【受賞】森田裕一教授・及川純助教らの論文が日本火山学会論文賞を受賞

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森田 裕一教授および及川純助教らによる論文が、「日本火山学会論文賞」を受賞しました。

 

論文名:Volume change of the magma reservoir relating to the 2011 Kirishima Shinmoe-dake eruption—Charging, discharging and recharging process inferred from GPS measurements

著者:Shigeru Nakao, Yuichi Morita, Hiroshi Yakiwara, Jun Oikawa, Hideki Ueda, Hiroaki Takahashi, Yusaku Ohta, Takeshi Matsushima, and Masato Iguchi

掲載誌Earth Planets Space, Vol. 65 (No. 6), pp. 505-515, 2013

【受賞】前田拓人助教が森田記念賞を受賞

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観測開発基盤センターの前田拓人助教が、2015年10月31日に、「第11回森田記念賞」を受賞。

 

授賞理由:前田拓人氏は、地震・津波波動伝播現象の背景物理の洞察に基づき、地殻活動や地球内部構造の解明や巨大地震発生に伴う地震動と津波のための記録解析・モニタリング手法を多数提案、実現してきた。
 前田氏の研究は多岐にわたり、これらは主に3つに分けられる。第一は、申請者の理論的考察の礎となる、地震波動伝播の理論的研究である。観測される長周 期表面波のコーダ波の形成の仕組みの解明や、不均質な媒質中を伝播するP波、S波及び表面波の散乱過程の数理的モデリング(業績1)を進めた。第二は、高 密度波形記録の徹底的な調査にもとづく、地殻活動のモニタリング手法の開発と新現象の発見である。巨大地震発生帯深部で発生する深部低周波微動の新たな震 源決定法の開発、常時微動連続記録解析にもとづく地殻構造の時間変化の発見、大地震に伴う海中音波(T-phase)の海山列からの反射現象の発見、海底 津波記録を用いた2011年東北地方太平洋沖地震の震源過程の推定(業績2)など、既存のデータを丁寧に解析した研究である。そして、第三は、地震波や津 波伝播などに関する高度な数値シミュレーション技法の開発と実施である。海溝型巨大地震に励起される地震動、地殻変動、津波はこれまで個別に数値計算され てきたが、複雑に絡み合ったこれらの現象を統一的に再現する手法を提案し(業績3)、「京」コンピュータ等の大型計算機上でシミュレーションを実現した。 東北地方太平洋沖地震の発生後、日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の整備が進められるなど、地震・津波のモニタリング研究の重要性はますます増大 しており、前田氏のこの先駆的な研究は、地震・津波現象の理解だけでなく、リアルタイム解析への応用により防災・減災に大きく貢献する可能性が高い。
 以上のように、前田拓人氏は森田記念賞にふさわしい優れた研究業績を上げたものと評価される

 

・森田記念賞は、東北大学理学部・理学研究科の物理系学科・専攻に所属するあるいは所属していた者、及び卒業生で、物理科学の分野ですぐれた業績をあげた若手研究者に授与されるものです。

【受賞】中田節也教授がIUGG名誉会員に表彰

IUGGFellowship

 

IUGG(International Union of Geodesy and Geophysics)は、測地学と地球物理学に関する国際的な学術団体で、4年に一度総会が開催されており、2015年はプラハで開かれました。

IUGG Fellowship(Honorary Membership) は、測地学と地球物理学の分野の国際的な貢献のために、IUGGの委員として活躍した会員を賞するものです。

7月1日の総会で、火山噴火予知研究センターの中田節也教授が表彰されました。

 

【プレスリリース】インターネット技術を用いた新規開発ケーブル式 海底地震・津波観測システムの設置 ~三陸沖の地震・津波観測を強化~

岩手県釜石市沖の海底に、9月4日、海底ケーブル式地震・津波観測システムが設置されます。

詳細:プレスリリース資料(PDF)

【受賞】平田直教授が「平成27年度防災功労者防災担当大臣表彰」を受賞

地震予知研究センターの平田 直 教授が、「平成27年度防災功労者防災担当大臣表彰」を受賞しました。

 

「防災功労者防災担当大臣表彰」とは、日ごろから防災に関し、防災思想の普及又は防災体制の整備に尽力され、あるいは災害時における防災活動に顕著な功績のあった個人又は団体を、内閣府が表彰するもので、「防災週間」における各種行事の一環としてされているものです。

 

功績の概要

「同氏は、観測地震学において優れた成果を残しており、最先端の研究・教育と地域の防災力の向上に幅広く貢献するほか、防災行政へ有用な提言を行うなど、その活動は非常に幅広いものである。 また、研究活動においては、大規模かつ集中的な観測によって地殻の不均質構造と微小地震活動の時間的・空間的分布の関係を明らかにするなどの取り組みを行っており、高い学術成果を挙げている。また、(一社)防災教育普及協会の会長を務め、防災教育の普及に積極的に取り組むなど、多岐にわたる活動を行っている。 さらに、防災行政において、「防災関連調査研究の戦略的推進ワーキンググループ」(中央防災会議 防災対策実行会議)副主査、「首都直下地震モデル検討会」(中央防災会議)委員、「防災教育チャレンジプラン」実行委員を務め、首都直下地震が発生した場合の震度分布・津波だか等の推計、防災対策に関する調査・研究の戦略的推進に向けた取組み方針の策定において、幅広い知見から数多くの有用な提言を行うなど、防災体制の整備に多大な貢献をした。」

表彰式では受賞者代表

【受賞】加藤照之教授が2014年度衛星通信研究賞を受賞

地球計測系研究部門の加藤照之教授が、「2014年度衛星通信研究賞」を受賞 しました。

 

「衛星通信研究賞」は、衛星通信研究専門委員会において行われた講演のうち、特に優秀であり 今後の活躍が期待できると認められた講演論文に対して、一般社団法人電子情報通信学会より表彰がされる賞です。(衛星通信研究賞規約より一部抜粋)

電子情報通信学会表彰状

受賞対象論文:「技術試験衛星VIII型(ETS-VII)を用いた海上ブイからのデータ伝送実 験~津波の早期検出をめざして~」

著者:山本伸一、川崎和義、寺田幸博、加藤照之、橋本剛正、本橋修、齊田優一、松澤亮

抄録:津波を早期に検出することで人的被害を軽減することを目指し,海上に設置されたブイから津波の情報を衛星経由で伝送する実験を行った.実験は,準天頂衛星「みちびき」を用いてブイ上のGPS津波計に補強情報を伝送し,ブイ上で津波の検出が可能な精度で精密単独測位を行い,技術試験衛星Ⅷ型(ETS-VIII)「きく8号」を用いて地上の基地局に測位結果を伝送する.本実験で,データの伝送に衛星を用いることで岸から遠く離れた沖合から津波情報を収集することができ,津波の早期検出が可能となることを実証した.

【受賞】田中愛幸助教が国際測地学協会ボンフォード賞を受賞

地球計測系研究部門の田中愛幸助教が、今夏プラハで開催された2015年国際測地学・地球物理学連合(IUGG)総会において、Guy Bomford賞を受賞した。

同賞は、国際測地学協会(IAG)が、測地学分野の世界の40歳以下の研究者から4年に1度、1名を選んで授与しているものであり、測地学の若手研究者にとって最高の賞である。日本人としては3人目の受賞となった。地球ダイナミクス・広域テクトニクス・氷河性地殻均衡(GIA)の分野における優れた理論的・観測的研究により、測地学・地震学にまたがる学際的研究領域を開拓した功績が認められた。授与式は、6月25日のIAG学術総会開会式の中で行われ、それに引き続き、田中助教による記念講演が行われた。また、IUGG総会の閉会式でも、田中助教の受賞が大きく取り上げられた。

DSC02049IMG_3052 IAG Guy Bomford Prize2015

【プレスリリース】山下裕亮特任研究員らの論文がScienceに掲載

南海トラフ西方プレート境界浅部すべりについての新たな知見
~九州東方・日向灘で発生する浅部低周波微動の発見と移動特性の解明~

 

論文:Migrating tremor off southern Kyushu as evidence for slow slip of a shallow subduction interface (Abstract/Full text)

著者:Yusuke Yamashita, Hiroshi Yakiwara, Youichi Asano, Hiroshi Shimizu, Kazunari Uchida, Shuichiro Hirano, Kodo Umakoshi, Hiroki Miyamachi, Manami Nakamoto, Miyo Fukui, Megumi Kamizono, Hisao Kanehara, Tomoaki Yamada, Masanao Shinohara, Kazushige Obara

雑誌:Science  5月8日(金)(米国東部時間)掲載(doi: 10.1126/science.aaa4242)

 

 

概要
 東京大学地震研究所の山下 裕亮特任研究員, 山田 知朗助教, 篠原 雅尚教授, 小原 一成教授 と九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センターの清水洋教授らは,鹿児島大学・長崎大学・東京大学地震研究所・防災科学技術研究所との共同研究により, 九州東方・日向灘で実施された海底地震観測によって南海トラフ近傍のプレート境界浅部で発生する「低周波微動」の発見に成功し,その詳細な活動特性を初めて明らかにしました.その結果,プレート境界深部で発生する「低周波微動」と同様の移動現象を有することから,プレート境界浅部でも「スロースリップ」が発生している可能性があります.東北地方太平洋沖地震の発生以降,根本的な見直しが求められているプレート境界浅部すべりに関する理解を深める上で,非常に重要な新たな知見あり,海溝型巨大地震とそれに伴う津波の発生モデルの高度化に役立てられると期待されます.

本研究成果は, 5月8日(金)(米国東部時間)に米国科学雑誌「Science」に掲載されました.

 

背景
 プレート境界において海溝型巨大地震がたびたび発生する南海トラフ域では,スロー地震(注1)と呼ばれる,通常の地震とは異なる特徴を有する断層すべり現象が発生していることが,ここ10数年の間に明らかにされてきました(例えば,Obara, 2011).特に,プレート境界固着域の深部隣接側では,低周波微動(注2)・超低周波地震(注3)・スロースリップ(注4)という,3種類の異なるスロー地震が時空間的に同期して観測されており,プレート境界で数日間継続するゆっくりとしたすべり(スロースリップ)に伴って,数Hz(低周波微動)および数10秒(超低周波地震)に卓越する振動が生じたものと考えられています.フィリピン海プレートが沈み込みを開始する南海トラフ近傍でも,超低周波地震の存在が明らかにされてきましたが,震源域は陸域観測網から遠く離れているため,それ以外のスロー地震についてはほとんどわかっていませんでした.

九州東方の日向灘は南海トラフ巨大地震震源域の西方に位置し,M7級のプレート境界地震が数十年間隔で発生するなど,地震活動が活発な領域です.また,スロー地震の1つである浅部超低周波地震の活発な活動域としても知られています.東北地方太平洋沖地震以降,プレート境界浅部すべりに関する見直しが図られる中,日向灘ではプレート境界浅部すべりに関する知見は十分ではありませんでした.九州大学は,鹿児島大学・長崎大学・東京大学地震研究所と共同で,日向灘におけるスロー地震を含むプレート境界浅部すべり現象を明らかにすることを目的として,2013年4月~7月にかけて海底地震計(注5)12台を用いた観測を実施しました.海底地震計の設置・回収は,長崎大学水産学部練習船・長崎丸(842 t)第369次・374次航海にて行われました.(図1)

 

成果
 約3ヶ月の観測期間中,通常の地震とは異なるシグナルが2013年5月下旬から約1ヶ月間に渡り海底地震計で記録されました.波形の特徴や震源決定の結果(図2)から,このシグナルはプレート境界浅部で発生する低周波微動(浅部低周波微動)であり,日向灘では今回の海底地震観測によって初めて検出されました.浅部低周波微動は,これまでに紀伊半島沖で観測されたことがありますが(Obana and Kodaira, 2009),本共同研究グループは,浅部低周波微動活動の詳細や,他のスロー地震との関係など,いくつかの重要な特徴が明らかにし,プレート境界浅部すべりについての新たな知見を得ました.

本共同研究の重要な成果のひとつは,浅部低周波微動と浅部超低周波地震の活動の一致性を初めて明らかにしたことです.長周期の波動を生成する超低周波地震は,防災科学技術研究所による研究によって陸域観測網でも検知されていましたが,今回の海底地震計による直上観測により,浅部低周波微動の発生源を高精度決定することが可能となり,これら2種類のスロー地震がほぼ同様の活動パターンを示すことが確認できました(図3).このことは深部で観測されているスロー地震と共通しています.さらに,高精度決定された浅部低周波微動が明瞭な「震源移動」を示すことが分かりました.特に,1日数10kmの速度で移動する主要な活動と,その数倍ものスピードで逆方向に高速移動する2つのモード(図4)を有することが,深部低周波微動(例えば,Obara, 2011)と非常によく似ています.以上のように,本共同研究グループは,プレート境界の深部と浅部で発生するスロー地震の活動様式が共通していることが初めて明らかにしました.これまでの観測・シミュレーション研究によると,深部の低周波微動や超低周波地震は,数日間継続するスロースリップによって引き起こされると考えられるため,本共同研究で明らかとなった観測結果は,プレート境界浅部におけるスロースリップの存在を証明したものと考えられます.

海底地震計により詳細に求められた浅部低周波微動の移動経路と,通常の地震が発生する深さ10~30kmにおけるプレート境界の固着の程度を比較したところ,浅部低周波微動の活動域はプレート境界の固着が弱い領域の浅部側に限定されており,固着が強い領域を避けて移動していることが分かりました.すなわち,浅部低周波微動はプレート境界の固着の程度をよく反映した現象であると考えられ,固着が弱い領域の浅部側ではスロー地震活動が広範囲にわたり活発で,移動現象も明瞭に見られると考えられます(図5).また,本共同研究グループは,本研究領域に南東から沈み込んできている九州パラオ海嶺についても新たな知見を得ました.九州パラオ海嶺はフィリピン海プレート上の海底山脈で,その東西で地殻構造が大きく異なっていることから,地震時の高速滑りを止める「セグメント境界」の役割を果たすと考えられています(Yamamoto et al., 2013).しかし,本研究で検出された浅部低周波微動は,九州パラオ海嶺を乗り越えて移動していることが明らかになりました.このことは,スロー地震のようなゆっくりとしたすべりに対しては,九州パラオ海嶺がセグメント境界の役割を果たさないことを示しています.

 

本研究の意義と今後の展開
 本研究により新たに発見された浅部低周波微動の移動現象は,移動現象そのものが間接的にプレート境界浅部すべりを表していると考えられるため,スロー地震の発生メカニズム解明に寄与するだけでなく,巨大津波発生の可能性を有するプレート境界浅部すべりの理解や,将来発生が危惧される南海トラフ沿い巨大地震の発生モデル高度化への寄与など,学術上・防災上重要な成果です.また,浅部低周波微動の活動がプレート境界の固着の程度を反映した現象であるとする本研究グループの予測が正しければ,活動の時空間変化をモニタリングすることで,プレート間固着の変化を把握することが可能となり,将来的に巨大地震発生の切迫度評価への応用ができる可能性があります.

一方で,陸から遠く離れたプレート境界浅部で起こっている現象を詳細に把握するためには,海底における地震動と地殻変動の同時かつ長期にわたる観測を行うことが必要不可欠です.国内外の様々な場所でより多くの観測事例を重ね,異なる浅部スロー地震間の相互関係や活動の普遍性・地域性などを明らかにし,プレート境界浅部すべりについての理解をより一層深めていくことが期待されます.

 

謝 辞
海底地震観測においては,長崎大学水産学部練習船・長崎丸の共同利用枠を利用し,乗組員の皆さまに多大なるご協力を賜りました.また,宮崎県・鹿児島県の漁業関係者の皆さまには,観測実施に際しご理解・ご協力をいただきました.本研究は,「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」の一環として行われました.

 

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図1. (上)海底地震観測の概要.(左下)海底地震計の設置・回収を行った長崎大学水産学部練習船・長崎丸(842 t).(右下)投入直前の海底地震計.オレンジ色のハードハット内に観測機器を封入した耐圧ガラス球が入っている

 

図2.海底地震観測網(黄色の四角:数字は観測点番号)によって捉えられた浅部低周波微動の震央分布(丸印:色は発生日時を示す).オレンジの丸は小繰り返し地震(プレート境界で繰り返し発生するM2~4程度の地震:Yamashita et al., 2012),緑の太線は大陸プレート下に沈み込んでいる九州パラオ海嶺の外縁(Yamamoto et al., 2013),赤い矢印はフィリピン海プレートが大陸プレート下に沈み込む方向(Miyazaki and Heki,, 2001)を示している.グレーの領域は,それぞれ1968年日向灘地震,1996年10月・12月日向灘の地震で地震時に大きくすべった領域を示す(八木・他, 1998; Yagi et al., 1999).
図2.海底地震観測網(黄色の四角:数字は観測点番号)によって捉えられた浅部低周波微動の震央分布(丸印:色は発生日時を示す).オレンジの丸は小繰り返し地震(プレート境界で繰り返し発生するM2~4程度の地震:Yamashita et al., 2012),緑の太線は大陸プレート下に沈み込んでいる九州パラオ海嶺の外縁(Yamamoto et al., 2013),赤い矢印はフィリピン海プレートが大陸プレート下に沈み込む方向(Miyazaki and Heki,, 2001)を示している.グレーの領域は,それぞれ1968年日向灘地震,1996年10月・12月日向灘の地震で地震時に大きくすべった領域を示す(八木・他, 1998; Yagi et al., 1999).

 

図3.(A)海底地震計で記録された浅部低周波微動のエンベロープ波形例.2013年6月10日08時15分~09時15分の1時間分で,それぞれのトレースから立ち上がっている波群が浅部低周波微動である.一番上のKUSMは,陸上にある鹿児島大学の串間観測点(宮崎県の南端付近)の波形で,20倍に拡大している.(B)防災科学技術研究所F-netの広帯域地震計で記録された,(A)と同時刻における浅部超低周波地震の波形.周期10秒~50秒の波を通すフィルターをかけている.下から上に向かって南西諸島,九州,四国,近畿地方に位置する観測点の順で並んでいる.TKOFは宮崎県の高岡観測点,TASFは鹿児島県の田代観測点,KYKFは鹿児島県屋久島の永田観測点.(C)浅部低周波微動と超低周波地震の空間分布図(左)と1日あたりのイベントカウント数のグラフ(右).赤が浅部低周波微動,グレーが超低周波地震を示す.(A),(B)より浅部低周波微動と超低周波地震の発生タイミングはほぼ同じであり,(C)より震央位置はおおよそ等しく,1ヶ月間の活動度もよく一致していることから,浅部低周波微動と浅部超低周波地震が時空間的に同期して発生していることがわかる.
図3.(A)海底地震計で記録された浅部低周波微動のエンベロープ波形例.2013年6月10日08時15分~09時15分の1時間分で,それぞれのトレースから立ち上がっている波群が浅部低周波微動である.一番上のKUSMは,陸上にある鹿児島大学の串間観測点(宮崎県の南端付近)の波形で,20倍に拡大している.(B)防災科学技術研究所F-netの広帯域地震計で記録された,(A)と同時刻における浅部超低周波地震の波形.周期10秒~50秒の波を通すフィルターをかけている.下から上に向かって南西諸島,九州,四国,近畿地方に位置する観測点の順で並んでいる.TKOFは宮崎県の高岡観測点,TASFは鹿児島県の田代観測点,KYKFは鹿児島県屋久島の永田観測点.(C)浅部低周波微動と超低周波地震の空間分布図(左)と1日あたりのイベントカウント数のグラフ(右).赤が浅部低周波微動,グレーが超低周波地震を示す.(A),(B)より浅部低周波微動と超低周波地震の発生タイミングはほぼ同じであり,(C)より震央位置はおおよそ等しく,1ヶ月間の活動度もよく一致していることから,浅部低周波微動と浅部超低周波地震が時空間的に同期して発生していることがわかる.

 

図4.図2のN-S測線に沿った距離で投影した浅部低周波微動の時空間プロット.横軸は時間(日付)を表している.グレーのエリアは海底地震観測網の外側(南側)に位置するため,震源決定精度が悪い領域.全体として,南から北へ移動しており,1回目と2回目の移動の平均的な速度は1日あたり30~60 km.6月12日~14日にかけての逆方向(北から南)の高速移動はRTR(Rapid tremor reversal: Houston et al., 2011)と呼ばれる移動現象.
図4.図2のN-S測線に沿った距離で投影した浅部低周波微動の時空間プロット.横軸は時間(日付)を表している.グレーのエリアは海底地震観測網の外側(南側)に位置するため,震源決定精度が悪い領域.全体として,南から北へ移動しており,1回目と2回目の移動の平均的な速度は1日あたり30~60 km.6月12日~14日にかけての逆方向(北から南)の高速移動はRTR(Rapid tremor reversal: Houston et al., 2011)と呼ばれる移動現象.

 

図5.浅部スロー地震の移動と,通常の地震発生域(深さ10~30 km)のプレート間固着との関係についての解釈図.プレート間固着が弱い場所の浅部側では広範囲に渡って浅部スロー地震活動が活発で,明瞭な移動現象が見られる.一方,固着が強い場所の浅部側では活動が限定的で不活発である.
図5.浅部スロー地震の移動と,通常の地震発生域(深さ10~30 km)のプレート間固着との関係についての解釈図.プレート間固着が弱い場所の浅部側では広範囲に渡って浅部スロー地震活動が活発で,明瞭な移動現象が見られる.一方,固着が強い場所の浅部側では活動が限定的で不活発である.

 

用語解説

(注1)スロー地震(Slow earthquake)
 スロー地震は,通常の地震よりも断層面がゆっくりとした速度でずれ動く現象の総称で,低周波微動や超低周波地震,スロースリップなどがあります.

(注2)低周波微動(Low-frequency tremor)
 通常の地震と異なり,P波(初期微動)・S波(主要動)の到達が不明瞭で,火山活動に伴って発生する火山性微動と,本研究で観測された非火山性の微動があります.非火山性の微動は,周期0.5秒(周波数2 Hz)程度に卓越する(通常の地震に比べ)低周波で微小な震動であり,数分から数時間継続します.プレート境界の固着域の深部隣接域で発生する深部低周波微動は,日本で初めて発見され,その後世界各地の沈み込み帯でも発見されています.

(注3)超低周波地震(Very low-frequency earthquake: VLFE)
 10~20秒程度の非常に長い周期の波が卓越する特異な地震(通常の地震は1秒より短い周期の波が卓越する)で,主に広帯域地震計によって捉えることができます.日向灘は十勝沖と並んで活発な活動域の1つであり,日本近海以外の他の沈み込み帯でも近年発見されています.本研究で用いた海底地震計は短周期地震計(固有周波数4.5Hzもしくは1Hz)なので,浅部低周波微動と同期して発生した浅部超低周波地震は直接捉えることはできませんが,防災科学技術研究所の高感度地震観測網(Hi-net)に併設されている傾斜計による解析と,広帯域地震観測網(F-net)で記録された波形を海底地震観測データと比較することにより,両者の活動の一致性を確認することができました.

(注4)スロースリップ(Slow slip)
 地震波を出すことなく,数日間~数年程度の時間をかけてゆっくりと断層面がすべる現象で,GNSS(GPSなどの衛星測位システムの総称)や傾斜計など地殻変動観測によって検知されます.数ヶ月以上継続する長期的スロースリップと,長くて数週間程度の短期的スロースリップがあります.長期的スロースリップは主にプレート境界深部で発生しており,日向灘でも発生していて,規模は通常の地震に換算するとMw 7相当に達することもあります.プレート境界浅部の海溝軸付近におけるスロースリップは,陸から離れていて陸上観測点での地殻変動量が小さいため検知が難しく,観測例がほとんどありません.海底観測では,圧力観測によって上下方向の地殻変動を観測することで,スロースリップを検知することができます.

(注5)海底地震計(Ocean bottom seismometer: OBS)
 海底地震計には大きく分けて自己浮上式とケーブル式に分けられます.本研究で用いた自己浮上式海底地震計は,設置時は船上からの自由落下,回収時には船上からの音響通信による命令によって強制電蝕により錘を切り離した後,自身の浮力を利用して海面に浮上させる仕組みです.地震計(今回は,固有周波数4.5Hzもしくは1Hz),記録装置,精密時計,電池を直径17インチの耐圧ガラス球内に封入して海底に設置します.ガラス球の容量と浮力の関係から内部に入れることができる電池容量が限られ,標準で3ヶ月間程度観測が可能です.ガラス球の他に,500mm もしくは 650mmの耐圧チタン球を用いた1年以上の長期観測が可能なタイプもあります.水深約6000mまで設置可能ですが,日本海溝など6000mを越える超深海でも観測可能な耐圧球を用いた海底地震計も近年開発されています.

 

参考文献

  • Houston et al., Nature Geoscience 4, 404–409 (2011).
  • Miyazaki and Heki, Journal of Geophysical Research 106, 4305–4326 (2001).
  • Obana and Kodaira, Earth Planet Sci. Lett. 287, 168-174 (2009).
  • Obara, Journal of Geodynamics 52, 229-248 (2011).
  • 八木・他, 地震 2, 139–148 (1998).
  • Yagi et al., Geophysical Research Letters 26, 3161–3164 (1999).
  • Yamamoto et al., Tectonophysics 589, 90–102 (2013).
  • Yamashita et al., Geophysical Research Letters 39, L08304 (2012).

 

著者情報(和名)
山下 裕亮         九州大学大学院理学研究院 附属地震火山観測研究センター JSPS特別研究員PD
                         (現所属:東京大学地震研究所 附属観測開発基盤センター 特任研究員)
八木原 寛         鹿児島大学大学院理工学研究科 附属南西島弧地震火山観測所 助教
浅野 陽一         防災科学技術研究所 観測・予測研究領域 地震・火山防災研究ユニット 主任研究員
清水  洋         九州大学大学院理学研究院 附属地震火山観測研究センター センター長/教授
内田 和也         九州大学大学院理学研究院 附属地震火山観測研究センター 技術専門職員
平野 舟一郎     鹿児島大学大学院理工学研究科 附属南西島弧地震火山観測所 技術専門職員
馬越 孝道         長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科 准教授
宮町 宏樹         鹿児島大学大学院理工学研究科 附属南西島弧地震火山観測所 教授
中元 真美         九州大学大学院理学研究院 附属地震火山観測研究センター 大学院生
福井 海世         九州大学大学院理学研究院 附属地震火山観測研究センター 大学院生
神薗 めぐみ     九州大学大学院理学研究院 附属地震火山観測研究センター 大学院生
兼原 壽生         長崎大学水産学部 教授/練習船長崎丸 船長
山田 知朗         東京大学地震研究所 附属地震予知研究センター 助教
篠原 雅尚         東京大学地震研究所 附属観測開発基盤センター 教授
小原 一成         東京大学地震研究所 附属観測開発基盤センター 教授

 

*研究内容についての問い合わせ先
東京大学地震研究所
特任研究員 山下 裕亮
電話:03-5841-3832
E-mail:yamac@eri.u-tokyo.ac.jp


 

*UTokyo Researchでも紹介されました:『移動する「低周波微動」をプレート境界浅部で初観測 プレート境界が時々ゆっくりとした速度でずれ動いている可能性


 

佐竹健治教授・堀宗朗教授編集の本が「平成25年度出版文化賞」を受賞

佐竹健治教授・堀宗朗教授が編集した本が、土木学会による出版文化賞を受賞しました。

書名:『東日本大震災の科学』

地震研究所からの執筆者(章順):
小原一成教授
佐竹健治教授
佐藤慎司教授 (兼任)
古村孝志教授 (兼任)
堀 宗朗教授

受賞理由:本書は、東京大学の地震研究所、工学研究科および情報学環の教員8名が、東日本大震災に関する研究結果を基に行った東京大学・全学自由研究ゼミナールの内容をまとめたものである。
東日本大震災の発生から2年近くが経ち、その実態が明らかになりつつある。本書では、マグニチュード9という地震と大津波の発生メカニズムと予測について科学的に迫るとともに、避難行動の実態と防災教育、災害情報の収集、低頻度大災害の社会経済への影響、巨大地震に対する構造物と都市の耐震シミュレーション、といった様々な分野に関しても震災に関する研究成果を基に分析しており、土木技術者だけではなく、一部難しいところもあるものの、一般の読者にも有用な書となっている。
さらに、震災の分析結果を踏まえて、近い将来発生するとされている南海トラフの地震や首都直下地震に対して、どのようにして予測し被害を軽減すべきかといった観点からも、各分野で論点を整理し提言されている。
惜しむらくは校正が不十分であり、図中の式の表記に明らかに誤りがあったり、図の目盛り線が印刷されていない箇所も散見される。しかしながら、これらは正誤表で十分対応できる範囲であり、地震発生から2年足らずで本書を出版し、多角的な視点で東日本大震災の実像に迫ったことは価値が高い。また、次なる巨大地震に対する防災・減災について提言を行ったことは、高く評価される。
よって、ここに土木学会出版文化賞を贈呈する。

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前田拓人助教が2013年EPS賞を受賞

前田拓人助教が、「2013年EPS賞」を受賞しました。

受賞研究:Significant tsunami observed at ocean-bottom pressure gauges during the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake

著者:Takuto Maeda, Takashi Furumura1, Shin’ichi Sakai and Masanao Shinohara

詳細EPS Award (Full text available)

受賞理由:前田拓人博士と共著者たちは、震源破壊域の上に設置された2点のケーブル式海底津波計で記録された津波波形を分析した。彼らは、大規模な津波を引き起こした地震の破壊過程が、2段階から成っていたことを示した。また、地震の滑り分布を推定し、海溝軸付近で大きなすべりがあったことを示した。この2つは、地震および巨大地震により津波が引き起こされる過程の両方について理解するのに欠かせない成果である。更に、これら2つの結果は速やかに得られたため、2011年東北沖地震に関する後続の研究で多々引用された。
第一著者のこの論文への尽力を讃え、2013年EPS賞に表彰する。

(受賞理由(英原文)より)

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