【研究速報】西之島2019年-2020年活動の観測

最終更新日:2020年7月28日

2019年12月から活発に活動している西之島は、現在(2020年7月)も活動し続けています。ここでは、最新の観測結果を紹介します。


西之島における2020年7月11日噴火の火山灰 ( 2020年7月28日更新 )

概要: 2020年7月11日に気象庁観測船「凌風丸」上にて採取された西之島噴火の火山灰について,実体顕微鏡による観察,全岩化学組成および石基ガラス組成の分析を行った。実体顕微鏡では,よく発泡した黒〜褐色粒子を主体とする細粒火山灰である(図1)。SiO2含有量は全岩で約55 wt.%,石基ガラスで約58 wt.%を示す玄武岩質安山岩で,MgOなど苦鉄質成分に富む特徴を示す(図2〜4)。西之島におけるこれまでの陸上噴出物は,SiO2含有量は全岩で59-61 wt.%程度,石基ガラスで62 wt.%以上の安山岩であった。したがって今回の結果は,マグマ組成がこれまでの安山岩から玄武岩質安山岩に変化していることを示す。従来の解析結果も考慮すると(図5),2019年12月から開始した現在の活動では,より深部に由来する苦鉄質マグマの寄与が激的に増大し,このことが現在の活発な活動の原因になっていると考えられる。

分析試料:
2020年7月11日に,西之島北北西約18.5 km地点にて気象庁気象観測船凌風丸のA: 船首,B:フライングデッキ,C: 船尾で採取された火山灰。気象庁より提供頂いた。

[全岩化学組成分析]
A,B,Cそれぞれの試料について,篩い分けによりごく細粒物を除外した火山灰粒子を用い,XRFにより分析を行った。
今回分析した試料は火山灰であり,溶岩やスコリアとは産状が異なることには注意を要する。火山灰全岩化学組成は,異質岩片が大量に混入した場合や,運搬過程で密度が大きい有色鉱物粒子の分離が起こった場合,マグマとは異なる化学組成を示す可能性がある。今回用いた試料については,実体顕微鏡により異質物・岩片をほぼ含まないことを確認し,また,船上の異なる場所A, B, Cで構成物・化学組成にほとんど違いは見られない。試料の状態から,混染の影響はほとんどないと考えられる。また,斑晶鉱物量は10 vol.%以下と低く,有色鉱物が分離したとしてもその化学組成への影響は小さく,変化したとしても珪長質側に変化すると考えられる。以上の点を踏まえると,今回分析した火山灰全岩化学組成の特徴は,概ね今回の噴火のマグマ組成を反映したものであり,これまでの噴出物との違いは有意なものと考えられる。

[石基ガラス組成分析]
A,B,Cそれぞれの試料について,ふるいがけにより250-500 μmの粒子を集め,石基ガラスについてEPMAによる定量分析を行った。 化学組成のばらつきは,結晶化の程度による粒子毎,同一粒子内の組成不均一によるが,これまでの噴出物との全体的な組成差は,結晶化の程度によるばらつきで説明することは難しく,マグマがより未分化なものへ変わったことを示すと考えられる。

図1 西之島火山灰の実体顕微鏡写真。(左)2020年7月11日に採取された火山灰(125-250 μm)。よく発泡した多角形状の黒〜褐色粒子を主体とする。(右)比較のために,2015年6月噴火火山灰(125-250 μm)を示す。2020年と同様に黒〜褐色粒子を主体とするが,透明度が高く,引き伸ばされた形状を有するものが多い。

図2 2020年7月11日に西之島沖で採取された火山灰の反射電子像。発泡度の良い多角形・不定形状の粒子で構成される。石基結晶度は粒子ごとにばらつきがあるが,これまでの活動で噴出した火山灰
でも同様の特徴が観察されている。
図3 西之島噴出物の全岩化学組成。2020年は火山灰。その他は溶岩およびスコリアである。2018年までの噴出物は安山岩であるが,2020年7月噴出物は玄武岩質安山岩である。これまでの噴出物よりも明瞭にMgOやCaOに富み,K 2 Oに乏しくなる。
図4 2015年以降の西之島噴出物の石基ガラス組成。赤丸が今回の噴出物の分析値。これまでの陸上噴出物の石基ガラス組成は,概ねSiO 2 含有量62 wt.%より富む特徴を示していた。2020年7月噴出物は約58 wt.%に集中し,MgOなど苦鉄質成分に富む。この組成変化は,全岩化学組成における変化と調和的であり,現在進行中の噴火においてより苦鉄質なマグマの寄与が大きくなっていることを示している。
※ 図4中には示していないが,2017年5月に西之島沖で回収された海底電位磁力計に堆積していた
火山灰の石基ガラス組成 1) のうち苦鉄質なものと,2020年7月噴出物の組成はよく似た特徴を示
すことがわかった。この関連性については,今後検討を要する。
図5 西之島における2013年以降の噴出物の化学組成の変遷。2018年までの噴出物の化学組成には弱い変化傾向(SiO 2 の減少,MgOやCaOの増加)が認められていた。Zrなど液相濃集元素は減少傾向を示していた。2020年噴出物の組成変化は,これまでの変化よりもはるかに大きい。2013年以降の噴出物の斑晶鉱物の分析から,浅部低温マグマ溜りへの深部高温マグマの注入が推定されている 2) ことを考慮すると,2019年12月から開始した今回の活動では,より深部に由来する苦鉄質マグマの寄与が激的に増大し,このことが現在の活発な活動の原因となっていると考えられる。

参考文献
1) 安田ほか(2017)西之島近海の海底から採取されたガラス質の火砕物について.日本火山学会秋
季大会講演予稿集, P094.
2) 前野・安田ほか(2018)海洋理工学会誌, 24, 1, 35-44.

(前野・外西・安田)


西之島における地震、空振観測

小笠原諸島の西之島では2013年以降火山活動が継続しており、度重なる溶岩流出により島は急速に拡大している。地震研究所では活動の合間を縫って、2016年10月と2019年9月に西之島旧島に上陸し、地震計・空振計を設置した。2016年10月に設置した観測装置は翌2017年4月の火山活動により失われたが、噴火開始前後の地震・空振データを得ることができた。2019年9月には再度旧島部に上陸し、3成分広帯域地震計と空振計から成る観測装置を再設置した。本報告は、2019年9月に開始した観測の紹介である。

 度重なる溶岩流出により旧島部分の大半が覆われていたが、 2019年9月時点ではわずかに土壌面が残され海鳥も多数生息していた(図1)。溶岩流に飲み込まれずに残ったわずかな土壌部分に30㎝ほどの穴を掘り、埋設設置した(図2)。

 観測装置の電力は太陽電池から供給し、衛星通信を介してデータを送る仕組みになっている。衛星通信の容量や通信費の制約から、観測で得られた全データを送信することはできないため、以下の手順でデータを回収した。1)1日の観測が終わると、現地ロガーが1日分のランニングスペクトルを作成・圧縮した上で、地震研へ送信する。2)ランニングスペクトルを確認し、地震などが発生していた場合は該当する時刻のデータを手動で切り出し、後日回収する(図3)。これにより、限られた通信条件下で活動の概要を捉えることが可能となった。

図3 データーの蓄積、処理、送信までの流れ

設置後3ヶ月ほどは目立った火山活動は無かったが、2019年12月4日より地震活動が高まり、翌12月5日から溶岩流出が始まった。図4に12月5日の地震、空振波形とその拡大図を示す。

 12月5日5時台に、振幅20Pa程度の空振が捉えられており、この頃には溶岩が火口極浅部に達し、激しいガス放出が始まっていたと考えられる。地震振幅の増加もこの頃から目立ち始める。同日午後から地震振幅が急増し、280Paの比較的強い空振も観測された。同じ時間帯にひまわり8号の観測から強い熱異常が確認されており、溶岩流出が一気に始まったものと考えられる。これ以降は、大きな振幅の地震動が継続し、空振も頻発した。

 地震波の振動方向を見ると、この時期の地震波はほぼ火口方向から到来しており、西之島中心付近に位置する火口での活動が中心であった。

噴火開始直後は2Hz付近の周波数帯が卓越していたが、卓越周波数は徐々に低周波側に移動し、2020年4月以降は0.5~1Hz付近が卓越するようになった。2020年5月からは振幅が顕著に増加し、6月下旬に掛けて加速度的に増加した。振幅の増加とともに卓越周波数もやや高周波側にシフトした(図5)。6月下旬には加速度的に増加する熱異常がひまわり8号によって捉えられており、この時期に大規模な溶岩流出が起きたと考えられる。

 6月22日に前日分のデータが送られてきたが、それを最後に通信が途絶えた。6月24日の衛星画像には溶岩流が旧島に迫る様子が捉えられており、観測点はこの頃に溶岩流に飲み込まれたと推定される。

 西之島の厳しい観測環境において、当初の期待を大きく上回り6か月以上に渡りデータを送り続けることができた。特に、噴火の開始から最近の活発化までの一連の活動全体を捉えることができたことは重要な成果である。今後は、熱異常データや海上保安庁による空撮画像、衛星データによる溶岩流出域拡大の推移など、他の観測データと比較することにより、地震学的に見た西之島の活動を明らかにしていきたい。

(火山噴火予知研究センター: 大湊隆雄 )


◆ ひまわり8号による西之島2019-20年噴火の観測(11)-噴出率とその変化

(火山噴火予知研究センター:金子隆之)


西之島の噴火に伴う津波の試算

小笠原諸島西之島では,2019年12月の噴火再開以降,溶岩流出により島の拡大が続いている。 今回の噴火活動は,2013-2015年噴火を上回る勢いであり,溶岩流出率も2013年以降最大となっている1)。 2020年6月末には,溶岩流が山体南側で再び急峻な海底斜面に流出する状況になっている。 このような噴火活動がさらに継続・活発化した場合,山体が部分的に崩壊し,津波が発生する可能性が考えられる。 東京大学地震研究所では,2013-2015年噴火の際にも山体崩壊と津波について検討したが2), 2019-2020年噴火においては山体がさらに大きく成長し,噴火活動も活発であるため,現状の活動状況を踏まえて,改めて西之島の崩壊と津波について検討を行うことにした。

[西之島の崩壊・津波シミュレーション]
 数値計算は,これまでの事例で用いられた手法2, 3)と同様である。 重力流(岩屑なだれや火砕流など)が海に流入することにより発生する津波を対象として開発されてきた, 非線形長波理論にもとづく二層流モデルの有限差分法による解析手法4, 5) を用いた。 海底地形データには海洋情報研究センターによる M7023 ver. 2.0(小笠原海域)を用いた(図1,2)。 計算領域は,広域では200 m,波源近傍ではその1/3のグリッドを用いて接続している。初期崩壊条件は表1の通りである。 このうちCase 1A, 1Bと2A, 2Bはすでに検討しており2),今回新たに崩壊量が5-10倍大きい場合について調べた。 Case 2Cは,インドネシア・アナククラカタウ島で2018年12月に発生した山体崩壊と同程度を想定した場合である。

図 1 西之島および小笠原諸島周辺の海底地形 (東西 240 km,南北 180 km)。xy軸は緯度経度,z軸の単位はm。
図 2 (左) 西之島周辺の海底地形,(右) 想定崩壊位置。xyz軸の単位はm。

表 1 検討した初期条件
LocationVolume (×106 m3)
Case 1ASW13
Case 1BSW6
Case 1CSW52
Case 2ASE12
Case 2BSE8
Case 2CSE123
Case 2DSE51

 Case 1とCase 2は,それぞれ島の南西側と南東側が崩壊し,崩壊物が海底山体の斜面上へ流出するというシナリオである。 すべての場合において,海面上の新しい島の一部と海面下の既存山体を合わせた部分が崩壊する状況を想定している。 陸上部分は崩壊量全体の20-30%程度である。Case 2Cでは,島中央の火砕丘の一部も含まれる。なお,モデル内の重力流の底面摩擦係数については,従来の研究にもとづき陸上域,水域ともに0.1,重力流―海水二層の界面抵抗係数は0.2とした。

[数値シミュレーション結果の例]

図 3 Case 2Cの計算結果。4分毎,24分まで。

[最大波高分布]

図 4 (a) Case 1A,(b) Case 1C,(c) Case 2C,(d) Case 2D。 それぞれ波高のスケールが異なることに注意。(b)-(d)では,波源近傍では波高20-30 mに達するが,西之島から離れると急速に減衰する。 しかし,海底地形の影響により小笠原諸島付近で再び波高が高まる。

[父島南西岸における津波の特徴]

図 5 父島南西岸における津波波形(発生から40分後まで)。東側では崩壊量が最大の場合,5 m程度の津波になる可能性がある。 また,いずれの場合も,2分30秒から3分程度の周期の波が次第に減衰していくという特徴を示す。

[崩壊体積と最大波高との関係]

図 6 西之島の崩壊体積(横軸)と津波の最大波高(父島南西岸)(縦軸)との関係。 南西側の崩壊(Case 1)では,津波の主な伝搬方向が小笠原諸島と反対側になるため,波高は全体的に低くなる。

[津波到達時間分布]

図 7 津波到達時間の分布(Case 2Cの例)。単位は分。父島へは20分弱で到達する。 津波の波速はほとんど水深に依存するため,初期条件が変わっても津波到達時間の分布に大きな変化はないが, 最大波高に達するまでの時間は,崩壊量が大きいほど早くなる。

[参考文献]
1) 東京大学地震研究所「ひまわり8号による西之島2019-20年噴火の観測」第146回火山噴火予知連絡会資料.
2) 東京大学地震研究所「西之島噴火に伴い発生する可能性がある津波について」, 2014年7月, リンク
3) 東京大学地震研究所「2018年インドネシア・クラカタウ火山噴火・津波」, 2019年1月15日, リンク
4) Kawamata, K. et al. (2005) Model of tsunami generation by collapse of volcanic eruption: the 1741 Oshima-Oshima tsunami. In Tsunamis: cases studies and recent development (Satake, K., ed.), p79-96.
5) Maeno, F. and Imaumra, F. (2011) Tsunami generation by a rapid entrance of a pyroclastic flow into the sea during the 1883 Krakatau eruption, Indonesia. JGR, 116, B09205.

なお、下記ページでも随時情報が更新されております。ぜひご覧ください:

西之島の噴火に伴う津波の試算【http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/VRC/nishinoshima/nishinoshima_tsunami_2/

( 火山噴火予知研究センター  前野 深 )

【研究速報】ひまわり8号による西之島2019年12月活動の観測

ウェブ掲載日:2019年12月16日

西之島では2018年の小規模活動(第3期)に続いて,2019年12月4日,新たな活動が始まった.火山噴火予知研究センターでは,この活動についてひまわり8号,GCOM-C/SGLI(しきさい)等の衛星赤外画像により噴火経過の観測を行っている.

 今回の観測によって,2019年12月の活動は2017年噴火(第2期)の最盛期を上回る高い噴出率をもつことがわかった.今後の経過が注目される(これまでの活動,予想される災害等については,“2013年11月21日西之島の噴火活動”*1,“西之島噴火に伴い発生する可能性がある津波について”*2等を参照).以下に,12月4日から13日までの経過を報告する.

12月4日-5日未明:

 西之島では2019年12月4日夜から5日未明にかけて噴火と思われる熱異常が観測された.活動は,4日20時50分頃から徐々にレベルが上がり(a1), 21時30分頃~0時頃には高い状態(a2)となり,その後若干低下したものの比較的高い状態が5日0時~3時50分頃まで継続し(a3),4時頃にバックグラウンドレベルまで低下した(A: 前駆的活動期)(図1).この間,爆発的噴火や溶岩流の噴出等が起きたと考えられる.

12月5日午後:

 先の活動は一旦収まったかに見えたが,5日15時前に活動が再開した.16時30分以降,高い熱異常が一定レベルで継続する(図1)ことから,この頃には溶岩流が定常的に噴出していたと考えられる(B: 溶岩流の噴出期).

図1.ひまわり8号による熱異常の時間変化(12月4日朝-7日朝).熱異常レベルの確認は夜間,雲のない時期を選んだ.
図2.ひまわり8号による熱異常の時間変化(12月7日朝-10日朝)

12月5日夕方-10日夕方:

 一部,雲の被覆により確認できない部分もあるが,10日夕方までほぼ一定レベルの熱異常が続くことから(図2), 5日夕方に始まった溶岩流の噴出は,この間ほぼ一定の噴出率で継続していたと考えられる(各バンドの黄色/オレンジの実線). 9日の「しきさい」熱赤外画像で,島中央部にある火砕丘の東側基底部付近から噴出したと思われる溶岩流(白色部)が,東南東に向かって 700~800 m 程流下しているのが認められる(海に達している) (図3).

図3. a 「しきさい」 12月9日21時57分の熱赤外画像(11μmバンド). b 2017年8月28日のプレアデス画像.2019年12月溶岩流の分布範囲(9日)を赤点線で示す.
図4.ひまわり8号による熱異常の時間変化(12月10日朝-13日朝)

12月10日夜-11日未明:

 12月5日から一定レベルの溶岩噴出が続いて来たが,10日22時から11日6時頃にかけて熱異常レベルが上がる(赤太矢印間)ことから,この間,噴出率が上昇したと考えられる(図4).

12月11日-13日:

 熱異常のレベルから,11日6時頃から続く高い噴出率は,現在(13日6時)も継続していると考えられる.

噴出率の推定: 

 ラウン2015年噴火及び西之島2017年噴火(Kaneko et al.,2019a,2019b)のデータから求めた“夜間ひまわり8号1.6μmバンド輝度値と噴出率の間の経験式(ER-model ver.1)”を基に,噴出率の推定を行った.噴火当初の噴出率は 0.29 x 106 m3/dayであったが,11日5時以降は 0.45 x 106 m3/day  程度まで高まっていると推定される.この値は,2017年噴火の最盛期の噴出率を上回っている.  (2019 年12月13日 文責・金子)

リンク:

*1: ”2013年11月21日西之島の噴火活動“ http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/2017/04/21/2013%E5%B9%B411%E6%9C%8821%E6%97%A5%E8%A5%BF%E4%B9%8B%E5%B3%B6%E3%81%AE%E5%99%B4%E7%81%AB%E6%B4%BB%E5%8B%95/

2* ”西之島噴火に伴い発生する可能性がある津波について“ http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/VRC/nishinoshima/nishinoshima_tsunami/

【研究速報】浅間山8月7日22時08分頃の噴火

8月7日、午後10時08分頃に浅間山が噴火し、気象庁は噴火警戒レベルを3に上げました。観察により得た情報をここで更新してまいります。

※ 報道関係の方へ: 2019年噴火の写真の引用は,読売新聞社にお伺いください。


最終更新日:2019年8月20日


火山噴火予知連に提出された、地震研火山噴火予知研究センター関係の観測データ資料(火山噴火予知研究センター:大湊 隆雄)

(資料作成 火山噴火予知研究センター 市原美恵)

(資料作成 総合観測室 渡邉篤志)

(資料作成 火山噴火予知研究センター 大湊隆雄)(資料作成 火山噴火予知研究センター 大湊隆雄)(資料作成 火山噴火予知研究センター 大湊隆雄)

(資料作成 火山噴火予知研究センター 小山崇夫)



2019年8月10日

浅間山2019年8月7日噴火火山灰の堆積状況と構成粒子の特徴

(火山噴火予知研究センター:前野 深)

概要: 浅間山2019年8月7日噴火の火山灰の現地調査および火山灰構成粒子の観察を行った。堆積物は,火口から北方向へ少なくとも7.7 kmまでの距離で確認された。構成粒子は,様々な程度に変質した岩片,新鮮な溶岩片が大半を占める。このうち変質の程度が強いものは45%程度,比較的新鮮なガラス質溶岩片は25%程度認められた。粒子構成比率は,2015年噴火の特徴に似ている。火道浅部でのマグマの急上昇を示すような新鮮かつ高発泡度の粒子はほとんど含まれていない。

【降灰の状況】
8月7日22時7分頃に発生した小規模な噴火に伴って,浅間山の北から北東方向で降灰が認められた。浅間園北東500 mで2.1 g/m2,鎌原の北軽高原ホテル付近で0.6 g/m2の降灰量であった。堆積物は,火口から北方向へ少なくとも7.7 km(北軽嬬恋GC付近)までの距離で確認された。凝集した細粒火山灰が,粒状・斑点状に堆積しており,明瞭な層はなしていない(図 1)。降灰分布の詳細については,他機関と共同で別途報告する。ちなみに,2015年6月16日噴火では,軸部の鬼押出し園において0.75g/m2の降灰量であったので1),前回より降灰量は若干多い可能性がある。

【火山灰試料】
採取日:2019年8月8日14:45頃
採取場所:火口から4.3 km,浅間園北東500 m浅間橋
産状と採取法:構造物上に堆積した火山灰を刷毛で収集

図 1 浅間園北東の浅間橋での火山灰の堆積状況。降灰量は2.1 g/m2。

【火山灰の処理・観察結果】
水洗(超音波洗浄)により上澄みを取り除き,乾燥後,篩がけにより径125-250 μmの粒子を選別し,構成物の種類とその割合を実体顕微鏡で調べた(図 2)。305粒子について観察し,構成粒子の割合は粒子数を基にした。2015年噴火でも同様の方法で観察を行っているが,その際は粒径250-500 μmを用いている。今回は採取量が少なく全体としても細粒であり,250 μm以上の粒子が十分に稼げないため,径125-250 μmの粒子を対象に解析を行った。

2019年噴火の火山灰構成粒子は,様々な程度に変質した岩片,新鮮な溶岩片が大半を占める。これは,近年の浅間山噴火の火山灰と同様の特徴である。これまでの分類と同様に,粒子を以下5種類に区分し,その構成比を調べた。

(1)Fresh pumice: 変質物質の付着していない新鮮な発泡ガラス片。
(2)Fresh lava: 変質物質の付着していない新鮮なガラス質溶岩片。灰色〜透明で緻密,鋭利な破断面を持ち角張った外形を示す。
(3)Less altered lava: (2)よりも変質の程度の低い,主に灰〜黒灰色の溶岩片。ガラス光沢はないか,あっても粒子表面の一部に限られる。
(4)Altered material: 白色,黄色,橙色,赤色,緑色などを呈する,軽石・溶岩片等を源物質とする変質物質。
(5)Crystal: 斜長石,単斜輝石,斜方輝石の遊離結晶。

これらの粒子構成比は,(1)<1%,(2)25%,(3)20%,(4)45%,(5)9% となった。この比率は,2015年噴火の特徴によく似ているが(図 3),2019年の方が新鮮溶岩片の割合が10%程度多い。新鮮溶岩片の起源としては,既存山体や,近年の噴火の際に貫入し固結していたマグマなどが考えられる1)。構成比の違いは,岩石の破砕場所(または深度)の違いなどを反映している可能性もあるが,現時点ではその原因は明確ではない。新鮮かつ高発泡度の粒子,すなわち火道浅部でのマグマの急上昇を示すような粒子はほとんど含まれていないため,今回の噴火では既存の火道構成物・充填物が破砕し,噴出したと考えるのが妥当であろう。

図 2 洗浄後の径125-250μm火山灰粒子。

図 3 浅間山における近年の噴火による火山灰の構成種変化。2004 年は9 月中旬のストロンボリ式噴火の火山灰。2004 と2009 年噴火では新鮮溶岩と弱変質溶岩をまとめて示している。

参考資料:
1) 東京大学地震研究所・早稲田大学教育総合科学,浅間山2015 年6 月16 日噴火火山灰の観察結果,火山噴火予知連絡会資料2015年6月18日。

 

 


2019年8月9日

浅間山2019年8月7日噴火直後の上空観察

(火山噴火予知研究センター:前野 深)

概要: 2019年8月7日22時過ぎに発生した浅間山の噴火を受けて,8月8日朝にヘリコプター(読売新聞社機)による上空からの観察を行った。釜山火口および周辺に大きな変化は認められなかった。釜山火口内中央には以前から火孔が存在しているが,噴火後も同様に認められた。北西側の主に2箇所で明瞭な噴気活動が認められた。その他の場所でも弱い噴気があるが,これら噴気活動は以前から存在するものである。釜山の北側斜面など火口外には変化はない。今回の噴火は,既存の火孔から発生したものであり,釜山火口内外の地形を大きく変えるような噴火ではなかったと考えられる。

  • 8月8日6:40-7:25にヘリコプター(読売新聞社シリウス)により浅間山山頂釜山火口および周辺域を観察し,噴火後の状況を観察した。(図1)
  • 釜山火口内には従前から直径約30 mの火孔が存在していたが,噴火後も依然として存在し,青白い火山ガスを放出していた。(図2)
  • 火孔周囲の主だった岩塊の配置に変化はない。(図3)
  • 火孔付近から北西側にかけての釜山火口内斜面は,一部灰白色でややのっぺりとしており,火山灰の被覆(数cm 程度以下)の可能性がある。(図4)
  • 釜山火口内北西側の主に2箇所での明瞭な噴気活動が認められた。この地域は,噴火前から弱い噴気や熱異常が認められていた場所である。また火口内にはこの他に複数の弱い噴気が認められたが,これらも以前から存在するものである。

図1 浅間山山頂の様子。2019年8月8日6時50分頃。

図1 浅間山釜山火口の状況。2019年8月8日7時20分頃の様子。(図2)

図3 中央火孔および付近の状況。目印となる主だった岩塊の配置に変化はない。(撮影位置,縮尺は異なる)

図 4 火口内の北西側の状況。明瞭な噴気活動がある。また,灰白でややのっぺりした部分は火山灰による被覆の可能性がある。

【研究速報+臨時観測結果】6月18日22時22分頃の山形県沖の地震

ウェブサイト立ち上げ2019年6月20日
最終更新日:2019年9月20日

6月18日22時22分頃に、山形県沖で起きた地震についての情報を、ここで更新してまいります。

*報道関係の皆さまへ:図・動画等を使用される際は、「東京大学地震研究所」と、クレジットを表示した上でご使用ください。また、問い合わせフォームよりご連絡ください。


海底地震計による2019年山形県沖の地震の余震分布 (2019/9/20掲載)

(観測開発基盤センター 篠原 雅尚)

2019年6月18日に発生した山形県沖の地震(Mw6.4)について、震源域直上において海底観測を実施しました(図1)。対象海域が浅海であることから、本観測のために簡便な係留ブイ方式による海底地震計(図2)を開発しました。観測期間は7月5日から13日までです。海底観測点と臨時観測点を含む陸域観測点のデータから、決定精度の高い震源分布を求めることができました(図3)。その結果、余震の多くは、深さ2 kmから12 kmに分布します。また、全体として、南東傾斜の面状分布を形成し、本震の断層面を表していると考えられます。なお、観測の実施にあたり、地元漁業団体に協力頂きました。本観測は、災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)の一環として、東北大学地震・噴火予知研究観測センター京都大学防災研研所と連携して実施しました。

図1 観測点配置図。赤丸が海底観測点。黒丸の海底観測点は解析に使用していない。赤四角は、余震観測のために設置した臨時陸上観測点、赤逆三角は定常陸上観測点である。星と灰色丸は、気象庁による本震と余震の震央(2019年6月18日から2019年8月18日まで)

図2 係留ブイ方式海底地震計のシステム構成図。利用した海底地震計は高さ11cmで平らな形状をしており、海底において水流の影響を受けにくいと考えられる。

図3 海底地震計データを用いた暫定的な震源分布。赤丸と赤四角は、解析に使用した海底観測点と臨時陸上観測点をそれぞれ示す。余震の多くは、深さ2 kmから12 kmに分布する。


2019年6月18日 山形県沖の地震の地震波伝播シミュレーションで再現した揺れの広がり
(観測開発基盤センター 武村俊介・災害科学系研究部門 古村孝志)

2019年6月18日22時22分に発生した山形県沖の地震(M6.7)の揺れの広がるようすを、3次元地下構造モデルを用いた地震波伝播シミュレーションにより検討しました(図1)。防災科学技術研究所F-netの観測波形と比較し、震源を囲む様々な観測点において良い一致を確認しました(図2)。このシミュレーション結果を用いて、震源からの揺れの伝わり方を調べたところ、この地震の震源輻射特性により東南東―西北西方向へ強い揺れが伝わり、堆積層が厚い地域(富山平野、新潟平野、庄内平野や関東平野など)では、柔らかい地盤により揺れが強く増幅され、そして平野に閉じ込められるように長く続くようすが確認できました。

図1. 地震波伝播シミュレーションにより求められた、揺れの広がるようす。赤い色がP波を表し、緑色がS波を表す。色の濃さは揺れの強さに対応。

図2. 防災科学技術研究所のAQUA-CMT解による2019年山形県沖の地震の震源メカニズム(地図中、青の震源球)、3次元地下構造モデル(Koketsu et al. 2012)を用いた地震波伝播シミュレーションから再現された各観測点の揺れ(青色破線)と観測波形記録(灰色線)の比較。計算および観測波形には、周期12.5-100秒のバンドパスフィルターをかけた。

謝辞:防災科学技術研究所のAQUA-CMT解カタログと広帯域地震観測網F-netの観測記録を利用しました。地震波伝播シミュレーションは3次元差分法によるオープンコードOpenSWPC(Maeda et al. 2017)を利用しました。

2018年インドネシア・クラカタウ火山噴火・津波

 2018年12月22日(現地時間21時頃, UTC14時頃),インドネシア・ジャワ島とスマトラ島に挟まれるスンダ海峡において津波が発生し,クラカタウに近い沿岸域において大きな災害が生じた。噴火活動を続けているアナク・クラカタウ島の南西側が大きく崩壊している様子が明らかになったことから,津波はこの火山島の山体崩壊に伴い発生したと考えられている(PVMBG*1)。
 アナク・クラカタウ島では現在も噴火活動が続いており,その推移が注目される中,今回の崩壊イベントにおける崩壊量や崩壊プロセス,沿岸への津波の伝搬過程,さらにこれらと噴火活動との関係は,日本国内の類似事例の理解を進めるためにも早急に解明する必要があろう。そこで,アナク・クラカタウ島の崩壊と周辺への津波伝搬のシミュレーションを行ったので,その暫定的な結果について報告する。アナク・クラカタウ島は,1883年の巨大噴火で形成されたクラカタウ・カルデラの北東縁に成長した新しい火山島である(Fig. 1, 2)。 崩壊前は,東西2.1 km,南北2.3 kmの大きさで,標高300 mを超える中央火砕丘と山麓にかけて広がる溶岩流からなる島であった(Fig. 3)。山体南西斜面は水深約270 mのカルデラ底まで続き,急峻な地形をなしていた。今回の崩壊はこの南西側で発生し,山頂を含む島の約半分が失われたと考えられる。

詳細については,火山噴火予知研究センターのページをご参照ください.

平成30年北海道胆振東部地震【研究速報】

9月6日03時08分頃に、胆振地方中東部で起きた地震についての情報を、ここで更新してまいります。

*報道関係の皆さまへ:図・動画等を使用される際は、「東京大学地震研究所」と、クレジットを表示した上でご使用ください。また、問い合わせフォームよりご連絡ください。


2018年9月6日 北海道胆振地方中東部の地震の強い揺れ(Ver2)
修正履歴 2018/9/6/15:10(解析対象の観測点を変更しました)。

(強震動グループ)

図1 地震発生から20秒、40秒、80、120秒後の揺れの様子。防災科学技術研究所の強震観測網(K-NET、 KiK-net)データを用いて、日本列島を伝わる揺れを強調して表示しています。赤は震央,オレンジ色のかたまりは、地面の揺れの強さに応じて色と高さで表示しています(午後14時5分の時点のデータ(439点)で作成したたものです、日高地方などの一部の観測点データは含まれていません)。

図2 震源に近い2観測点(KiK-net追分とK-NET早来)の加速度波形(地表の東西方向の揺れ)と、1995年兵庫県南部地震に葺合地点で観測された揺れの特徴を比較しています。本地震は内陸直下で起きた大地震(M6.7)のため、強い揺れが続いた時間は十数秒程度と比較的短かかったものの、重力加速度を超える激しい揺れであったことがわかります。内陸の地震としては震源がやや深かった(37 km)ことや、地表付近の浅い、柔らかい地盤で短周期の揺れが強く増幅され可能性が、強い加速度を伴うごく短周期成分の強い揺れの成因の一つと考えられます。KiK-net追分地点では小刻みなガタガタとした(ごく短周期)の揺れが目立ち、K-NET早来地点では、小刻みな揺れの後に、周期1秒程度のやや長めの周期の揺れが続いていることがわかります。やや長めの周期は、兵庫県南部地震の震源直上にある葺合地点の揺れと特徴が似ています。

図3 図2に示した、KiK-net追分観測点とK-NET早来観測点での記録を用いて、地震の強い揺れが地盤や建物に与える影響を速度応答スペクトルを用いて調べました。図の横軸は構造物の固有周期を、縦軸はその固有周期を持つ構造物が地震により揺すられる強さ(応答)を表します。追分地点のごく短周期の揺れは、固有周期0.5秒前後の成分が強く(>350 cm/s)、固有周期が短い、比較的小さな構造物を大きく揺する力を持っていたことがわかります。大規模な土砂災害や液状化などの地盤災害は、こうしたごく短周期の揺れが一定時間続いたことで拡大した可能性があります。
他方、追分地点のややゆったりとした長周期の揺れは、固有周期1秒前後の構造物(木造家屋など)への影響が大きく(>280 cm/s; オレンジ色のハッチ部分)、木造住宅を倒壊させる威力を持っていたと考えられます。求められた速度応答のレベルは、多数の木造家屋が倒壊した1995年兵庫県南部地震の揺れ(葺合地点)と同程度でした。

図4 KiK-追分地点(震央距離24 km)の揺れを時間方向に拡大してみると、P波とS波に加えて、奇妙な揺れが見つかりました。この図は、速度波形3成分(上から、東西方向、南北方向、上下方向)を示したものです。ふつうの地震では、P波が観測され、それから数秒遅れてS波が到着しますが、この地震ではP波の到着前にも小さな揺れ(P?)が見えます。地震に先立って別の小さな地震が起きたのかもしれません。さらに、S波の後に約3秒の間隔で少なくとも3つのS波群が続いているようすも見えます(①、②、③印)。おそらく、勇払平野(石狩低地帯)の厚い堆積層を挟んで、地表面と基盤岩の間でS波が何度も反射を繰り返してできた波群と考えられ、長時間続く揺れを作り出した原因の一つと考えられます。

図5 この地震により、石狩地方南部で長周期地震動階級4(最大級)を観測しました。苫小牧地点の階級は3でした。苫小牧では、2003年十勝沖地震(M8.0)の長周期地震動により大型石油タンクが破損、出火しました。このときの震度は4でした。
本図は、今回の地震と2003年十勝沖地震のときの、苫小牧の揺れ(長周期地震動の)の違いを比較したものです。左に示した加速度波形では、震源距離が近い(32 km)今回の地震の揺れが圧倒的に激しい(震度5強相当)ことがわかります。ところが、加速度波形を速度波形に変換して長周期の地震動成分を強調すると、十勝沖地震における強い長周期地震動が浮かび上がってきます。

図6 今回の地震と2003年十勝沖地震の際の苫小牧地点での揺れの速度応答スペクトルを比較すると、勇払平野の厚い堆積層で強く増幅される、周期6秒前後の長周期地震動の強さ(速度応答;オレンジ色のハッチ部分)は、2003年十勝沖地震(黒線)の時の時に比べて1/4程度以下であったことがわかります。これは、地震の規模(M6.7)が十勝沖地震(M8.0)よりずっと小さかったことや、直下で起きた地震のために、長周期地震動を作る表面波の生成が弱かったためと考えられます。

(古村孝志)

 

3月1日 霧島山(新燃岳)噴火

ウェブサイト立ち上げ:2018年3月5日
最終更新日:2018年4月19日

3月1日に霧島山(新燃岳)が噴火し、気象庁は警戒が必要な範囲を3kmに拡大しています。


2018年4月19日

霧島火山群新燃岳2018年噴火の火口観察(2)

概要: 2018年4月15-16日にドローンにより新燃岳火口内及び周辺を観察した。3月6日に流出を開始し、北西火口縁から溢れ出した溶岩は、舌状に山体北西斜面を覆い、150 m程度流下している。溶岩溢れ出し部の西縁付近からは大量の水蒸気が上がっている。火口蓄積溶岩の中央部には小火口(直径100 m程度の凹地、深さ不明)が形成されており、噴気が活発である。西側斜面にも複数の箇所に噴気活動が認められる。

  •         4月15日夕方と16日午前の2回に分けて、新燃岳南西側の新湯付近から、ドローンにより山頂火口内及び火口周囲の状況を観察した。ドローン飛行に関しては、鹿児島森林管理署をはじめとする関係機関と調整した上で実施した。
  •         北西火口縁からは溶岩が舌状に流出し山体斜面上部を覆っている。周辺地形との比較からその流下距離は150 m程度と推定される(図1)。溶岩表面はクリンカーで覆われており、多くの亀裂が生じている。溶岩溢れ出し部の西縁付近ではとくに噴気が活発である(図2)。
  •        火口蓄積溶岩の中央部には直径約100 mの小火口(凹地)が存在する(図3)。とくに小火口の西側は急崖となっており、噴気も活発なため深さは不明である。小火口周囲には火山灰や岩塊が厚く堆積し、溶岩表面の微地形ははっきりしないが、同心状に亀裂が発達している。小火口は、だいち2号のSAR画像(4月11日)1) で認められた凹地形に対応し、4月5日の爆発的噴火で形成されたものと推定される。
  •       火口蓄積溶岩の周縁部には所々噴気が活発な箇所がある(図4)。また西側斜面には複数の噴気活動が認められ、このうち中腹の噴気孔は活発である(図5)。

 

図1 新燃岳火口北西縁から溢れ出て舌状に広がる溶岩。周辺地形との比較から流下距離は150 m程度と推定される。溶岩の厚さは先端部にかけて徐々に薄くなる。

図2 新燃岳火口西縁の溶岩溢れ出し部ではとくに激しく水蒸気を上げている。溶岩破砕部分の灰色は火山灰の被覆による。

図3 新燃岳の火口蓄積溶岩中央部には凹地(小火口、直径100 m程度、深さ不明)が形成されており、活発な噴気活動が認められる。周囲は火砕物で厚く覆われており、数mの岩塊が散在している。小火口の北東側には同心状に亀裂が発達する。

図4 新燃岳北側火口縁付近の様子。火口蓄積溶岩の周縁部からは所々激しく水蒸気が上がっている。溶岩上面は火口壁の高さよりやや高い位置にある。

図5 新燃岳西側斜面の噴気活動の様子。斜面下位には複数の小噴気孔からなる噴気地帯、中腹にはやや大きい噴気孔が存在する(上、黄色点線)。中腹の噴気活動は活発である(下)。

参考資料:

1) 国土地理院 平成30年(2018年)霧島山(新燃岳)の噴火に関する対応: http://www.gsi.go.jp/BOUSAI/h30kirishima-index.htm

(火山噴火予知研究センター :前野 深)


2018年3月20日掲載

霧島火山群新燃岳直下の微動活動について

東京大学地震研究所が展開する新燃岳火口近傍の地震観測点データを主に用いて、2017年10月3日から2018年3月噴火に至る微動活動について解析を行った。その結果、以下のことが分かった。

  1.    2017年10月11日の噴火の後、噴火前のレベルに戻ることなく、次第に振幅が増加した。
  2.    多くの時間窓で、微動源は新燃岳直下の海抜ゼロ付近に集中して決められた。
  3.    期間中何度か、北西の海抜下1.5 km付近から新燃岳直下の間で微動源が移動した。
  4.    2018年3月1日の噴火発生以降、微動源は、新燃岳火口の北東縁直下に移動した。 溶岩流出位置(防災科研・だいち2号による新燃岳火口内の地形変化第1報)と整合的である。
  5. 爆発的噴火が発生するようになった、2018年3月10日以降、地震動振幅の下限が5カ月ぶりに、2017年10月噴火の前のレベル近くに戻った。

図1.新燃岳周辺の微動解析に使用した地震観測点(ERI、 JMA、 NIED)。赤文字が、2017/10/3–2018/3/3のデータ解析に使用した観測点。

※微動源解析方法 (Ichihara & Matsumoto、 2017、 GRL に準拠)
常時振動成分の見られる3.5-7 Hz帯域について、地震動3成分のパワーを計算し、時間窓内の中央値を取る。時間窓長さは5分とし、1分ごとにスライドさせた。10分の間の各観測点間のパワーの比の標準偏差が一定値より小さい時間窓について、観測点間のパワー比を用いて、微動源を推定する。事前に、明瞭な微動が安定して見られた2017年10月10日21:30–10月11日01:00 の振幅分布を用いて、各観測点の振幅値補正と領域の平均Q値の推定を行った。2011年噴火時の微動振幅分布と高密度地震計アレイのデータを用いて求めたQ値とほぼ同じ値に決められた。

図2.地震動の振幅変化。1-7 Hz の3成分パワーの1/2乗に、各観測点の振幅補正を施した値を表示。2017年10月の噴火後、一度低下したものの、微動は継続し、段階的に次第に振幅が増加して行った。

図3.微動源位置変化。上から、海抜高度、新燃火口中心から南北距離、東西距離、振幅比による微動源推定の残差。赤は残差が小さくよく決められているもの、青はそれよりやや悪いが採択可と考えられるもの。微動源が決められていない期間も、微動がないとは言えず、振幅比が安定せず微動源推定の対象にならなかったり、推定残差が大きく棄却されたことが原因である。下の地形図と新燃火口直下を通る東西断面には、各期間における微動源を色で表示した。

図4. 2017年10月噴火前の10月8日と、2018年3月10日の振幅分布の比較。振幅の下限値がこのレベルに低下したのは、5カ月ぶりである。

図5.2017年10月噴火時の微動源移動。異なる観測点のセットで推定した結果。今回の、長期間解析に用いた8観測点での推定結果は、●(赤丸)で示している。他の、より多くの観測点を用いた場合と同様の位置に微動源が決められている。10/14日の後半以降は、●(赤丸)の結果は得られていないが、これは、SMWのデータ断による。

(火山噴火予知研究センター:市原 美恵・大湊 隆雄)


新燃岳火口の様子(3月13日)

火口の様子をセスナ機により観察した(3月13日13時40~50分)

  • 火口を覆う溶岩層の周囲から水蒸気を主体とする白煙が上がっている(写真1)
  • 溶岩層は火口全体を覆っており,北西側から溶岩流が斜面上に溢れ出ている(写真1,2).
  • 溶岩層の表面はブルカノ式噴火で生じたと思われる岩塊や火山灰に覆われている.ただし,北~西~南の周辺部はこのような堆積物は薄く,表面のしわが明瞭に観察される(写真1).
  • 溶岩層の中心よりやや北東側の地域が浅い凹地となっており(直径100m程度.溶岩の湧き出し部付近? ) この付近から青白いガスが放出されている(写真1,3) .
  • 上記凹地の内壁には,一部に緻密な溶岩が露出している.また,リング状の割れ目や直径10m程度の孔地形が複数存在する(写真3).地形と噴出物の分布からブルカノ式噴火はこの凹地近辺で発生していると推定される.
  • 北西側に流れ出た溶岩は斜面上を流下し舌状に伸びている(幅170-180m,火口縁から先端まで80-90m程度と見込まれる).観察中,先端部の動きや転動岩塊,赤熱部等は見られなかったことから,溶岩流の動きは極めて緩慢と思われる.

写真1 火口域全体.南東側より撮影

写真2 北西側へ流れ出た溶岩流.北西側より撮影

写真3 溶岩層中心のやや北東側にある浅い凹地形.北側より撮影

(※ 観察には新日本航空のセスナ機を使用した.観察者:金子 隆之)


2018年3月15日

霧島火山群新燃岳2018年噴火の火口観察

概要: 2018年3月14日にドローンにより新燃岳火口内及び周辺を観察した。3月6日に流出した火口蓄積溶岩は9日には北西火口縁から溢れ出し,舌状に山体北西斜面を覆っている。その両脇の溶岩は大量の水蒸気を上げ,火口縁に迫っている。南東側溶岩末端崖では所々水蒸気が激しく上がり,溶岩が前進しているようである。火口蓄積溶岩の中央部はやや凹んでおり,凹地周縁からは弱い噴煙が時折発生する。ブルカノ式噴火の前には中央の複数の箇所から小規模な噴煙が発生する。

  • 3月14日に午前・午後の2回に分けて,新燃岳南西側の新湯付近から,ドローンにより山頂火口内及び火口周囲の状況を観察した。なお,規制区域のドローン飛行に関しては,火山噴火予知連絡会霧島(新燃岳)総合観測班のガイドラインに従うとともに,事前に鹿児島森林管理署をはじめとする関係機関と調整した上で実施した。
  • 溶岩表面はクリンカーで覆われており,多くの亀裂が生じている。北西火口縁からは,酸化して赤褐色になった溶岩が舌状に流出し,山体斜面上部を覆っている(図1)。舌状部溶岩の両脇では火口内溶岩が大量の水蒸気を上げ火口縁に迫っている(図2)。南東側の火口蓄積溶岩末端崖では所々水蒸気が激しく上がり,溶岩が前進しているようである(図3)。火口縁付近では溶岩は黒々としているが,中央付近では細粒の噴出物に覆われて表面は灰白色となっている。
  • 火口内溶岩の中央部はやや凹んでおり,周囲にはブルカノ式噴火に由来すると考えられる数mを超える岩塊が無数に散在する。凹地周縁からは白色又は褐色の小噴煙が時折発生した(図4)。さらに15時18分頃の噴火の前には,中央の複数の箇所から白色-褐色の噴煙が継続的に発生した(図5)。

ドローンによる撮影

図1 新燃岳火口北西縁から溢れ出て舌状に広がる溶岩。先端付近の所々から水蒸気が上がっている。溶岩の厚さは先端部にかけて徐々に薄くなっている。

図2 新燃岳火口北西縁の溶岩溢れ出し部の拡大。激しく水蒸気を上げている北側部分は火口内に留まっているが,溶岩の上面は火口縁よりも高い位置にある。

図3 新燃岳火口南西部に広がる溶岩。溶岩先端の所々から水蒸気が上がる。右下には火口壁を形成する溶岩(通称:うさぎの耳)が見える。

図4 火口蓄積溶岩の中央部はやや凹んでおり,その周囲からは時折弱い白色-褐色の噴煙が生じる。周囲には長径数mを超える大きさの岩塊が散在する。

 

 

 

 

 

 

図5 15時18分頃の噴火(下)と噴火前の火口内の状況(上)。火口からは複数の箇所から灰色〜褐色噴煙が生じている。このおよそ5分後に噴火が発生した。下写真は一眼レフカメラによる。

(火山噴火予知研究センター :前野 深)


2018年3月12日報告

【概要】
・溶岩は火口内で溶岩ドームとして成長拡大を続け、8日夜半までに火口をほぼ満たし、低くなっている北西側の火口縁に乗り上げた。
・ 溶岩ドーム拡大の様子は衛星SAR解析で正確に捉えられ、9日までに溶岩供給がほとんど停止したものと考えられる( 引用1、2)。
・成長をほぼ止めた溶岩ドームの中央部で、 9日午後からは爆発的な噴火が始まった。
・北西縁に乗り上げた溶岩は自重で斜面下方へゆっくり移動した。
・ 今回の溶岩流出から爆発的噴火の推移は2011年1〜2月噴火と類似 している。
1)防災科研、平成30年(2018年)3月新燃岳の噴火活動に関するレスポンスサイト(http://gisapps.bosai.go.jp/nied-crs/2018-0003/index.html
2)平成30年(2018年)霧島山(新燃岳) の噴火に関する対応(http://www.gsi.go. jp/BOUSAI/h30kirishima-index. htm

【新燃岳2018年噴火のマグマ組成】
2018年3月7日夕方までに採取した軽石質火山礫及び火山灰の全岩化学組成を決定した。(採取場所:新湯三叉路付近(前野採取)、採取日:3月7日)
・   今回のマグマは2011年噴火のマグマとほぼ同じ安山岩組成であ る。
・  先行した水蒸気噴火〜マグマ水蒸気噴火火山灰の組成は、2011年噴火と同様に、時間とともにマグマの組成に近づいていったことがわかる。 これは火山灰中の変質物質の量が次第に減少したことを反映してい る。(なお、分析に用いた試料は粗粒火山灰や数ミリの軽石片であるので、斑晶を含む正確な全岩組成からは若干ずれている可能性がある。)

Fig. 1:新燃岳2018年及び2011年噴火の溶岩の化学組成。 それぞれの噴火に先行した水蒸気噴火及びマグマ水蒸気噴火の火山 灰の全岩組成も比較のために示した。

【上空観測】
新燃岳の山頂火口を上空から観察した。 以下のようにまとめられる。
・新燃岳の山頂火口に蓄積した溶岩(溶岩ドーム) には同心円状の成長模様がよく発達している。
・ 溶岩ドームは中央部がほぼフラットかやや全体が窪んだ形状を示し , 爆発的噴火によって降り積もった部分が褐灰色の火山灰で覆われて いる。灰で汚れている部分の中央部が爆発点で、溶岩が現れた広がった供給口と思われる(Fig. 2)。
・3月9日午後5時頃の観察では溶岩は北西縁に乗り上げて、先端部から水蒸気の白煙を上げていた。 翌日10日午後3時半頃には先端部が斜面に向かって前進し、表面は酸化して赤茶けている(Fig. 3, Fig. 4)。
・約1日で溶岩の先端は数十m前進したと思われるが、前端から特に大きな崩落は起きていない。
・3月10日午前10時15分頃の爆発の10分ほど前から、火山灰にまみれた中央部で火山灰が全体から弱く放出され始め、さらにその中央部で隆起が認められ、甘食のような形状となり、噴火に至った(Fig. 5)。
(観察には新日本航空チャーター機、及びKYTとUMKのヘリコプターを利用した。中田撮影)

Fig. 2. 3/9 午後の新燃岳山頂火口北西縁の様子

Fig. 3. 3/10午後の新燃岳山頂火口北西縁の様子

Fig. 4. Fig. 2のクローズアップ

Fig. 5. 10:15頃の爆発的噴火約5分前の溶岩ドーム中央部の隆起

(報告者:火山噴火予知研究センター 中田 節也)


新燃岳火口の様子(3月3日)

 2018年3月1日午前8時半頃に始まった新燃岳の噴火は, 2日経っても火山灰の放出を続けている。 新燃岳の山頂火口の状況, 3月3日9時半過ぎから約30分間セスナ機(新日本航空) で上空からを調査した。
(主な点)
・火山灰噴煙は山頂火口の東端から勢い良く上がり, その周囲には2017年10月中旬と今回の噴火でできた火砕丘が できている。
・火山灰放出火口は, 2017年10月中旬噴火とほぼ同じ場所と考えられる。また, その火口径はより大きくなっているように見える。
・山頂火口では,火山灰放出火口以外にも水蒸気が多くの場所( 穴)から噴き出しており, その数や噴気量からは昨年10月より激しい活動であると考えられ る。
・山頂火口内には, 2011年の蓄積溶岩の境界部や蓄積溶岩上のくぼみの多くに水た まりができている。これは細粒火山灰が山頂火口全体を覆い, 水はけの悪い凹地が生じたためと思われる。
・3月1日から3日昼過ぎにかけて, 新燃岳の南東から北側にかけて広く降灰した。
・噴出した火山灰は, 2017年10月中旬噴火と同様に極細粒のものであり, 新たな軽石(よく発泡したマグマ片) 等の関与はまだ認められない。

(報告者:火山噴火予知研究センター 中田 節也)

写真1:新燃岳山頂火口からは,火山灰が激しく放出されている。火山灰火口以外からも多くの水蒸気噴煙が上がっている。3月3日午前10時前。

写真2:新燃岳の火山灰放出口の周囲には火砕丘が成長している。3月3日午前10時前。

写真3。新燃岳火口の様子。立ち上る火山灰噴煙から,すぐに落ち始める火山灰が風で火口側に戻されながら降灰している。3月3日午前10時前。

2018年1月23日 草津白根山(本白根)噴火

ウェブサイト立ち上げ:2018年1月29日
最終更新日:2018年1月30日

2018年1月23日、群馬県にある草津白根山が噴火しました。ここでは、その後の現地調査についてをご報告します。


草津白根山2018年1月23日噴火の火口分布の再検討

概要: 2018年1月23日に噴火が発生した草津白根山で1月28日午後にヘリコプター(読売新聞社機)から撮影した写真を検討した結果、鏡池北火口北側の火口列,西側の火口に加えて、鏡池火口底中央西側にも新たな火口列(長さ約100m)が認められた。

・  鏡池火口には火山灰の堆積や投出岩塊によって生じたインパクトクレーターが多数認められる。

・  インパクトクレーターが密集する範囲のほぼ中央部に少なくとも4つの凹地が認められ、ほぼ直線上(北西—南東)に配列する。

・  大きい火口で15m x 10m、長いもので20mの大きさを持ち全長約100mに達する。インパクトクレーターの分布、堆積した火山灰の色合い、火口地形の新しさから、鏡池火口底の火口列は1月23日10時過ぎからの一連の噴火活動によって生じたものと考えられる。

※  報道関係の方へ:撮影には読売新聞社の協力を得ています。写真の引用については、読売新聞社にお問い合わせください。

図1 草津白根山鏡池及び鏡池北火口。鏡池火口底中央西側にも火口列が見つかった。

図2 鏡池火口底中央西側の火口列。左は図1の拡大。右は東側から撮影。黒矢印は小火口。雪崩は噴火直後に発生したと考えられる。

(火山噴火予知研究センター:中田節也)

(協力:読売新聞)


草津白根山(本白根)2018年噴火の上空観察

概要: 2018年1月23日に発生した草津白根山(本白根)の噴火を受けて、1月28日午後にヘリコプター(読売新聞社機)による上空からの観察を行った。鏡池北火口北側に形成されたほぼ東西に延びる火口列(少なくとも6つの火口)のほかに、西側にも、ほぼ南北に延びた形状の小火口が形成されていることを確認した。また鏡池北火口北側の火口壁には、倒伏した樹木片群を覆う火山灰を主体とした堆積物(最大層厚1.5 m程度)が認められた。

  •  1月28日13:35-14:25にヘリコプター(読売新聞社シリウス)により本白根山鏡池北火口および周辺域を観察し、1月23日噴火による火口列および火山灰の堆積状況を観察した。
  •  鏡池北火口北側を主とし、東西方向に伸びる火口列(少なくとも7つ)を確認した(図1)。
  •  このうち最も西側の火口(図2)は概ね南北に伸びた15 m×5 mほどの形状で、火口内には黒色の堆積物が認められた。
  • 鏡池北火口北側の火口壁では,灰褐色火山灰を主体とした堆積物が最上位を構成し、倒伏した多数の樹幹や枝を覆う(図3)。下位には旧地表の土壌と考えられる褐色の堆積物が存在することから、樹木片より上位の地層は今回の噴火の堆積物(最大層厚1.5 m程度)と考えられる。

※  報道関係の方へ:撮影には読売新聞社の協力を得ています。写真の引用については、読売新聞社にお問い合わせください。

図1 本白根山鏡池北火口北側および西側に形成された火口群の状況。

図2 鏡池北火口西側に形成された小火口(W,15 m×5 mほどの大きさ)の拡大。北半分は黒色の堆積物に埋められている。周辺にはこの火口形成時に放出されたと考えられる岩塊が散在する。

図 3 火口壁の状況。最上位層の堆積物底部に倒伏した樹幹や枝が濃集する(最大層厚1.5 m程度)。さらに下位の褐色土壌層との間が旧地表面と判断できる。(協力:読売新聞)

(火山噴火予知研究センター:前野 深)


火山噴火予知連絡会拡大幹事会への提出資料

拡大幹事会2018年1月26日(PDF)

※  報道関係の方へ:撮影には朝日新聞社・共同通信社の協力を得ています。写真の引用については、朝日新聞社・共同通信社にお問い合わせください。

2017年10月11日霧島火山群新燃岳の噴火【最終更新10月20日】

ウェブサイト立ち上げ:2017年10月16日
最終更新日:2017年10月20日

2017年10月11日に霧島火山群新燃岳が、2011年の噴火以来、6年ぶりに噴火しました。
このページでは現地調査およびその後の分析結果についてを更新しています。


2017年10月20日掲載

新燃岳2017年10月12〜14日噴火の火山灰の組成の時間変化

図1:新燃岳火山灰のSiO2量変化。太矢印は2008年から2011年までの火山灰の変化方向を示す。2017年10月噴火の火山灰は次第にSiO2量に乏しくなってきている。2011年までのデータはSuzuki et al. (2013)による。

図2:新燃岳溶岩と火山灰の組成。太矢印は2008年から2011年までの火山灰の変化方向を示す。2017年10月噴火の火山灰は変動が大きいが,2011年マグマの組成に近づいてきている。

図3:(再掲)2008年〜2011年噴火火山灰の構成物種の時間変化。今回の火山灰の時間変化も2008年から2011年までの変化に似てきた。2008年〜2011年のデータはSuzuki et al. (2013)による。

(東京大学・早稲田大学)


2017年10月20日掲載

霧島火山群新燃岳2017年10月11−14日の噴出量変化

概要: 2017年10月11日−14日における新燃岳での主な3回の噴火の噴出量について検討した。これまでの降灰調査や報告をもとにすると,総噴出量は40万トン前後と推定される。

・   10月11日,12日ついては,すでに報告している通り1),1−4万トン,12日については6−22万トンと推定される。
・   14日については,気象庁により日向市まで降灰があったことが報告されており2),そのおよその分布域が分かっている。また,主軸は北東である。
・   14日に新燃岳北東の夷守台(オートキャンプ場入り口)では,9:30−14:30 の間に1−3mm程度の降灰があったことが,試料採取時の状況から推定される。(この火山灰については,構成種の分析がなされている3)。)
・   近傍での1−3 mm のおよその範囲と,分布限界(0.1−1g/m2)の仮定をもとに,11日および12日の場合と同じ手法により噴出量を見積もったところ,10−30万トン程度と推定された(図1)。
・   14日までの総噴出量は40万トン前後と推定される。

図1: 10月11−14日までの主な3回の噴火による降灰面積と単位面積当たり重量との関係。Weibull関数によるフィッティング4) を行い,その積分値(総重量~噴出量)を算出した。それぞれの日で異なる種類のフィッティングは,降灰面積および降灰重量の仮定に由来するエラーを示す。

参考資料:
1)       東京大学地震研究所・熊本大学教育学部,霧島火山新燃岳2017年10月11-14日噴火の噴出量(速報).火山噴火予知連絡会資料,2017年10月14日.
2)       気象庁,霧島山(新燃岳)の火山活動解説資料.平成29年10月14日18時15分発表.
3)       東京大学地震研究所・早稲田大学,霧島新燃岳2017年10月12日,14日噴火の火山灰について.火山噴火予知連絡会拡大幹事会資料.2017年10月17日.
4)       Bonadonna, C. and Costa, A. (2012) Estimating the volume of tephra deposits: a new simple strategy. Geology, 40, 415-418.

(火山噴火予知研究センター:前野 深)


10月12日11時頃ドローンにより撮影

(火山噴火予知研究センター:前野 深)


霧島火山群新燃岳2017年10月11-12日噴火の降灰分布と噴出量(速報)

(2017年10月15日)

概要: 霧島火山群新燃岳における2017年10月11日-12日噴火の降灰分布と噴出量を,噴火直後に実施した現地調査の結果をもとに推定した。11日はほぼ東側に主軸をもち,比較的狭い範囲に降灰が集中した。一方12日はやや北寄りに分布主軸が移るとともに,南~南西側にも降灰が認められ,山体付近では11日よりも堆積の範囲は広い。降灰分布データ(単位面積当たり重量と面積との関係)をもとに噴出量を算出した結果,11日の噴出量は1~4万トン,12日の噴出量は6-22万トンと見積もられた。なお,火口近傍の堆積状況が不明なため噴出量には大きなエラーが含まれる。

[降灰分布]
・  10月11日昼頃から12日夕方にかけて,熊本大学,防災科学技術研究所,東京大学地震研究は11日,12日それぞれの降下火山灰の堆積状況を調査した(図1)。
・  11日(青色)はほぼ東側に分布主軸をもつ。12日(赤色)はやや北寄りに主軸が移るとともに,南~南西側山麓でも降灰が認められ,11日よりも堆積の範囲は広い。
・  12日は噴煙の勢いが強くなり噴煙高度が増し,風の影響も弱まったために,より広範囲に火山灰が拡散,堆積したと考えられる。

図1 新燃岳2017年10月11日および12日の火山灰等重量線図。えびの高原の降灰状況は電話による聞き取り調査による。熊本大学と防災科学技術研究所のデータについてはそれぞれ既に報告されている1, 2)。

[噴出量の推定]
・  等重量線図(図1)をもとにした単位面積当たり降灰重量(kg/m2)と面積との関係を,Weibull 関数によりフィッティングして積分し(図2),噴出量を推定した(Bonadonna and Costa 2012 による手法3))。
・  11日の噴出量は1-4万トン,12日の噴出量は6-22万トンと見積もられた。
・  なお,11日については10-500 g/m2のコンター(5点)を,12日については10-100 g/m2のコンター(3点)を用いた。また,噴火口を囲むようにコンターを仮定し,20-30%の分布面積のエラーを考慮した。
・  11日については,同日に行った上空からの観察4) をもとに,噴火口の近傍(0.1 km2)の単位面積あたり降灰重量を5-20 kg/m2 と仮定した。12日については火口付近の堆積状況が不明であるため,近傍の仮定はない。
・  11日,12日ともに,遠方についてはWeibullフィッティングの外挿のみで仮定はしてない。

図2 新燃岳2017年10月11日および12日の降灰面積と単位面積当たり重量との関係。Weibull関数によるフィッティングを行い,その積分値(総重量~噴出量)を算出した。異なる3種類のフィッティングは,降灰面積の仮定(11日および12日)と,噴火口周辺の降灰重量の仮定(11日)に由来するエラーを示す。

謝辞:
防災科学技術研究所の降灰データ2)を使用させていただいた。また,降灰調査は霧島ネイチャーガイドクラブ古園俊男さんに協力いただいた。
参考資料:
1)      熊本大学教育学部,霧島火山新燃岳2017年10月11日噴火に伴う降灰量(速報),火山噴火予知連絡会資料,2017年10月12日.
2)       防災科学技術研究所火山研究推進センター,新燃岳2017 年10 月11 日〜12 日噴火の降灰調査結果.http://www.bosai.go.jp/saigai/2017/pdf/20171013_02.pdf
3)      Bonadonna, C. and Costa, A. (2012) Estimatting the volume of tephra deposits: a new simple strategy. Geology, 40, 415-418.
4)      東京大学地震研究所,霧島火山群新燃岳2017年噴火の上空観察.火山噴火予知連絡会資料, 2017年10月13日.

(火山噴火予知研究センター:前野 深)


霧島山新燃岳2017年10月12日噴火の火山灰について

2017年10月13日

新燃岳で10月12日午前中に放出された火山灰の顕微鏡観察を行った。その結果、今回の火山灰は水蒸気噴火に特有の極細粒子からなり、マグマ物質(本質物質)の可能性のある軽石粒子が極少量(0.1%以下程度)認められた。これらの粒子が今回の噴火に直接関与したかどうかは今後の推移を見ないと判断できない。このことより、10月11日〜12日噴火は基本的には水蒸気噴火であったと考えられる。

【噴火の概要】
10月11日朝から始まった新燃岳の噴火は、12日午前中に噴煙高度が約2000mまで達するなどより活発になった。11日には東側に、12日午前中には北東及び南側に降灰が認められた。12日午前中に堆積したと考えられる火山灰を採取し、顕微鏡下で観察を実施した。

【火山灰試料】
採取日:2017年10月12日(木)午前11時頃。
採取場所:新湯〜高千穂河原の道路上(新燃岳の火口の南約 3 km地点)
採取者:地震研究所・防災科学技術研究所。
産状と採取法:道路の白線がほぼ見えなくなるほどの火山灰(120〜150g/m2)が堆積。刷毛を使って採取したものを用いた。

【火山灰の処理・観察方法】
約12gの火山灰を,純水中で超音波洗浄し上澄みを取り除いた。径数10 µm以上の残粒子約1.2gを篩により粒径分けし観察に用いた。径125 µm未満が最も豊富であったが、径125-250 µmを利用。この粒径の全体像を図1に示す。構成種とその割合を径125-250 µmの粒子について決定した。以下の割合は暫定的なものである。構成粒子の割合は粒子数に基づいた。各構成粒子の写真を図2に示す。

観察結果のまとめ
(1)スコリア (2.5%):気泡内部や表面に白色物質が付着し,表面の円磨された粒子のみである。今回のマグマ物質とは考えられない。
(2)軽石 (<0.1%):淡褐色で、新鮮な発泡ガラスを持つ。変質物質の付着もない。マグマ物質の可能性がある(図2 (2)、図3)。
(3)変質溶岩 (48.8%):珪化変質したと思われる白色溶岩片。黄鉄鉱の細粒粒子が付着しているものもある。
(4)弱変質溶岩 (37.5%):薄灰色〜薄褐色で弱変質の溶岩片。
(5)結晶 (11.3%): 斜長石,単斜輝石,斜方輝石,かんらん石、鉄チタン酸化物の遊離結晶及びその破片。

図1:霧島山新燃岳10月12日噴火の火山灰粒子(径125-250µm;横幅約4.5 mm)。左の赤丸は軽石(マグマ物質)。右の青丸内の球状のガラスは人工物(道路の舗装の光沢材)。

図2:10月12日噴火の火山灰構成粒子(径125-250 µm。写真横幅は2 mm)(1)スコリア, (2)軽石, (3)変質溶岩, (4)弱変質溶岩

図3:軽石粒子の3次元画像。マグマ物質と考えられるが、その量は極めて少ないので、今回の噴火に直接関与したものと断定するのは難しい。

(東京大学地震研究所・早稲田大学)


霧島火山群新燃岳2017年噴火の上空観察

概要: 2017年10月11日早朝に始まった新燃岳の噴火を受けて,11日午後にセスナ機(南日本航空)による上空からの観察,12日午前にドローンによる新燃岳火口内及び火口周辺の観察を行った。主な噴煙は火口内東縁付近の火孔(群)から発生している。11日午後には白色主体の噴煙であったが,12日午前には濃い灰色の噴煙となり,噴出の勢い,噴煙高度が増した。12日にかけての活発化に伴う新燃岳火口内の変化はほとんどなく,同一の火孔(群)を使い噴火を継続したと考えられる。

[セスナ機による観察]

  • 10月11日15:00-15:45にセスナ機(南日本航空)により新燃岳火口内を観察した。
  • 火口内東縁付近に形成された火孔から白〜灰色の噴煙が勢い良く立ち上がっている。白色噴煙が主体であるが,時々濃い灰色の噴煙も混じる(図1)。
  • 火孔位置は2011年噴火前からある噴気域の一部に相当し,2011年噴火時にも小火孔が形成された場所である。
  • 近接する2つの火孔が存在し,噴煙の根元は分かれているが,火孔直上で一体となり上昇する噴煙は見かけ上は1つである(図2)。
  • 噴煙は強い西風を受けて大きく傾き,東側に主な降灰をもたらしている。
  • 東から北側にかけては火口壁や山体斜面に数−10cm程度(推定)の火山灰の被覆が確認できる。全体的に火口内東側では噴気活動が盛んで,とくに噴火孔の南西側の噴気域は活発である。

図1 火口内東縁の火孔から上昇する噴煙の様子。火孔周囲の噴気活動は活発で,所々に水溜りも存在する。(11日15:22撮影)

図2 火孔は2つ存在し,噴煙は一体となって上昇している。(11日15:32撮影)

[ドローンによる観察]

  •  10月12日午前に,新燃岳南西側の新湯温泉付近から,ドローンにより山頂火口内及び火口周囲の状況を観察した。なお,規制区域のドローン飛行に関しては,事前に鹿児島森林管理署と調整した上で実施した。
  • 風向きや降灰の状況を考慮して,9:30〜11:15の間に3回に分けて実施した。
  • 噴火孔(群)の位置や大きさは11日とほとんど同じであったが,噴煙は濃い灰色主体で,勢い良く噴出し,上昇している(図3)。
  • 弾道放出物は観察できないが,風下側では顕著な降灰が認められる。
  • 勢いの良い噴煙の他に,やや勢いの弱い噴煙が近接して存在する。火孔直上ですぐに一体となり,1つの噴煙を形成している(図4)。複数の火孔があると推定される。
  • 噴煙上昇の勢いは11日より明らかに強く,噴煙高度も増した。11日と比べて風の影響が弱まったことや,噴出率がやや上がったことが,噴煙高度が増した原因と考えられる。
  • 観察時間中,新燃岳西側斜面の噴気地帯では,噴気量が一時的に増大する様子が観察された。また,西側斜面の複数箇所から弱い噴気が一時的に立ち昇る様子を観察した。

図3 南側火口縁付近から見た噴煙。(12日10:55頃撮影)

図4 西側から撮影した噴煙。奥に勢いが強い噴煙があり,手前に弱い噴煙が存在するが,上空では一体となり一つの噴煙を形成している。(12日11:05頃 撮影)

( 火山噴火予知研究センター:前野 深)