日と3月22日の国土地理院の地形データにもとづく)から,開口亀裂はlava inflation cleftと解釈できる.すなわち,溶岩ローブ群に継続的に溶岩が供給されて内圧が高まることにより溶岩ローブが膨張し,表面の皮殻が壊れて亀裂が生じていると解釈できる.開口亀裂の形成と発達は5月上旬の時点でまだ継続しており,溶岩流出は衰えていないと判断できる.溶岩表面構造の時間変化は今後の活動推移を予測する上でも重要と考えられる.

※ モニタリング及び衛星画像提供:株式会社パスコ

(火山噴火予知研究センター:前野 深)

[参考資料・ホームページ]


2014年1月16日

西之島における噴火活動について(続報)

概要: 西之島の噴火活動は依然として活発な状態にある.新たに形成された部分の面積,海域への溶岩流出体積,流出率の変化について1月8日までの状況についてまとめた.島の大きさは東西650 m 南北550 m,面積は,1973-74年噴火時に新島が最も成長した時(新島出現からおよそ1年後)の大きさ約26万m2に達している.海域への溶岩流出体積は300万m3超,流出率は多少の上下変動を伴うものの依然として105 m3/dayもしくはそれをやや下回る程度を維持していると推定される.噴出率の変化は今後の活動推移を予測する上で重要であり,引き続き注視していく必要がある.

[面積変化]

図1 西之島の新たに形成された部分の輪郭と面積変化.エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.2013年12月までは海上保安庁が公開している空撮写真および輪郭を参考にしているほか,2014年1月2日,8日はJAXAが公開している衛星画像,2013年12月17日までは国土地理院が公開している空撮写真,その他メディア等により報道されている空撮写真等も参考にしている.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) ,旧西之島の輪郭は海上保安庁水路部1999年作成の地形図をもとにしている.

 

 

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[溶岩流出体積および流出率]

図2 海へ流出した溶岩体積とその変化※.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.なお,1月8日までの溶岩流出量は,前回の総噴出量のおよそ1/7に相当する.

※ 溶岩流出以前(11月21日)の新島の楕円状の海岸線を基準に,溶岩流の分布と噴火前の地形をもとに仮定した水深(溶岩流出前の水深)を用いた差分から,およその溶岩体積を推定している.毎回30 %程度の誤差が含まれる.

図3 期間毎の溶岩流出率とその変化※.エラーバーは,海岸線の読み取り誤差,海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

※期間毎の面積(溶岩流分布)の変化量(推定最大値および最小値を用いた差分),および噴火前の地形をもとに仮定した水深(溶岩流出前の水深)を用いた差分から,溶岩流出率を推定している.

[参考資料]
  • 海上保安庁海洋情報部海域火山データベースhttp://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo18-2.htm
  • 海上保安庁水路部 (1993) 5万分の1沿岸の海の基本図海底地形地質調査報告書「西之島」, p. 47.
  • 国土地理院における西之島付近の噴火活動関連情報http://www.gsi.go.jp/gazochosa/gazochosa60010.html
  • http://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html
  • JAXA衛星利用推進サイト: http://www.sapc.jaxa.jp/topics/2014/news0110.html

 

(火山噴火予知研究センター:前野 深)


2014年1月10日

西之島における噴火活動について

概要: 西之島沖の噴火により成長していた新島は,2013年12月25日頃に西之島と接合し,一体化した.新たに形成された部分の面積,海域への溶岩流出体積,流出率の変化について12月26日までの状況についてまとめた.面積はおよそ16万m2,海域への溶岩流出体積は200万m3超,流出率は依然として105 m3/day程度を維持していると推定される.この噴出状況が維持されている場合,2014年1月に入った時点で,新たに形成された部分は旧西之島の面積を上回っている可能性が高い.噴出率の変化は今後の活動推移を予測する上で重要であり,引き続き注視していく必要がある.

[面積変化]

図1 西之島の新たに形成された部分の輪郭と面積変化.エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.海上保安庁が公開している空撮写真および輪郭を参考にしているほか,12月7日までは国土地理院が公開している空撮写真,その他メディア等により報道されている空撮写真等も参考にしている.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) ,旧西之島の輪郭は海上保安庁水路部1999年作成の地形図をもとにしている.

 

20140110maeno_fig2

 

[溶岩流出体積および流出率]

図2 海へ流出した溶岩体積とその変化※.エラーバーは海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

図3 期間毎の溶岩流出率とその変化※.エラーバーは海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

*溶岩流出以前(11月21日)の新島の楕円状の海岸線を基準に,溶岩流の分布と噴火前の地形をもとに仮定した水深(溶岩流出前の水深)を用いた差分から,およその溶岩体積と流出率(期間中の一日当たりの流出量)を推定している(12月8日資料を参照).なお,国土地理院が公開した12月3日,17日の新島の立体図を参考にして,溶岩流厚さの見積もり最大値をこれまでの報告より下方修正した.それに伴い溶岩体積と流出率についてもエラーバーの上限値が変わり,12月20日以前は当初の見積もりよりやや低くなっている.

[参考資料]
  • 海上保安庁海洋情報部海域火山データベースhttp://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo18-2.htm
  • 海上保安庁水路部 (1993) 5万分の1沿岸の海の基本図海底地形地質調査報告書「西之島」, p. 47.
  • 国土地理院における西之島付近の噴火活動関連情報
  • http://www.gsi.go.jp/gazochosa/gazochosa60010.html
  • http://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html

 

観察日時:2013年12月26日 12:30-13:00
撮影者:中田節也
毎日新聞社機:Cessna Citation CJ2+
説明:11月20日に発見された火山新島では,海水とマグマが接触する激しい爆発(マグマ水蒸気爆発)を経て,11月24日から溶岩が流出し続けている。この間,新島は大きく成長し,12月26日に西之島と合体した。

※ 報道関係の方へ: 毎日新聞社の協力により撮影しています.動画の引用については,毎日新聞社にお問合せください.

*各画像をクリックして動画を再生20131227_nakada

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(火山噴火予知研究センター:中田節也)


 

西之島2013年活動の航空機観察

朝日新聞社の取材機(ジェット/あすか)に同乗し, 2013年12月25日に西之島の観察を行った.この結果,2013年11月に形成された新島(以下2013年新島と仮称)の北西への成長が進み,旧来の西之島新島と接合していることが確認された.

観測日時:2013年12月25日15時13分~43分(観察者/金子)

地形:2013年新島は北西―南東方向にやや伸長した“三つ葉型”をしており,南東側が高く,北西に向かってなだらかな溶岩流の堆積面が伸びている(写真1).長径は約600m,短径は約300m,高さは約50m程度と見られる.

火口と噴出物:火口は島の南東域に3か所が認められる(写真1).1つは高さ約50mの火砕丘頂部にある主火口(写真1 a)で,ここでは1~2分に1回程度の頻度でストロンボリ式噴火が発生し,赤熱したマグマ片が周囲に飛ばされている(写真2 f).2つ目はその北側斜面低位に位置する火口(写真1 b)で,ここからは火山灰を多く含む噴煙が盛んに立ち昇っている.3つ目が主火口の西,島の中央部に近い場所にある火口(同c)で,ここから北西に向かって溶岩流が噴出し,途中から銀杏の葉状に複数のローブに分かれ北西域一帯を覆っている(同d).ここでの爆発的噴火は見られない.この噴出により島が一挙に成長し西之島新島と接合することとなった. 最新のローブは東側に向かい,海岸線付近で盛んに水蒸気を挙げている(写真2 g) .

西之島新島と2013年新島との接合部:両島は間に細長い湖(100数十m × 数十m) (写真1 e)を挟んで東側(写真3)と西側(写真4)で接合している.接合部の長さは共に10m 程度である.高い波が押し寄せた際は,接合部を乗り越え,海水が湖側に流入している.湖は2013年新島の成長により海水が両島の間にトラップされたものと考えられ,溶け込んだガス成分によって赤褐色を呈している.

※ 報道関係の方へ: 朝日新聞社の協力により撮影しています.写真の引用については,朝日新聞社にお問合せください.

写真1 西方より

写真2 東方より

写真3 北西より

 

写真4 北西より

(火山噴火予知研究センター:金子隆之)


 

2013年12月24日

西之島沖での新島成長過程(続報)

概要: 西之島沖で噴火を継続している新島の面積,海域への溶岩流出体積,流出率の変化について12月20日までの状況についてまとめた.20日現在,面積は12万m2弱,海域への溶岩流出体積はおよそ200万m3,流出率はやや増加傾向にあるものの依然として105 m3/day程度を維持していると推定される.噴出率の変化は今後の活動推移を予測する上で重要であり,引き続き注視していく必要がある.

新島の面積変化

図1 新島の輪郭と面積変化.エラーバーは海岸線の読み取り精度から生じる誤差.12月13日まで海上保安庁が公開している空撮写真および輪郭を参考にしているほか,12月7日までは国土地理院が公開している空撮写真,その他メディア等により報道されている空撮写真等も参考にしている.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) ,西之島の輪郭は海上保安庁水路部1999年作成の地形図をもとにしている.

 

 

20131220nishinoshima_fig.2

 

図2 新島から海へ流出した溶岩体積とその変化※.エラーバーは海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

 

図3 期間毎の溶岩流出率とその変化※.エラーバーは海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

※溶岩流出以前(11月21日)の楕円状の海岸線を基準に,溶岩流の分布と噴火前の地形をもとに仮定した水深(溶岩流出前の水深)を用いた差分から,およその溶岩体積と流出率(期間中の一日当たりの流出量)を推定している(12月13日報告および図4を参照).なお,国土地理院が公開した12月3日の新島の立体図を参考にして,溶岩流厚さの見積もり最大値をこれまでの報告より下方修正した.それに伴い溶岩体積と流出率についてもエラーバーの上限値が変わり,12月7日以前は当初の見積もりよりやや低くなっている.

図4 西之島から新島にかけての北西―南東方向の模式断面図(改訂版,12月20日時点)

※ 海底地形図が作成された90年代から時間が経過しており,当時よりも水深10 m前後の浅海部が沖側へ拡大している可能性がある(西之島本島の浸食が進んでおり,南東側に物質が供給されている可能性など).また,11月20日以前の浅海底での活動に伴う堆積作用も考えられるため,やや浅い水深の場合も仮定している.

参考資料

  • 海上保安庁海洋情報部海域火山データベースhttp://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo18-2.htm
  • 海上保安庁水路部 (1993) 5万分の1沿岸の海の基本図海底地形地質調査報告書「西之島」, p. 47.
  • 国土地理院における西之島付近の噴火活動関連情報 http://www.gsi.go.jp/gazochosa/gazochosa60010.htmlhttp://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html

 

西之島南東沖火山活動の上空観察

観察日時: 2013年12月20日 12:20-13:05
観察者: 前野 深
使用機体: 毎日新聞社ジェット機(希望)

概要
西之島南東沖の新島の噴火活動は依然として活発であり,ストロンボリ式噴火と溶岩流出が継続している.新島は12月初旬と比べて南西から北西側にかけて大きく成長しており,大きさは南北約450 m 東西約450 mに達している(写真 1, 2).主火口の位置に大きな変化はないものの火砕丘が再び成長したことにより,新島の海水面からの高さは西之島の2倍近い40~50 mに達していると推定される.

主火口付近の活動

主火口では数十秒~数分の周期でストロンボリ式噴火が繰り返し発生し,火砕丘が成長している(写真 3, 4).火砕丘は,溶岩流出により一部崩壊したすり鉢状火口や東側溶岩の上に新たに成長し,裾野を広げている.また,火砕丘の東側斜面には小火口が少なくとも2箇所あり,主火口のストロンボリ式噴火とは別に勢いのある褐色噴煙が上がることがある(写真 5).

溶岩流
溶岩流出は火砕丘西側で継続している(写真1, 6).溶岩は大きく北西,南西,南東の3方向へ分岐して流動しているが,このうち南西へ向かう溶岩流はやや低い位置から流出している.溶岩と海水との接触により発生している水蒸気はとくに南西側溶岩で激しいが,北西および南東側でも発生しており,島のほぼ西側全域で溶岩が流動し面積を増加させていると考えられる.西之島との最短距離は70 m程度であるが,この部分の水蒸気量は少ない.水蒸気量が多く,活発に流動していると考えられる部分と西之島との距離はおよそ100 m程度である.また,新島東側の溶岩流は見かけ上停止しており,部分的に波による浸食が認められる.

※ 報道関係の方へ: 毎日新聞社の協力により撮影しています.写真の引用については,毎日新聞社にお問合せください.

写真1. 新島成長の様子.12月初旬以降,南西から北西側に大きく拡大し,西之島に接近している.南東から撮影.

写真2. 新島成長の様子.褐色噴煙は火砕丘東斜面から上がっている.西から撮影.

 

写真3. ストロンボリ式噴火が間欠的に発生し,再び火砕丘が成長している.海水面からの高さは,40-50 mと推定される.西側から撮影.

 

写真 4. 主火口付近の様子.マグマが見えている主火口(黄色矢印)のほかに,東側斜面に小火口が認められる(白矢印).写真奥は12月初旬までに東側に流出した溶岩.火砕丘はその上に裾野を広げている.西側から撮影.

 

写真 5. 火砕丘の東側斜面から立ち上がる褐色噴煙.斜面には小火口が少なくとも2箇所ある.北西側から撮影.

 

写真 6. 火砕丘西側から流出している溶岩流.溶岩先端部では,高温の溶岩と海水との接触により蒸発した海水が激しく立ち昇っている.西から撮影.

 


2013年 12月17日

西之島沖での新島成長過程(続報)

西之島沖で噴火を継続している新島の海域への溶岩流出体積,流出率の変化について12月13日までの状況についてまとめた(図1,2).

基本的には海上保安庁公表の空撮画像にもとづき,溶岩流出(11月21日)以前の楕円状の海岸線を基準に,溶岩流の分布と噴火前の地形をもとに仮定した水深(溶岩流出前の水深)を用いた差分から,およその溶岩体積と流出率(期間中の一日当たりの流出量)を推定している(前回の報告および図3を参照).

図1 新島から海へ流出した溶岩体積とその変化.エラーバーは海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

 

図2 期間毎の溶岩流出率とその変化.エラーバーは海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

 

図3 西之島から新島にかけての北西―南東方向の模式断面図

※ 12月7日までは,国土地理院による空撮写真,およびその他メディア等により報道されている空撮写真等も参考にしている.

(火山噴火予知研究センター:前野 深)


2013年12月13日

概要

西之島沖で噴火を継続している新島の面積,海域への溶岩流出体積,流出率の変化について,海上保安庁,国土地理院などの空撮画像をもとに推定した.新島の面積は,12月4日におよそ5万m2に達しているが,島の成長速度は前回1973-74年噴火のおよそ8倍と非常に速いことがわかった.また溶岩流出率については,時間とともに増加し,11月末以降105 m3/dayに迫る付近で推移していると考えられる.この流出率は,前回形成された西之島新島を除き,国内で最も新しい火山島である昭和硫黄島形成時の平均溶岩流出率 ~1×105 m3/day(1935年1〜3月)に匹敵する.新島の面積変化や溶岩流出率の時間変化は今後の噴火活動推移を予測する上で重要であると考えられる.

西之島沖での新島形成の経過
2013年
11月20日 北西−南東方向に伸びた楕円形の新島および変色域が海上保安庁により確認された.噴火開始地点は1973年噴火時の火口群の位置とほぼ同じである.
11月21日 コックステールジェットを伴うマグマ水蒸気爆発(典型的なスルツェイ式噴火)が断続的に発生.新島の中央部には火砕丘が形成されている.
11月22日 新たな火口が東側に形成され,わずかに溶岩が流出し始めている様子が確認される(海上保安庁の空撮画像にもとづく).
11月24日 山頂火口からは断続的にストロンボリ式噴火を繰り返すとともに,火砕丘東側は新たな火口の形成と溶岩流出に伴い部分的に崩壊,クリンカーの発達した溶岩流は東側の50 mほど沖合まで流出.
11月26日  東側の溶岩流が成長を続け,新島は拡大.
12月1日   溶岩はさらに東側に向けて複数のローブを形成しつつ拡大.
12月4日   南西側にも溶岩を流出してやや拡大.
12月7日   西側の溶岩流出が継続.

※ 11月20日以前の観測記録がないが,海水面上に到達するまでの浅海底での噴火のステージがあったと推定される.1973年噴火の際には,変色水が確認されてから今回の11月20日に観察されたような火砕丘状の新島になるまでに,およそ5ヶ月を要している(小坂, 1991など).

新島の面積変化
 ホームページ上で公開されている海上保安庁,国土地理院による空撮写真,およびその他メディア等により報道されている空撮写真等をもとに新島の発達の様子を図1にまとめた.また,新島のおよその面積変化を図2に示す.海岸線の定義は難しいため誤差を含む.溶岩流出以降,島の面積は拡大し続け,2週間後の12月4日には5万 m2,12月7日にはおよそ6万 m2に達している.1973~74年噴火の際には,溶岩が流出して面積が5万 m2を超えるまでにおよそ2カ月要していることから(小坂, 1991),今回の噴火による新島の成長速度は前回の8倍と非常に速いことになる.

海底地形図(海上保安庁, 1993)をもとにすると,12月4日頃まで溶岩流の主要部分は,水深が徐々に深くなる東側へ向かい流動したと考えられる.溶岩流の進行方向,すなわち島の成長方向は海底地形の影響によるものと推定される.その後溶岩は南西側に方向を変えて流出し始めた.溶岩が南東側の埋め立ておよび冷却・固化により流動を妨げられ,新たな流路を選択するようになったことが一因として考えられる.

図1  西之島火山沖新島の成長過程.海底地形は海上保安庁水路部 (1993) ,西之島の輪郭は海上保安庁水路部1999年作成の地形図をもとにしている.

 

溶岩流出体積および流出率
噴火が開始したのは水深10~20 m付近,12月4日には溶岩流先端付近は噴火前の水深25~30 mに達したと推定される(図1).
溶岩流出以前の楕円状の海岸線を基準に,海に流出した溶岩流の面積および噴火前の地形をもとに仮定した水深を用いた差分から,およその溶岩体積(図3)と流出率(期間中の一日当たりの流出量,図4)を推定した.なお,増加した溶岩流の海水面上での比高は平均5 m (最小の場合) ~ 15 m(最大の場合)と仮定し,水深についても5 ~10 m程度の誤差を考慮している.
海に流入した溶岩の体積は徐々に増加し,1×106 m3 に迫っている.一方,溶岩流出率も徐々に増加し,12月1日~4日の4日間では平均1×105 m3/day程度であるが,その後やや減少している.

図3  新島から海へ流出した溶岩体積とその変化.エラーバーは海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

図4 期間毎の溶岩流出率とその変化.エラーバーは海水面上の溶岩の比高と水深の不確かさから生じる誤差.

 

1934-35昭和硫黄島噴火との比較
日本国内では西之島以外で最も新しい火山島である鹿児島県薩摩硫黄島沖の昭和硫黄島形成時には,溶岩流出期(1935年1〜3月の2ヶ月)の平均流出率は~1×105 m3/dayと推定されている(Maeno and Taniguchi, 2006).西之島の溶岩流出率は11月末以降,昭和硫黄島形成時の平均溶岩流出率に迫る付近で推移している.

※ 西之島と昭和硫黄島では岩石化学組成が異なるため(昭和硫黄島溶岩はデイサイト~流紋岩,西之島溶岩は安山岩と推定される),噴火メカニズムや溶岩流の流出過程の詳細については,単純に比較はできないことには注意する必要がある.ただし,両噴火の噴出量や噴出率という基礎的な物理量の比較には意味があると考える.

今後の活動について
今後,溶岩は東側と同様に,西側へさらに流動,拡大(埋め立て)していくと考えられる.また,現在の新島の周囲がほとんど溶岩で埋め立てられ,冷却・固化が進んだ場合,マグマは噴火しやすい場所を新たに探し,付近に別の火口を形成する可能性がある.この場合,11月20日頃の様な激しいマグマ水蒸気爆発が再び発生すると考えられる.
今後,溶岩の流出場所・方向,流出量,流出率に着目し,噴火の推移を注意深く観察していく必要がある.

参考資料

  • 海上保安庁海洋情報部海域火山データベースhttp://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/kaiyo18-2.htm
  • 海上保安庁水路部 (1993) 5万分の1沿岸の海の基本図海底地形地質調査報告書「西之島」, p. 47.
  • 国土地理院における西之島付近の噴火活動関連情報http://www.gsi.go.jp/gazochosa/gazochosa60010.html
  • Maeno, F. and Taniguchi, H. (2006) Silicic lava dome growth in the 1934-1935 Showa Iwo-jima eruption, Kikai caldera, south of Kyushu, Japan. Bulletin of Volcanology, 68, 673-688.
  • 小坂丈予 (1991) 日本近海における海底火山の噴火. 東海大学出版会, p. 279.

(火山噴火予知研究センター:前野 深)


 

西之島南東海域火山活動の上空観察

観察日時:2013年11月24日午前11:20-12:05
観察者:中田節也
使用機体:セスナ Citation Encore(朝日新聞社機)

概要
新島の大きさは海上保安庁が観測した11月21日午後の様子と大差なく,約200 m x 100 mの北西—南東方向に伸びた楕円形を呈している。新島の高さは西之島の最高点とほぼ同じ20数mと考えられる。島の北東側では海に約50m突き出した溶岩地形が認められる(写真1, 2)。島全体は台形を呈し,その表面はごつごつした大小の火山弾に覆われている。それに対して島の南東側,南西側では,頂部付近から褐色火山灰の岩肌の比較的滑らかな斜面が出現しており,斜面崩壊が起こったものと考えられる(写真2下)。

噴火の様子
島頂部の火口付近
島の中央部からやや南東よりにある頂部の火口では,数秒から数十秒間隔でストロンボリ式噴火を繰り返えしている。噴煙と火山弾は上空300-400m程度まで噴き上がり,水平距離で約500mまでの範囲に着水している(写真3)。頂部火口は10m程度と小さくなっており,噴火の度に赤熱した溶けた溶岩が噴き上がり,その根元は高さ10m程度までの溶岩噴泉状であることから,火口には小さな溶岩湖が形成されていると考えられる。

北東溶岩流
頂部火口の北東斜面中程にも小さな火口が空いており,頂部火口の爆発直後に後者で小爆発が起こり,火山灰が噴き上がることがある。この小さな火口からも赤熱溶岩が顔をのぞかせる。この火口周辺から北東側の海岸線まで,流れた筋が明らかな,より黒色の溶岩流が認められる(写真2下)。この溶岩流は海岸線でやや古い溶岩部にぶつかり,東に向きを変えて海中に没しており,そこからは白煙が勢い良く上昇している。この溶岩流先端部を含めて北東部に突き出した部分は,21日頃から成長した溶岩流部分で,すでに先端の一部が浸食されたものかもしれない。

※報道関係の方へ:朝日新聞社の協力により撮影しています。写真の引用については、朝日新聞社にお問合せください。

写真1。西之島と新島の噴火活動の遠景。11 月24 日昼前。 ストロンボリ式噴火を繰り返す新島。西之島と新島を南東側上空から撮影。
写真1。西之島と新島の噴火活動の遠景。11 月24 日昼前。
ストロンボリ式噴火を繰り返す新島。西之島と新島を南東側上空から撮影。
写真1。西之島と新島の噴火活動の遠景。11 月24 日昼前。 海に達した溶岩流の先端からは水蒸気の白煙が上がる。同じく南東側から撮 影。
写真1。西之島と新島の噴火活動の遠景。11 月24 日昼前。
海に達した溶岩流の先端からは水蒸気の白煙が上がる。同じく南東側から撮
影。
写真2。新島の全景と溶岩流。2013 年11 月24 日昼前。 )マグマ水蒸気爆発の大きい径の火口が噴出物で埋められ全体が台形を示す。 北東側から撮影。
写真2。新島の全景と溶岩流。2013 年11 月24 日昼前。 黒色の溶岩流が中腹から流れ手前の海に流入。右(北)側に古い流れでできたと思われる土手が発達。左手前(南東)と左奥(南西)に斜 面崩壊でできた褐色の崖が発達している。青白い噴煙が頂部火口から上がっている。東から撮影。
写真2。新島の全景と溶岩流。2013 年11 月24 日昼前。
黒色の溶岩流が中腹から流れ手前の海に流入。右(北)側に古い流れでできたと思われる土手が発達。左手前(南東)と左奥(南西)に斜
面崩壊でできた褐色の崖が発達している。青白い噴煙が頂部火口から上がっている。東から撮影。
写真3。新島と火山弾の着水の様子。島の西側から2013 年11 月24 日昼前撮影。
写真3。新島と火山弾の着水の様子。島の西側から2013 年11 月24 日昼前撮影。
付録写真.高度50m 程度,北から見た西之島と新島(左側奥に見える台形状の島)

(火山噴火予知研究センター:中田節也)


朝日新聞社の取材機(ジェット)に同乗し、西之島2013年活動の観察を行った。この結果、西之島の南東に火砕丘が形成されていることが判った。

観測日時:2013年11月21日9時13分~31分(観察者/金子)

位置: 西之島新島の海岸線より南東に400~500m(山体の中心)(図1)

大きさ: 長径 約300m,短径 約100m (海面レベルを含む)

高さ: 約20~30m

山体の状況: 火砕丘は北西-南東方向に伸長しており,中心より南東側に火口がある(長径約100m) (図2).溶岩流は認められない.

噴火の状況: 1~2分に一回程度の割合で,マグマ水蒸気爆発に伴う噴煙が上がる(図2) .高さは200~300m程度,コックステールジェットを伴う.白色噴煙は最終的には900m程度の高度まで達している.

変色水: 噴火域の西側一帯に拡がっている(図3).新たな噴火点を示す変色域は認められない.

※位置・サイズ等は目測のため正確さに欠ける

図1. 2013年活動域の位置

※報道関係の方へ:朝日新聞社の協力により撮影しています。写真の引用については、朝日新聞社にお問合せください。

図2. コックステールジェットを伴う噴火 (北側より)

(火山噴火予知研究センター:金子隆之)

地震波輻射エネルギー総量の観点から見た西南日本における深部低周波微動の活動特性

案浦理(1,2)・小原一成(1)・前田拓人(1)

(1)東京大学地震研究所 (2)気象庁地震火山部

Geophysical Research Letters, 43, 2562–2567, doi:10.1002/2016GL067780.

地震波輻射エネルギー総量の観点から見た西南日本における深部低周波微動の活動特性

西南日本やCascadia等の沈み込み帯で発生する深部低周波微動は,短期的スロースリップイベント(SSE)と同期して活動するプレート境界におけるひずみの解放現象であることが知られています.これらの現象は,プレート境界固着域の深部隣接側の領域で発生することから,巨大地震発生と何らかの関係を有すると考えられており,その活動特性の解明は重要です.これまで,微動活動の全体像を把握するため,微動発生数の時空間分布に関する研究が盛んに行われてきました.しかし,微動の振幅が大きく活動度の高い時間帯には波形が複雑になるため,単純に震源決定精度により震源候補を選別してカタログを作った場合,活発な微動がカタログから漏れてしまう傾向があります.このような困難から,これまで地震波輻射エネルギー量を用いた定量的な観点からの微動活動特性の研究は,少数にとどまっていました.そこで本研究では,微動活動特性の定量的評価を行うため,微動活動が活発な時間帯における検出の取り逃がしを減らす新たな微動活動の解析手法を開発しました.各観測点で観測されるひとまとまりの微動活動を微動シーケンスとして始めに抽出した後に,震源決定・エネルギー輻射量を推定する新たな微動モニタリング手法です.この手法を用いて西南日本で11年間(2004年4月 ~ 2015年3月)に発生した微動を解析し,長期間にわたる微動活動を地震波輻射エネルギー量で評価することができました.

微動輻射エネルギー総量の空間分布から,西南日本の中では四国西部で非常に大きなエネルギーが輻射されていることが明らかになりました(図1).このことは,先行研究では取り逃がしていた部分も含め,活発な微動活動を適切に評価できたことを示しています.本研究ではさらに,tremor activity rate [J/km2/yr] (単位面積あたり,1年あたりの輻射エネルギー量)を用いて各領域の微動の活動度を評価しました.各領域での微動活動の時間変化は,それぞれほぼ一定の値を示していますが,豊後水道長期的SSE発生領域に近接する領域では2010年と2014年に定常時に比べて値が2~3倍程度に活発化していることが明らかになりました(図2).これら微動活動が活発化した時期は,豊後水道長期的SSEが発生している時期と対応し,微動活動が周辺の応力擾乱に影響を受けることを意味しています.

さらに,各領域で求められた定常時のtremor activity rateとプレートの沈み込み速度を比較しました(図3).沈み込むフィリピン海プレートの走向方向で見ると,いずれも紀伊水道を境とした西側の四国で高く,東側の紀伊・東海で低いといった対応関係を見出すことができました.一つの解釈としては,プレート沈み込み速度が速い地域ではプレート境界でより多くひずみが蓄積し,その結果微動活動も活発となっていることが考えられます.沈み込み速度,微動の活動度の境界となっている紀伊水道では,沈み込むプレートの走向方向が急激に変化しプレート形状が複雑になっていますが,このことが微動活動を含むひずみ解放プロセスに何らかの影響を与えていることが示唆されます.

図1. 11年間(2004年4月~2015年3月)に発生した微動による累積エネルギーの空間分布. (a) 本研究で得られた微動のエネルギーの空間分布. (b) 本研究(our result)と先行研究(Obara et al., 2010)の沈み込み帯の走向方向に対するエネルギー量のプロファイルの比較.
図1. 11年間(2004年4月~2015年3月)に発生した微動による累積エネルギーの空間分布.

(a) 本研究で得られた微動のエネルギーの空間分布.

(b) 本研究(our result)と先行研究(Obara et al., 2010)の沈み込み帯の走向方向に対するエネルギー量のプロファイルの比較.

図2. 各領域における微動のエネルギーのタイムヒストリー.各領域中の小領域(四国西部のA1–A4,四国東部のB1–B3,紀伊のC1–C3,東海のD1–D2)は下部の地図中に灰色の長方形で示されている.
図2. 各領域における微動のエネルギーのタイムヒストリー.各領域中の小領域(四国西部のA1–A4,四国東部のB1–B3,紀伊のC1–C3,東海のD1–D2)は下部の地図中に灰色の長方形で示されている.
図3. 沈み込み帯の走向方向に対する微動活動とプレート沈み込み速度 [Heki and Miyazaki, 2001] の比較.
図3. 沈み込み帯の走向方向に対する微動活動とプレート沈み込み速度 [Heki and Miyazaki, 2001] の比較.
参考文献

  • Heki, K., and S. Miyazaki (2001), Plate convergence and long-term crustal deformation in central Japan, Geophys. Res. Lett., 28, 2313–2316, doi:10.1029/2000GL012537.
  • Obara, K., S. Tanaka, T. MMaeda, and T. Matsuzawa (2010), Depth-dependent activity of non-volcanic tremor in southwest Japan, Geophys. Res. Lett., 37(13), L13306, doi:10.1029/2010GL043679.

愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターとの研究協定が締結されました

東京大学地震研究所と愛媛大学地球深部ダイナミックセンター(GRC)は、2015年12月24日に、相互の連携・協力を推進し、素粒子などを用いた地球深部研究の発展に、新たに重要な役割を果たすために連携・協力協定を締結しました。この協定締結を記念した「愛媛大GRC・東大地震研協定記念講演会」が4月29日に愛媛大学南加記念ホールで開催されます。
PDF(講演会チラシ


2016年4月14日熊本地震

ウェブサイト立ち上げ:2016年4月15日

最終更新日:2016年4月27日

「平成28年(2016年)熊本地震」は4月14日21時26分以降に発生した熊本県を中心とする一連の地震活動を指します。

(気象庁資料による)

 

*報道関係の皆さま、図・動画などを使用される際は、必ず「東京大学地震研究所」と、クレジットを付けてご使用ください。


平成28年(2016年)熊本地震(M7.3)の地表地震断層調査

(石山達也(東京大学地震研究所)・松多信尚(岡山大)・石黒聡士(愛知工業大)・
廣内大助(信州大)・杉戸信彦(法政大))

 平成28年(2016年)4月16日に発生した熊本地震(M7.3)に際しては、地表地震断層が出現したことが広島大学の研究グループによる第一報によって報告されました(熊原ほか、2016)。地表地震断層は、震央の位置や地震の規模、余震分布などから、布田川断層帯・日奈久断層帯(例えば地震調査研究推進本部, 2013)に沿って広範囲に出現していることが予想されました。このことから、筆者らは広島大学を中心とする大学研究者と地震直後より連絡を取りながら、地表地震断層の分布や性状を明らかにすべく、地震発生の翌17日から同20日 にかけて、地表踏査を実施しました。ここでは、その結果について概要を報告します。なお、調査に際しては、地震発生直後の大変な状況にも関わらず、被災地の方々から温かい励ましの言葉とご協力を賜りました。また、広島大学の熊原康博・後藤秀昭・中田 高の各氏、名古屋大学の鈴木康弘氏をはじめとする大学研究者から地震直後より頂いた有益な情報により、調査を円滑に進めることができました。ここに記して感謝いたします。

当グループでは、熊原ほか(2016)で布田川断層沿いに顕著な右横ずれ変位が確認された益城町堂園(どうぞん)を中心に、既存の活断層図(池田ほか, 2001)を頼りに、布田川断層に沿って約4 kmの範囲と、布田川断層南端部について調査を行いました。また、南阿蘇村立野および西原村小森牧野においても地表地震断層調査を行いました(図1)。直接のアクセスや観察が困難な箇所については、飛行規制域を確認したうえで、愛知工業大および岡山大所有のUAV (Unmanned Aerial Vehicle; 無人航空機)を利用した撮影を行い、地表地震断層の分布・性状の把握に努めました。調査に際しては、地表地震断層の確認された地点についてはハンディGPSで位置を計測するとともに、変形マーカーが確認された箇所では標尺などを利用して地表における地震時変位量の簡易計測を行いました。また、研究グループ間で連絡を取り合い、重要箇所については地表地震断層の認定について相互確認を行うとともに、効率的な調査に努めました。

益城町堂園の北、木山川左岸では、既存のマッピングで示された布田川断層に概ね沿うように、堤防上道路を右横ずれさせる地表地震断層が確認されました(写真1)。これより南の地点では、1条の地表地震断層に沿って、およそ2 mの右横ずれ変位が認められます。これに対して、木山川左岸では、地表地震断層は2条認められ、北西側にステップして、河床を横断し、北東に連続するものとみられます。河床では、護床工が座屈変形・剪断破壊を被る様が観察されます(写真2)。また、南より続くトレース沿いの右横ずれ変位は約20 cm, 左ステップして北東に連続するトレース沿いの右横ずれ変位は約150 cm、両者の合計は約170 cmとなっています。このように、地表地震断層は変位量をほぼ一定に保ちながら、数百メートルごとに左ステップ雁行する様子が複数の地点で観察されました。このような地表地震断層の配列は、右横ずれ断層で発生した地震で普遍的に認められてきたものです(例えばYeats et al., 1995; 中田・岡田編, 1999)。また、地表地震断層沿いには、その一般走向に対して斜交する開口亀裂や圧縮性の変形が認められ、これらはいずれも右横ずれ剪断帯内部の変形構造(例えば狩野・村田, 1998; 山路, 2000)を示すものと思われます。

布田川断層中央部の大きな変位とは対照的に、布田川断層の南西端部では、非常に微細な変形が認められました(写真3)。ここでは畑の畝に僅か20cm程度の右横ずれ変位が認められるのみです。

また、大規模な斜面災害の発生した南阿蘇村立野では、白川右岸の舗装道路に約70 cmの右横ずれ変位が認められました(写真4)。地表地震断層は雁行配列を呈しながら最高点353 m(国土地理院1/2.5万地形図『立野』)の孤立丘を横断して断続的に分布します(写真5)。UAVによる撮影からは、開口亀裂が左ステップ雁行しながら孤立丘を横断する様子が捉えられ、孤立丘が成長したことを示唆します(写真6)。その東への延長部は大規模な斜面崩壊によって直接確認することが出来ませんが、大局的には阿蘇カルデラ内に連続するものとみられ、延長部の調査結果が待たれます。

布田川断層の南東側には、新旧の扇状地面を変位させる出ノ口断層(九州活構造研究会, 1989)が分布します。この北東延長部、小森牧野周辺では、北西向きの山地斜面上に北西側低下の新鮮な崖地形が見出され、今回の地震に際して出現したものとみられます(写真7)。崖地形はおおよそ北東走向でほぼ連続的に分布し、UAVを用いた撮影では、横ずれ変位よりも縦ずれ変位が顕著に認められ、布田川断層沿いで見られた地表地震断層とは様相を異にしています。

このように、今回の調査からは、熊本地震に際して、布田川断層に沿って典型的な右横ずれの地表地震断層が出現したこと、また布田川断層に並走する断層に沿っても地表地震断層が出現したことが明らかになりました。現在進行中の大学・研究機関の調査グループによる調査研究によって、熊本平野から阿蘇カルデラにかけての熊本地震に伴う地表変位の全容が明らかになるものと期待されます。また、今後明らかになる本震・余震分布や震源過程、InSAR・GPSなどに基づく断層モデルなどの地球物理学的なデータと統合的に検討することにより、熊本地震と活断層の関係をより詳しく明らかにすることが出来ると考えています。

図1 今回の調査地点。背景の衛星画像はGoogle Earthを使用。また、活断層のトレース(赤・紫・水色の線)は中田・今泉編(2002)を使用。
図1 今回の調査地点。背景の衛星画像はGoogle Earthを使用。また、活断層のトレース(赤・紫・水色の線)は中田・今泉編(2002)を使用。
写真1 益城町堂園北、木山川右岸の右横ずれを示す地表地震断層。
写真1 益城町堂園北、木山川右岸の右横ずれを示す地表地震断層。
写真2 益城町堂園北、地震断層に沿って見られる木山川河床の護床工の座屈変形と剪断破壊。
写真2 益城町堂園北、地震断層に沿って見られる木山川河床の護床工の座屈変形と剪断破壊。
写真3 益城町飯田、布田川断層南端部に出現した右横ずれを示す地表地震断層。
写真3 益城町飯田、布田川断層南端部に出現した右横ずれを示す地表地震断層。
写真4 南阿蘇村立野に出現した右横ずれを示す地表地震断層。
写真4 南阿蘇村立野に出現した右横ずれを示す地表地震断層。
写真5 南阿蘇村立野の孤立丘を横断する地表地震断層。愛工大所有のUAVを使用して撮影した。
写真5 南阿蘇村立野の孤立丘を横断する地表地震断層。愛工大所有のUAVを使用して撮影した。
写真6 南阿蘇村立野の孤立丘を横断する開口亀裂。愛工大所有のUAVを使用して撮影した。
写真6 南阿蘇村立野の孤立丘を横断する開口亀裂。愛工大所有のUAVを使用して撮影した。
写真6 西原村小森牧野に出現した地表地震断層。岡山大所有のUAVを使用して撮影した。
写真6 西原村小森牧野に出現した地表地震断層。岡山大所有のUAVを使用して撮影した。

文献 

  • 池田安隆・千田 昇・中田 高・金田平太郎・田力正好・高沢信司(2001)都市圏活断層図『熊本』, 国土地理院技術資料D1-No. 388.
  • 地震調査研究推進本部(2013)九州地域の活断層の地域評価, http://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/regional_evaluation/kyushu-detail/, 2016年4月15日確認
  • 狩野謙一・村田明広(1998)構造地質学, 朝倉書店, 300 p.
  • 活断層研究会編(1991)「新編日本の活断層-分布図と資料-」,東京大学出版会,437 p.
  • 国土地理院(2016)航空写真判読による布田川断層帯周辺の地表の亀裂分布図, http://www.gsi.go.jp/common/000139899.pdf, 2016年4月20日確認
  • 熊原康博・後藤秀昭・中田 高(2016)2016 年熊本地震・地震断層に関する緊急速報, http://jsaf.info/jishin/items/docs/20160417172738.pdf, 2016年4月16日確認
  • 九州活構造研究会(編)(1989)九州の活構造, 東京大学出版会, 553 p.
  • 中田 高・岡田篤正(編)(1999)野島断層[写真と解説]兵庫県南部地震の地震断層, 東京大学出版会, 208 p.
  • 中田 高・今泉俊文(編)(2002)活断層詳細デジタルマップ,東京大学出版会,DVD2枚+解説書68 p.
  • 山路 敦(2000)理論テクトニクス入門, 朝倉書店, 287 p.
  • Yeats, R., Sieh, K., and Allen, C. R. (1996), The Geology of Earthquakes, Oxford University Press, 568 p.

 


2016年4月14・16日熊本地震の震源過程

 

http://taro.eri.u-tokyo.ac.jp/saigai/2016kumamoto/index.html

(纐纈一起・小林広明・三宅弘恵
東京大学地震研究所・情報学環)


 

2016年4月16日熊本地震(Mj7.3)の強い揺れの特徴

(強震動グループ)

≪画像をクリックして動画をご覧ください≫

図1 地震発生から30秒,120秒後の揺れの様子。防災科学技術研究所の強震観測網(K-NET, KiK-net)データを用いて,日本列島の各地点の揺れの強さを強調して表示。赤は震央,オレンジ色のかたまりは,地震の強い揺れの広がり(地面の揺れの強さ)を現す【画像クリックで動画を表示】。
図1 地震発生から30秒,120秒後の揺れの様子。防災科学技術研究所の強震観測網(K-NET, KiK-net)データを用いて,日本列島の各地点の揺れの強さを強調して表示。赤は震央,オレンジ色のかたまりは,地震の強い揺れの広がり(地面の揺れの強さ)を現す。震源から断層運動が進行した北西方向に強い揺れが放出され、九州全域が 数十秒間強く揺れ、その後、揺れが秒速3キロメートル程度の速度で西日本に広がるようすがわかる。大阪、名古屋、関東などの平野では、揺れが増幅され長く続いているようすもわかる。 【画像クリックで動画を表示】。
図2 地震による地表の最大加速度(PGA; cm/s/s)と最大変位(PGD; cm)の広がり。浅い地震(h=10 km)のため、震源(星印)の直上には強い加速度が現れたが、大きな加速度を作り出す短周期の地震動は距離減衰が大きいため、震源から遠ざかると加速度が急激に減少している。これに対して、地面の「変位」は長周期の地震動成分により作り出されるため、距離減衰が小さい。遠く離れた大阪平野や関東平野などでは、長周期地震動により作られた大きな変位が確認できる。
図2 地震による地表の最大加速度(PGA; cm/s/s)と最大変位(PGD; cm)の広がり。浅い地震(h=10 km)のため、震源(星印)の直上には強い加速度が現れたが、大きな加速度を作り出す短周期の地震動は距離減衰が大きいため、震源から遠ざかると加速度が急激に減少している。これに対して、地面の「変位」は長周期の地震動成分により作り出されるため、距離減衰が小さい。遠く離れた大阪平野や関東平野などでは、長周期地震動により作られた大きな変位が確認できる。
fig3
図3 震源に近い2観測点(KiK-net益城、K-NET熊本)の(a)加速度波形(南北方向の揺れ成分;上)と、これを時間積分して求めた(b)速度波形を示す。熊本地点での加速度波形を見ると、S波の後続部分に通常のなめらかな波形とは異なる「尖った」波形が見られる。これは、強い揺れによって生じた地盤の非線形応答によるものと考えられる。
図5 地震の規模が大きく(Mj7.3)、かつ震源が浅かった(h=10 km)ことから、長周期地震動が強く発生した。4地点(一の宮、大分、此花、東雲)で観測された長周期地震動の例(地動速度、南北成分)を示す。参考のため、2003年十勝沖地震(Mj8.0)において長周期地震動による石油タンクのスロッシング事故が起きた苫小牧で観測された長周期地震動の波形も示す。
図5 地震の規模が大きく(Mj7.3)、かつ震源が浅かった(h=10 km)ことから、長周期地震動が強く発生した。4地点(一の宮、大分、此花、東雲)で観測された長周期地震動の例(地動速度、南北成分)を示す。参考のため、2003年十勝沖地震(Mj8.0)において長周期地震動による石油タンクのスロッシング事故が起きた苫小牧で観測された長周期地震動の波形も示す。
図4 強い揺れを観測したKiK-net益城とK-NET熊本の揺れの速度応答スペクトルを求めた(それぞれ、赤と緑の実線)。点線は、4/14日の地震(Mj6.5)の応答スペクトルを表す。どちらの地点も、4/14日の地震をうわまわる強い揺れであったことがわかる。益城では、4/14日の地震では0.6秒前後に強い応答見られたが、この地震では0.9秒前後に強い応答が起きている。おそらく、強い揺れの地盤の非線形応答(あるいは液状化など)により地盤の増幅特性が変化したものと考えられる。
図4 強い揺れを観測したKiK-net益城とK-NET熊本の揺れの速度応答スペクトルを求めた(それぞれ、赤と緑の実線)。点線は、4/14日の地震(Mj6.5)の応答スペクトルを表す。どちらの地点も、4/14日の地震をうわまわる強い揺れであったことがわかる。益城では、4/14日の地震では0.6秒前後に強い応答見られたが、この地震では0.9秒前後に強い応答が起きている。おそらく、強い揺れの地盤の非線形応答(あるいは液状化など)により地盤の増幅特性が変化したものと考えられる。
図6 速度応答スペクトルを見ると、震源に近い、KiK-net一の宮地点(熊本)での長周期地震動には、広い周期帯で十勝沖地震の苫小牧を上回る強い速度応答が確認できた。ただし、図5からわかるように、震源に近い一宮地点の地震動の継続時間は30秒程度であり、苫小牧で観測された数分間の長い長周期地震動に比べると、構造物に与える影響は比較的小さいことも考えられる。大分地点での長周期地震動の応答レベルは、苫小牧の半分程度であった。此花や東雲は、震源から数百キロ以上離れており振幅は小さいが、それぞれ6秒と10秒の卓越周期を持つ長周期地震動が観測された。
図6 速度応答スペクトルを見ると、震源に近い、KiK-net一の宮地点(熊本)での長周期地震動には、広い周期帯で十勝沖地震の苫小牧を上回る強い速度応答が確認できた。ただし、図5からわかるように、震源に近い一宮地点の地震動の継続時間は30秒程度であり、苫小牧で観測された数分間の長い長周期地震動に比べると、構造物に与える影響は比較的小さいことも考えられる。大分地点での長周期地震動の応答レベルは、苫小牧の半分程度であった。此花や東雲は、震源から数百キロ以上離れており振幅は小さいが、それぞれ6秒と10秒の卓越周期を持つ長周期地震動が観測された。

(古村孝志)


平成28年(2016年)熊本地震(M6.5)の地学的背景と布田川断層帯・日奈久断層帯について

(佐藤比呂志・石山達也・加藤直子)

 平成28年(2016年)熊本地震(M6.5)は、九州を代表する活断層である布田川断層帯・日奈久断層帯の近傍で発生しました。東京大学地震研究所では、地震調査委員会での議論の一助となるべく、震源域の活断層の地学的な特徴について資料を作成・提出しました。ここでは、提出した資料に基づいて、今回の地震と布田川断層帯・日奈久断層帯との関係や、地学的な背景について予察的な報告を行います。

日奈久断層帯は、熊本県益城町木山付近から芦北町を経て、八代海南部に至る断層帯で、北東-南西方向に延び、全体の長さは約81 kmにおよぶ長大な活断層です。

日奈久断層帯は、変動地形、重力異常や地質構造などの特徴から、北より高野-白旗区間(長さ16 km)、日奈久区間(長さ40 km)、八代海区間(長さ30 km)に区分されています(推進本部、2013)。本断層帯の主要な部分を占める日奈久区間では、断層に沿って谷や尾根の明瞭な右横ずれをともない、右横ずれ主体の活断層です。地質構造・微小地震活動などの特徴から、北西傾斜の断層面をもつと考えられます。これに対して、今回の主な地震発生域である高野-白旗区間では、地質構造・微小地震活動などからほぼ垂直な断層面をもつと考えられます。また、活断層の地表表現も日奈久区間と異なり、崖地形を伴う比較的不連続な断層トレースで特徴付けられます。両区間の断層トレースはほぼ連続的に見えますが、詳しく見るとこの様な活断層の構造的な特徴についての違いがあります。布田川断層帯は、重力異常からも北側が低下する構造境界として明瞭です。また、日奈久断層の中央部の日奈久区間では、西側に低下した構造が明瞭です。これに対して、高野-白旗区間では、重力異常から推定される地下の構造は複雑です。このような区間ごとの断層構造の違いは、断層の成熟度の違いに対応していると考えられます。

日奈久断層帯では、これまで多くのトレンチ・ボーリングなどの古地震調査が行われてきました。その結果によれば、高野-白旗区間では、約1,200-1,600年前に最新活動が起こったとされています。これに対して、南側の2区間の最新活動はこれよりも有意に古いとされています(推進本部、2013)。このような区間ごとの古地震活動は、データは少ないながら、区間ごとの構造的な特徴の相違に対応しているようにも見えます。

今回の地震の本震および余震は、大局的には日奈久断層帯の高野-白旗区間沿いに発生しているように見えます。今後は、余震観測を行って正確な余震の位置を決定することや、地震にともなって地表に断層が出現したかどうか、その分布がどうなっているか、といった変動地形調査を実施するなどし、今回の地震の性質そのものをまず明らかにすることが大切です。また、余震の一部は布田川断層帯でも発生しているとのデータもありますので、この点についても詳しく検討する必要があります。その上で、今回の地震発生域と断層帯のセグメンテーションの関係や、本震・余震の震源メカニズム、地殻構造と地震発生様式を明らかにすることが、今回の地震の背景を正しく理解する上で非常に大切だと言えます。

 

文献 

地震調査研究推進本部(2013)九州地域の活断層の地域評価, http://www.jishin.go.jp/evaluation/long_term_evaluation/regional_evaluation/kyushu-detail/, 2016年4月15日確認

1

2
図 九州南部の短波長重力異常勾配図(中部大学工藤健教授作成)(推進本部、2013)
3
図 震源域付近の断層帯の分布と短波長重力異常勾配図(中部大学工藤健教授作成)(推進本部、2013)

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5
図 2016年4月16日 熊本地方の地震(M6.5)・震源域周辺の活断層の矩形モデル(地震調査推進本部,2013)。     本震源域の震源断層(高野-白旗区間)の傾斜角度は、ほぼ鉛直と推定されるのに対して、日奈久断層の日奈久区間、布田川断層帯は北西方向に傾斜した断層と推定されている。断層の傾斜は、重力異常による地質構造や微小地震活動の特徴から推定。

 


2016年4月14日 熊本県熊本地方の地震(Mj6.5)の強い揺れの特徴

(強震動グループ)

図1 地震による地表の最大加速度の分布(PGA; cm/s/s)。浅い地震(h=10 km)のため、震源(☆)の直上は水平動の加速度が最大500cm/s/sを超える強い揺れとなった。揺れは、震源から遠ざかるにつれて、同心円を描くように急激に弱まっている。防災科学技術研究所K-NET, KiK-net強震観測データを用いて作図。
図1 地震による地表の最大加速度の分布(PGA; cm/s/s)。浅い地震(h=10 km)のため、震源(☆)の直上は水平動の加速度が最大500cm/s/sを超える強い揺れとなった。揺れは、震源から遠ざかるにつれて、同心円を描くように急激に弱まっている。防災科学技術研究所K-NET, KiK-net強震観測データを用いて作図。
図2 この地震による水平動の加速度の距離減衰を、加速度距離減衰式(地震動予測式;Si and Midorikawa, 1999による)と比較。震源から約20 km以内では、水平加速度500 cm/s/sを超える強い揺れであったが、その後、距離とともに急激に減衰している。黒線は加速度距離式から予想される加速度(Mw=6.1, h=10 km)。点線は予測式の2倍と半分の値の範囲を示す。
図2 この地震による水平動の加速度の距離減衰を、加速度距離減衰式(地震動予測式;Si and Midorikawa, 1999による)と比較。震源から約20 km以内では、水平加速度500 cm/s/sを超える強い揺れであったが、その後、距離とともに急激に減衰している。黒線は加速度距離式から予想される加速度(Mw=6.1, h=10 km)。点線は予測式の2倍と半分の値の範囲を示す。
図3 震源に近い場所で強い揺れを記録した2地点(KiK-net益城、K-NET熊本)の地動速度波形(南北方向の揺れ成分)。1995年兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)の震源断層の近くで震度7相当の強い揺れを観測した、神戸大学と神戸海洋気象台の記録と比較する。兵庫県南部地震と同様に、周期1秒〜2秒程度のパルス状の強い揺れ成分が含まれる、強い揺れが続く時間が十数秒程度と比較的短い、など共通点が多い。
図3 震源に近い場所で強い揺れを記録した2地点(KiK-net益城、K-NET熊本)の地動速度波形(南北方向の揺れ成分)。1995年兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)の震源断層の近くで震度7相当の強い揺れを観測した、神戸大学と神戸海洋気象台の記録と比較する。兵庫県南部地震と同様に、周期1秒〜2秒程度のパルス状の強い揺れ成分が含まれる、強い揺れが続く時間が十数秒程度と比較的短い、など共通点が多い。
図4 上記の4つの強い揺れ記録(熊本地方の地震、兵庫県南部地震)について速度応答スペクトルを計算すると、益城と熊本地点の揺れには、周期0.4〜0.6秒の短周期成分に加え、周期1〜2秒程度のやや長い周期成分も強かったことがわかる。この特徴は、兵庫県南部地震での神戸海洋気象台や神戸大学での揺れの記録と似ている。なお、周期1〜2秒の強い揺れは、木造家屋に大きな被害を与えると考えられる。
図4 上記の4つの強い揺れ記録(熊本地方の地震、兵庫県南部地震)について速度応答スペクトルを計算すると、益城と熊本地点の揺れには、周期0.4〜0.6秒の短周期成分に加え、周期1〜2秒程度のやや長い周期成分も強かったことがわかる。この特徴は、兵庫県南部地震での神戸海洋気象台や神戸大学での揺れの記録と似ている。なお、周期1〜2秒の強い揺れは、木造家屋に大きな被害を与えると考えられる。

(古村孝志)

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ウェブサイト立ち上げ:2016年4月15日
更新日:2016年4月19日

2016年4月14日、21:26分頃、熊本県熊本地方でM6.5(気象庁による)の地震がありました。

*報道関係の皆さま、図・動画などを使用される際は、必ず「東京大学地震研究所」と、クレジットを付けてご使用ください。


2016年4月14・16日熊本地震の震源過程

http://taro.eri.u-tokyo.ac.jp/saigai/2016kumamoto/index.html

(纐纈一起・小林広明・三宅弘恵 東京大学地震研究所・情報学環)


 

2016年4月16日熊本地震(Mj7.3)の強い揺れの特徴

≪画像をクリックして動画をご覧ください≫

20160418fig.1
図1 地震発生から30秒,120秒後の揺れの様子。防災科学技術研究所の強震観測網(K-NET, KiK-net)データを用いて,日本列島の各地点の揺れの強さを強調して表示。赤は震央,オレンジ色のかたまりは,地震の強い揺れの広がり(地面の揺れの強さ)を現す。震源から断層運動が進行した北西方向に強い揺れが放出され、九州全域が 数十秒間強く揺れ、その後、揺れが秒速3キロメートル程度の速度で西日本に広がるようすがわかる。大阪、名古屋、関東などの平野では、揺れが増幅され長く続いているようすもわかる。 【画像クリックで動画を表示】。
図2 地震による地表の最大加速度(PGA; cm/s/s)と最大変位(PGD; cm)の広がり。浅い地震(h=10 km)のため、震源(星印)の直上には強い加速度が現れたが、大きな加速度を作り出す短周期の地震動は距離減衰が大きいため、震源から遠ざかると加速度が急激に減少している。これに対して、地面の「変位」は長周期の地震動成分により作り出されるため、距離減衰が小さい。遠く離れた大阪平野や関東平野などでは、長周期地震動により作られた大きな変位が確認できる。
図2 地震による地表の最大加速度(PGA; cm/s/s)と最大変位(PGD; cm)の広がり。浅い地震(h=10 km)のため、震源(星印)の直上には強い加速度が現れたが、大きな加速度を作り出す短周期の地震動は距離減衰が大きいため、震源から遠ざかると加速度が急激に減少している。これに対して、地面の「変位」は長周期の地震動成分により作り出されるため、距離減衰が小さい。遠く離れた大阪平野や関東平野などでは、長周期地震動により作られた大きな変位が確認できる。
図3 震源に近い2観測点(KiK-net益城、K-NET熊本)の(a)加速度波形(南北方向の揺れ成分;上)と、これを時間積分して求めた(b)速度波形を示す。熊本地点での加速度波形を見ると、S波の後続部分に通常のなめらかな波形とは異なる「尖った」波形が見られる。これは、強い揺れによって生じた地盤の非線形応答によるものと考えられる。
図3 震源に近い2観測点(KiK-net益城、K-NET熊本)の(a)加速度波形(南北方向の揺れ成分;上)と、これを時間積分して求めた(b)速度波形を示す。熊本地点での加速度波形を見ると、S波の後続部分に通常のなめらかな波形とは異なる「尖った」波形が見られる。これは、強い揺れによって生じた地盤の非線形応答によるものと考えられる。
図4 強い揺れを観測したKiK-net益城とK-NET熊本の揺れの速度応答スペクトルを求めた(それぞれ、赤と緑の実線)。点線は、4/14日の地震(Mj6.5)の応答スペクトルを表す。どちらの地点も、4/14日の地震をうわまわる強い揺れであったことがわかる。益城では、4/14日の地震では0.6秒前後に強い応答見られたが、この地震では0.9秒前後に強い応答が起きている。おそらく、強い揺れの地盤の非線形応答(あるいは液状化など)により地盤の増幅特性が変化したものと考えられる。
図4 強い揺れを観測したKiK-net益城とK-NET熊本の揺れの速度応答スペクトルを求めた(それぞれ、赤と緑の実線)。点線は、4/14日の地震(Mj6.5)の応答スペクトルを表す。どちらの地点も、4/14日の地震をうわまわる強い揺れであったことがわかる。益城では、4/14日の地震では0.6秒前後に強い応答見られたが、この地震では0.9秒前後に強い応答が起きている。おそらく、強い揺れの地盤の非線形応答(あるいは液状化など)により地盤の増幅特性が変化したものと考えられる。
図5 地震の規模が大きく(Mj7.3)、かつ震源が浅かった(h=10 km)ことから、長周期地震動が強く発生した。4地点(一の宮、大分、此花、東雲)で観測された長周期地震動の例(地動速度、南北成分)を示す。参考のため、2003年十勝沖地震(Mj8.0)において長周期地震動による石油タンクのスロッシング事故が起きた苫小牧で観測された長周期地震動の波形も示す。
図5 地震の規模が大きく(Mj7.3)、かつ震源が浅かった(h=10 km)ことから、長周期地震動が強く発生した。4地点(一の宮、大分、此花、東雲)で観測された長周期地震動の例(地動速度、南北成分)を示す。参考のため、2003年十勝沖地震(Mj8.0)において長周期地震動による石油タンクのスロッシング事故が起きた苫小牧で観測された長周期地震動の波形も示す。
fig.6
図6 速度応答スペクトルを見ると、震源に近い、KiK-net一の宮地点(熊本)での長周期地震動には、広い周期帯で十勝沖地震の苫小牧を上回る強い速度応答が確認できた。ただし、図5からわかるように、震源に近い一宮地点の地震動の継続時間は30秒程度であり、苫小牧で観測された数分間の長い長周期地震動に比べると、構造物に与える影響は比較的小さいことも考えられる。大分地点での長周期地震動の応答レベルは、苫小牧の半分程度であった。此花や東雲は、震源から数百キロ以上離れており振幅は小さいが、それぞれ6秒と10秒の卓越周期を持つ長周期地震動が観測された。

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本所永遠の使命

←地震研正門脇のモニュメント 本郷通りから少し奥まったところにある地震研究所正門脇に、不思議なモニュメントがあります。その正体は、もうしばらく後で。 門を入ると、もっとも奥の真新しい建物が1号館です。エレベーターの前に立つと、ドアの上に1枚の銘板が掲げられており、次のような文章が刻まれています。開所10周年の年に、地震研究所設立に大きな役割を果たした寺田寅彦によって撰せられたものです。

←寺田寅彦博士により起草された本所の使命 明治廿四年濃尾地震の災害に鑑みて震災豫防調査會が設立され、我邦における地震學の研究が漸く其緒に就いた大正十二年帝都並に關東地方を脅かした大地震の災禍は更に痛切に日本に於ける地震學の基礎的研究の必要を啓示するものであつた。この天啓に促されて設置されたのが當東京帝國大學附属地震研究所である。創立の際專らその事に盡瘁した者は後に本所最初の所長事務取扱の職に當つた工學博士末廣恭二であつた。其の熱誠は時の當大學總長古在由直を動かし、その有力なる後援と文部省當局の指示とによつて遂に本所の設立を見るに至つたのが大正十四年十一月十三日であつた。本所永遠の使命とする所は地震に關する諸現象の科學的研究と直接又は間接に地震に起因する災害の豫防並に輕減方策の探究とである。この使命こそは本所の門に出入する者の日夜心肝に銘じて忘るべからざるものである。 昭和十年十一月十三日           地震研究所